「陰陽五行説」とは?最初に知っておきたい薬膳の基本

  1. ホーム
  2. 薬膳の基本
  3. 「陰陽五行説」とは?最初に知っておきたい薬膳の基本
red moon during night time
Photo by Pedro Figueras on Pexels.com

「薬膳でもっと健康的に、きれいになりたい!」

そう思って、まず薬膳における体質診断を知りたいという方は多いのではないでしょうか?まさに、自分の体質を知ることが薬膳における最初のステップです。

ただ、その前に「薬膳の基本の考え方」について理解しておく必要があります。古代中国から様々な叡智と技術が積み重ねられて、今日の薬膳はできています。

基本の理論体系がわかると、応用ができ、薬膳を自分で使いこなせるようになります。

まずは最も大切な基本の考え、「陰陽五行説」と「五味」「五性」「五臓」について今日はお話します。

陰陽五行説とは?

薬膳の基本の考え方に、古代中国から続く概念のひとつ「陰陽」というものがあります。「陰陽師」や「陰陽道」という言葉のほうをご存知の方がいるかもしれませんね。

また、「五行説」というものも、陰陽と合わせて考えられています。これは自然界にあるあらゆる事物は「火・水・木・金・土」のいずれかに属するという考え方です。

神秘的で謎が多い理論のように見えますが、れっきとした古代中国の自然哲学思想。人間の知恵と生活の経験によって実証されているものです。さっそく、この「陰陽五行説」について見ていきましょう。

陰陽とは?

「陰陽」とは、ズバリ「昼と夜」を対置させてあらわす言葉です。

「陽」は温かいもの、明るいもの、上昇するもの、エネルギーを活性化するもの。

「陰」は冷やすもの、暗いもの、下降するもの、エネルギーを鎮静化するものを、それぞれ意味します。

「陰と陽」という字のイメージから、「陽のほうが元気そうだし、こっちになれば良いのかな」というふうに考えてしまうかもしれませんが、それはあやまり。薬膳においては、陰と陽のどちらに偏っても、体調は崩れてしまうと考えます。

陰陽のバランスがきちんととれている状態を「中庸(ちゅうよう)」と呼びます。この中庸を目指し、どちらかに偏っている場合は反対側の方向にすこしずつ引き戻していくよう、漢方や薬膳を用いていくわけです。

食物の「陰陽」とは?

体質や体調に合った食材を選ぶ時、その素材が「陰陽」のどちらに属するか、ということを薬膳では重要視します。

「陰」に属する食材は、体から余分な熱を取り除く・体に水分を補うといった効能があります。例えばキュウリ・大根・トマト・スイカなど。

「陽」に属する食材は、体を温める・血の巡りをよくするといった効能があります。例えばトウガラシ・生姜・ねぎ・シナモン・鶏肉など。

もしあなたが冷え性とむくみで悩んでいたら、体に水が溜まって冷えている状態なので、「陽」の食材をよく摂るようにすると良いというわけです。

このように、体質と体調に対して「中庸(=バランスが取れる)」になるような食材を選ぶことが薬膳の考え方です。

「陰陽」の考え方は、この後に説明する「五味」「五性」「五臓」として、より詳しく理解することができますよ。

五行説とは?

「五行説」は、自然と人体、世の中の物事は「火・水・木・金・土」の5種の元素からできているという考え方です。

これら全てのバランスがとれると、人体は理想的な健康になれるということ。それぞれの要素は切り離されることなく、相互に関連しあっています。

五行説をもとに、臓器や感覚器、味や色味などを関連付けて説明することができます。

「関連」や「バランス」という言葉からわかるように、「火・水・木・金・土」はそれぞれ独立した概念ではありません。自然界のあらゆる事物は揺れ動き、変遷しています。いわば「変化する途中の状態」というわけです。

人間の体の状態も絶えず揺れ動いています。電卓が「1足す1は2」とはじき出すようにある外部の入力に対して決まった結果が出てくる……というものではありません。

だからこそ、さまざまな自分の体の声に耳を澄ませるため、その知識・心・技術を身につけられる基本の理論を知っておく必要があります。

ここからは、先ほど登場した「五味」「五性」「五臓」の説明をコンパクトにわかりやすくしていきます。それぞれかなり深い概念なので、今後こちらのブログで何度か触れていきたいと思います。今日は「こういう言葉なのかな」とざっくりイメージをつかんでいただければ大丈夫ですよ。

五味とは?

五味とは、食材の味を表すだけでなく、体に及ぼす影響によっても分類されるもの。次の5種類から成ります。

酸=酸っぱい味/肝・胆・目に効く/青色/木/春

苦=苦い味/心・小腸・舌に効く/赤色/火/夏

甘=甘い味/脾(※1)・胃・唇に効く/黄色/土/梅雨

辛=辛い味/肺・大腸・鼻に効く/白色/金/秋

鹹(かん)=塩辛い味/腎(※2)・膀胱・耳に効く/黒色/水/冬

(※1)消化器の働きを促す機能

(※2)生命力・成長・性の働きを促す機能

「たくさんあって覚えるのが大変そう…」と心配しなくて大丈夫。これから、一つひとつ取り出して系統的に説明していきますので、自然と体得できるようになりますよ。

例えば、呼吸運動をつかさどる「肺」は、実は「大腸」「皮膚」と連動しています。空気が乾燥しやすい秋は、大腸や皮膚も乾いているということです。そこで「肺」を潤す食材を選ぶことで、他の部分も潤され、便秘や肌の小ジワも改善されていく…ということになります。

五性とは?

食材の体を温める・冷やすという働きを5種に分類したものです。

熱性=体を熱する

温性=体を温める

平性=温めすぎず、冷やしすぎない。穏やかな食材

涼性=体を冷やす

寒性=体から冷やす働きが強い

五臓とは?

五臓は、臓器や器官そのものというよりも、体の持つ機能を系統的に象徴するものと考えると良いです。五行説の応用です。

たとえば「肝」=肝臓ではなく、肝臓機能を含んだ広い範囲の働き全般を指します。

肝=「気」の流れをつかさどる。血を作り、エネルギーを全身に行き渡らせたり蓄えたりする機能

心=精神や思考、意識に深くかかわる。ポンプ作用で全身に血液を循環させる機能

脾=栄養分を「気・血・水」に変えて全身に及ばせる。食物を消化・分解・吸収する機能

肺=呼吸運動をつかさどる機能。皮膚の保護、免疫機能の調節にも影響する

腎=ホルモンバランスや成長・発育、性欲にかかわる。泌尿器系の役割を持ち、性と生命力を蓄える機能

食材の五味・五性を組み合わせた薬膳によって、五臓の役割を促進したり沈静したりできます。

これらの五味と五性、五臓はとても大切な概念で、これからもこのブログに何度も登場します。ゆっくりでいいので、理解を深めていきましょう。

「陰陽五行説」によって薬膳の工夫が広がる!

いかがでしたでしょうか?薬膳の奥深い世界は、学ぶほどに面白く、実用的になっていきます。

薬膳は「陰陽五行説」の考え方をもとに、しっかりとした理論体系ができています。これらを理解することで、薬膳を工夫したり応用できるようになり、健康的で美しい体と心にぐっと近づいていくことができます!

今日の解説をもとに、次回からは体質診断などの説明をしていきますね。

次回もお楽しみに!