冬を中医学で考える
最近は日中でも気温が上がらず、朝と夜も寒さが増してきました。いよいよ冬がやってきますね。前回は秋の食養生についてお話しました。秋は冬に向け食養生する必要がありましたが、今回は寒い冬に食べて頂きたい食材について、薬膳の観点からお話させて頂きます。

冬は寒邪の影響をうける
さて、皆さんは「冬」はいつから始まると思われますか?
答えは、秋が終わる11月末から12月25日までが初冬、12月26日から1月末までが冬、2月から2月末までが晩冬とされています。
今回は初冬から晩冬までを合わせて「冬」として説明させて頂きます。
冬は、身体が冷えやすくなるという特徴があります。これは寒邪の影響があると言われています。
この寒邪は六淫※1の邪(風・寒・暑・湿・燥・火)のうちの一つに発病因子である邪気が加わったものです。
寒邪は、以下のような身体への影響があります。
1. 寒気、お腹の冷痛、下痢、手足の冷えなどの症状
⇒寒は陰性なので、陽気が損なわれやすいです。そのため上記症状が現れます。
2.様々な疼痛(頭痛、月経痛、腹痛など)
⇒寒は凝滞性があるので、人体の気血・津液を凝集し滞らせてその流れを悪くさせ、
身体の様々なところで痛みを引き起こします。
3.無汗、身体の疼痛・脈緊などの症状
⇒寒邪が体内に侵入して気機が収斂すると、経絡や筋脈が収縮を起こします。
冬の食養生のコツ
1 散寒
寒邪による病が発生しやすくなるため、辛味・温性を持つ食材で寒邪を取り除く必要があります。
2 助陽
寒邪を取り除くため、体の陽気を補充する必要があり、甘味の食材を利用すると良いでしょう。
3 補腎
腎は「先天の本」と言われており、生長・発育・老化に関連します。
「冬」は特に腎が消耗しやすいとされているため、主に腎を補うことが必要となります。
4 健脾
脾は「運化を主る」と言われており、消化吸収・エネルギー貯留に関連します。
腎とともに脾も補うことが必要となります。
おすすめの食材
寒という邪気と戦うために、生姜、ネギ、紫蘇、ニラ、山椒、ニンニクなどがおすすめです。これらは散寒に効果があります。
また、シナモン、胡桃、エビ、高麗人参などもおすすめです。これらは助陽、補腎、健脾の効果があります。
◎生姜
身体を温める食材として最も有名と言っても過言ではない生姜。スーパーでもよく見かけ、いろいろな料理に使える便利な食材です。
チューブタイプのものやパウダータイプのものも売られており、より手軽に料理に取り入れることができます。
・産地:日本には平安時代に中国から伝わったと言われており、いまやインドや欧米にも広がっています
日本での産地は高知県、千葉県、熊本県が有名です。
・性味帰経:微温・辛・肺・脾・胃
・薬効成分:マンガン、ジンゲロール、ショウガオール、マグネシウム、
カリウム、ビタミンC
・効能:発表解表※2・温中止嘔・温肺止咳
・健康効果:発汗作用(風寒感冒=軽い風邪に効きます。)
止嘔作用(寒邪による吐き気や嘔吐に効きます。)
鎮咳作用(肺を温め、咳を止める作用があります。)
解毒作用(食中毒防止効果があります。)
・旬:種類によって異なりますが。6月~8月頃が旬のものもあれば、9月~11月頃が旬のものもあります。ちなみに6月~7月に収穫したばかりのものを新生姜とよびます。
根菜のスープ
☆材料(2人分)
大根 150g
人参 40g
ネギ 5g(約3㎝)
生姜 10g(皮つきで)
顆粒だし 小さじ1/2(=1.5g)
水 400ml
醤油 小さじ1/2(=3g)
塩 一つまみ
☆作り方
① 生姜は皮をむいてすりおろしておきます。
市販のチューブタイプのものを使うときは、小さじ1(=4g、10㎝)程度必要です
2 大根と人参の皮をむき、5㎜幅の半月切りにします。ネギは縦に4等分にします。
3 鍋に水を入れ、大根と人参を入れて火にかけ、沸騰したらアクを取ります。
火を弱めて大根が軟らかくなるまで煮ます。
4 すりおろした生姜と顆粒だしを加え、ネギを加えてひと煮立ちさせ、醤油と塩を加えて味をととのえたら完成です。
⇒野菜から出るアクは料理の味を悪くするので、できるだけ取り除きましょう。
この他にも生姜焼きやジンジャークッキーなど、たくさんの生姜料理がありますので是非お気に入りのレシピを探して作ってみてくださいね。

