だんだんと温かくなり、たくさんの植物が育ち始める季節です。
お出かけしたい気持ちが高まる一方で、多くの方が花粉症で辛い思いをされているのではないでしょうか。
そこで、今回は花粉症に効果が期待される薬膳を紹介させて頂きます。
その前に少し前回の「春の食養生について」おさらいをします。
<前回のおさらい>
「春」は立春から立夏までの3ヶ月間を言います。その中で大きく、初春・春・晩春に分けられます。春はその自然条件である「風」からくる風邪の影響を受けます。春は陽気と陰気が入れ替わる時期なので気候が不安定となるため、より風邪になりやすいとされています。
風邪を追い払う必要があるため、辛味の食材を摂取する必要があります。
さらに、春は「肝」と深い関係があるため肝の経路である胆・筋・目・爪・感情(怒り)にトラブルが起こりやすいとされています。
そのため、肝を調和し脾を補う甘味の食材(ナツメ・長芋・落花生・サツマイモ・カボチャ・無花果など)を摂取することが大切です。

<花粉症のメカニズムと症状>
アレルゲンである花粉が鼻腔内の粘膜に付着すると、体内に抗体が作られマスト細胞に結合します。その後再びアレルゲンが侵入すると、マスト細胞からヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が出されることによってアレルギー反応が引き起こされます。
主に眼結膜、鼻粘膜が発症の場となります。よく見られるアレルギー症状は以下の通りです。
- 鼻の症状:水溶性鼻水、くしゃみ、鼻の痒み、鼻粘膜の蒼白性腫脹と鼻閉など
- 目の症状:目の搔痒感、涙目、結膜の充血など
- 身体の症状:花症状を繰り返すうちに、喘息発作が起こったり、便秘や下痢などの消化器系症状や片頭痛を伴ったりすることがあります。
➀や②の症状は花粉と接触した後、数分ないし数時間以内に症状が現れ、特定の季節(2月から4月下旬ごろ)に反復することが多いとされています。
<花粉症の予防>
花粉症を予防するためには、免疫機構を調整し、体力を増進させる=気を補う必要があります。気を補うことができるおすすめの薬膳があります。それは、ナツメと長芋です。
長芋は「秋の食養生について」で紹介したので、今回はナツメについてお話させて頂きます。
<ナツメについて>
名前の由来は夏(初夏)に芽がでるから夏芽=ナツメという説があります。また、茶道で使われている抹茶を入れる器である棗(ナツメ)に形が似ていることからナツメと呼ばれているという説もあります。ナツメは生でも食べることができ、食感はシャキシャキとしています。
中国では食用、薬用に用いられてきました。中国では古来よりナツメを蒸して乾燥させたものを大棗と呼んでいます。大棗は、中国最古の医学書である『神農本草経』の中で高麗人参や杜仲と同じ上品とされています。
生姜と一緒に漢方薬の味を緩和するのにも用いられる重要な生薬です。
『一日3個のナツメを食べれば老いない』ということわざがあり、アンチエイジングが期待されています。世界三大美女の一人、楊貴妃もナツメを好んで食べていたと言われており女性におすすめの薬膳と言えます。
・産地:原産地は南ヨーロッパおよび中国から西アジアにかけてです。
日本へは奈良時代よりも前に伝来したとされています。
・性味帰経:温・甘・脾・胃・心
・薬効成分:ビタミンC、カリウム、マグネシウム
・効能:補脾益気、補血安神、胃気保護
・健康効果:抗アレルギー作用
(ナツメに含まれているフルクトピラノサイドという単糖類にアレルギー抑制作用があるとされています。)
滋養強壮作用(食欲不振、下痢に効果があるとされています。)
精神安定作用(動悸・不眠の改善に効果があるとされています。)
・旬の時期:収穫時期は8月中旬頃で寒いところだと10月頃とされています。
・レシピ:参鶏湯、ナツメとクランベリーのシリアルバー
◎参鶏湯(サムゲタン)
韓国料理の一つで、丸鶏の中に高麗人参やもち米などを詰めたものを煮込んだものです。
丸鶏を購入して調理するのは少し大変なので、今回はスーパーで手に入る鶏もも肉と手羽元を使ったレシピを紹介致します。
身体を温める食材がたくさん使われていますので、春先の寒い日におすすめです。
☆材料(4人分)
- 鶏もも肉 1枚
- 手羽元 4本
- 乾燥ナツメ 4個
- クコの実 20粒程度
- ニンニク 2片
- 生姜 10g
- ネギ 1/2本(=約70g)
- もち米 大さじ4(=約50g)
- 塩 小さじ1/2(=3g)
- 酒 大さじ3(=45g)
- 塩・こしょう 少々
☆作り方
- もち米は研いで30分程浸水しておき、ざるにあげておきます。
- 鶏もも肉を4つに切ります。鍋に水を入れ火にかけます。沸騰したところへ鶏もも肉と手羽元を入れ下茹でします。鶏肉の表面が白くなったらざるにあげて、流水でアクを洗い流します。
- 鍋に下ゆでした鶏肉、もち米、ニンニク、生姜、ネギ、塩小さじ1/2を入れ、具材が浸る程度の水(分量外)を加えて中火にかけます。沸騰したらアクを取り除き1時間程煮こみます。
- 塩・こしょうで味をととのえ、器に盛って完成です。
◇ポイント⇒鶏肉はゆですぎるとぱさぱさになってしまうので、ゆでる時間は1時間程度を目安にしましょう。
◎ナツメとクランベリーのシリアルバー
栄養価の高いオートミールとナツメを使ったおやつを紹介致します。
クランベリーやカシューナッツがない場合、お好みのドライフルーツやナッツ類を使って頂いても美味しいものを作ることができますので是非作ってみてくださいね。
また、参考にさせて頂いたレシピは無塩バターではなく、ココナッツオイルを使っていました。お家にココナッツオイルがある方は無塩バターと同量で作ってみて頂ければと思います。
☆材料(18㎝×18㎝型使用、16本分)
オートミール 100g
乾燥ナツメ 5個
クランベリー(乾燥) 30g
カシューナッツ 30g
無塩バター 30g
はちみつ 30g
薄力粉 大さじ2(=18g)
豆乳 大さじ1(=15ml)
☆作り方
①型にクッキングシートを敷いておきます。無塩バターは電子レンジで温めて溶かしておきましょう。
②ナツメ、クランベリー、カシューナッツは8㎜角の大きさに切ります。
③ 無塩バターとはちみつ、薄力粉を混ぜます。
④ボウルにオートミールを入れ、②、③と豆乳を加え均一になるよう混ぜます。
⑤④を型に入れ、表面が平らになるように押しながら敷き詰めます。平らになったら包丁で16等分の切り込みを入れます。
⑥⑤を180℃のオーブンで18分焼きます。焼きあがったら粗熱を取ります。粗熱が取れたら切り込み通りに切り分け、オーブンシートを敷いた天板に並べ、再び、180℃のオーブンで6分焼いたら完成です。
<花粉症の症状におすすめの薬膳>
ナツメと長芋は、花粉症を予防するためにおすすめの食材ですが、花粉症のそれぞれの症状に効果があるとされる食材もあります。
例えば、鼻やのどに症状が出る場合、身体を温め発汗を促すことで症状を抑えることができます。おすすめの食材は生姜、ネギ、山椒、クズです。
のどの炎症や咳の症状には、鎮咳作用のあるユリ根、抗アレルギー作用のある紫蘇がおすすめです。
目のかゆみや充血には菊花が良いとされています。
<おわりに>
いかがでしたか?
辛い花粉症の症状も薬膳の力で改善することができます。
ナツメはお茶にしたり、シロップ漬けにしてヨーグルトに入れたり様々な使い方ができますので、是非日々の食養生に取り入れて頂けると幸いです。