乾姜について
生姜について調べていくと、乾姜という単語が出てくるかと思います。乾姜はその名の通り、生姜の根茎を湯通しする、または蒸して乾燥させたもので漢方薬にもよく用いられます。
この乾姜は生姜と比べ、より身体を温める力が強いと言われており、冷え性の方にはおすすめです。(性味:大熱性・辛味)
しかし、発熱されている方や妊娠されている方には利用しないことが注意点として挙げられていますので、お気を付けください。
◎シナモン(肉桂)
お菓子やパンによく用いられるシナモンは香辛料としても有名ですが、薬膳に利用できることでも知られています。
・産地:インド、スリランカ、バングラディシュが原産で、日本には8世紀頃伝来したと言われています。現在はインドネシアと中国が生産の70%以上を占めています。
・性味帰経:大熱・甘・辛・腎・脾・心・肝
・薬効成分:精油、ビタミンK、カルシウム、鉄
・効能:補火助陽、散寒止痛、温通経脈
・健康効果:鎮痛作用(寒痺による痛みに効きます。)
血行改善作用(胸痺に効きます。)
お麩のラスク
☆材料(作りやすい分量)
麩 10g
バター 10g
牛乳 10g
砂糖 20g
シナモンパウダー 3g
☆作り方
1 熱したフライパンにバター、牛乳を入れ弱火にかける。
2 バターが溶け始めたらヘラで混ぜ、そこに麩を乾燥したまま加えます。
3 両面に焼き色をつけ、クッキングペーパーか皿の上に載せ粗熱を取ります。
4 ポリ袋にシナモンパウダーと砂糖を入れそこに③を入れて全体に味がなじめば完成です。
シナモンパウダーと砂糖を入れたボウルに④を入れて混ぜても良いです。
チャイ風ミルクティ
☆材料(2人分)
牛乳 350㎖
紅茶(茶葉) 4g(ティーバッグは2個分)
砂糖 3g(スティックシュガー1本分)
シナモンパウダー 4g
生姜(すりおろし) 2g(チューブでは約5㎝使用)
☆作り方
①ティーポットに茶葉(あるいはティーバッグ)、シナモンパウダー、すりおろした生姜を
入れます。3 鍋に牛乳、砂糖を入れて沸騰直前まで加熱します。
③②を①のティーポットに注ぎ、ふたをして2分30秒蒸らします。
時間になったらカップに注いで完成です。
⇒作り方のコツは、牛乳が分離しないようにするために弱火で加熱しましょう。

終わりに
冬の食養生について、いかがでしたか?
ポイントは、まず身体を温めることです。冷たいものや生ものの摂取を控え、おでんやお鍋など温かい料理を積極的に食べましょう。そして身体を冷やさないよう防寒も必要です。
風邪やインフルエンザが流行してきますので、早いうちから養生していきましょう。
※1六淫は、もともと人体には無害のはずの六気(自然の6種類の気候変化)が過剰・不足・不応時(季節外れ)によって人体の適応能力を超すことで、外感病を引き起こすことを意味します。
外感病とは外部自然環境の異常な変化で起こる病気のことを言います。
※2 発表解表とは、汗と気を発散させるという意味です。
<参考URL>
http://www.kisetsunoyasai.com/vegetable/ginger.htm
https://www.sbfoods.co.jp/recipe/detail/03275.html
https://shirokaneze.com/cooking/how-to-make-cinnamon-rusk
https://yamaichitate.sakura.ne.jp/wp/?p=9147
<参考文献>
日本薬膳学会 管理薬膳講座2015年「薬膳の基礎‐食材の作用」