【薬膳】スタミナの宝庫 にんにく

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疲れたらにんにく、スタミナをつけたいからにんにく。私たちには、にんにくイコールスタミナ、という公式ができていますね。今回はにんにくとはどのような栄養があり、薬膳の効能としてどのようなものがあるのかをご紹介します。

garlic bulbs on brown surface
Photo by Nick Collins on Pexels.com

にんにくの原産地や特徴とは?

ニンニクはヒガンバナ科ネギ属の多年草で、私たちが一般的に食用にしているのは鱗茎、いわゆる球根のように地中で肥大したものを指します。

原産地は中央アジアから西アジアあたりとされていて、古代エジプトでは紀元前3000年以前にはすでに栽培され、食用として利用されていたということです。紀元前3700年頃のピラミッドからは、粘土で形作られたにんにくの模型も発見されています。

また、紀元前1500年の古代エジプトの医学書、エーベルス・パピルスには、にんにくが持つ薬効を22の項目に分け、数々の症状に合わせた処方が記載されています。

ピラミッドの建設時、激しく体力を消耗する労働者が疲れを癒し、健康を維持するために、日常的にニンニクを食べていたという話は有名ですね。

ニンニクはその薬効の高さから、食品として、また、医薬品として世界中に広がっていきます。日本へは4世紀頃、中国、朝鮮半島を経て伝えられたといわれています。古事記、日本書紀にもにんにくについての記載があり、その薬効については『大同類聚方』という、平安時代初期に編纂された日本最古の医学書に、栽培については918年の『本草和名』という日本最古の薬物辞典に記載されていて、日本でも古くからその効果が知られていたことを垣間見ることができます。

ただし、仏教伝来とともににんにくは五葷(ごくん)として、動物性食品と同様に食べることを禁じられていました。五葷とは、主にネギ、玉ねぎ、ニラ、らっきょう、ニンニクを指しこれらに共通する成分、アリシンが発する臭いがあるものを指しています。

にんにくの栄養

カリウム

カリウムは体内に溜まった余分な塩分を排泄し、高血圧を予防したり、むくみを解消したりする働きがあります。

また、ナトリウムとともに筋肉の動きを正常に保つ働きがあります。

鉄は主に血液中のヘモグロビンの中に含まれていて、体の隅々に酸素を送り届ける働きがあります。鉄分が不足すると、貧血、動悸、息切れやめまいを引き起こすことがあります。

血液中以外には、肝臓に貯蔵鉄として蓄えられています。女性は月経や妊娠・出産・授乳と鉄分を失う機会が多いため、しっかりと取る必要があります。

銅はヘモグロビンの中に鉄を定着させる働きをしています。また、からだの中の多くの酵素の原料ともなり、健康を維持することに大切な栄養素の一つです。そのため、鉄分を取っていても、銅が不足すると貧血を引き起こしてしまいます。

葉酸

葉酸は、私たちの体のたんぱく質や骨などが作り出されるときに必要なDNAの合成を担っています。また、ビタミンB12とともに血液の生成を担っており、不足すると巨赤芽球性貧血という悪性貧血を引き起こします。妊娠初期の女性が葉酸不足になると、胎児が神経管閉鎖障害という発育不全を拭き起こす可能性があります。

アリシン

アリシンはにんにくを切った時に出てくる、独特の香り成分で、硫黄化合物です。

アリシンは殺菌作用が強く、カビや細菌を駆逐する働きを持っています。また、動脈硬化などの生活習慣病を改善したり、ダイエットを促進したりする働きを助ける役割があります。

薬膳で考える こんな時ににんにくがおすすめ

中医薬膳学ではにんにくを下記の通り定義しています。

性味帰経効能適応
(生)辛・熱 (加熱後)甘・温脾胃肺温中 健胃 止咳 化痰 宣竅 解毒 殺虫下痢 食欲不振 風寒感冒、血便 抗菌 体力回復

『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

・疲れがたまり、少し風邪気味。

体に熱がこもっているというよりは、少し寒気がするとき。ひどくならないうちに改善できるよう、食べ物を工夫したい。

薬膳では、にんにくは体力を回復し、風邪を予防する働きがあるとされています。少し風邪気味だと感じる時は、体力が落ちていることが多いものです。

胃腸に負担をかけないためにも、こってりとした料理よりは、あっさりとしたしゃぶしゃぶや温野菜サラダなどがおすすめです。酢、しょうゆ、ごま油に砂糖を少し加えたドレッシングに、おろしにんにくを少し加えたものが食べやすいですね。

少し体力がある場合はシーザーサラダドレッシングのような、少し濃厚なソースはいかがでしょうか?マヨネーズにすりおろしたにんにくを加え、お好みの濃度に牛乳などを加えて薄め、塩少々で味を調えると、簡単に作ることができます。

温野菜など、温かい料理で体をあたため、ニンニクの薬効を取り入れ、しっかりと休息を取ることが風邪などの感染症から体を守る一つの手段になりますよ。

・生魚を食べるとき。

薬膳では、にんにくには虫下しの作用があるとされています。これは、ニンニクに含まれる殺菌効果が古くから知られていたということでもありますね。カツオのたたきや生食用の肉類をユッケとしていただくとき、すりおろしや千切りにしたにんにくを添えるのは、食材の臭み消しというだけではなく、寄生虫の駆虫、また、食中毒の予防という意味もあったのでしょうね。

にんにくレシピ

日々の食卓に便利に使える!にんにくのしょうゆ漬け

にんにくはいつも余り、使い切れずに捨ててしまう、という方には特におすすめの、とても簡単な作り置き調味料です。漬け込んだにんにくはそのまま、また、刻んで料理に使うこともでき、とても便利ですよ。

【材料】

・にんにく・・・適宜

・唐辛子・・・適宜

 (辛いのが苦手なかたは入れなくても大丈夫です。)

・しょうゆ、みりん・・・各適宜

【作り方】

  1. にんにくは皮をむいて縦半分に切り、芽を取り除きます。唐辛子は種を取り除き、にんにくとともに清潔な保存容器に入れておきます。
  2. しょうゆ200ccに対し、みりんを小さじ1杯の割合で混ぜ合わせ、①の瓶に注ぎ入れます。にんにくがひたひたに浸かるよう、量を調整してください。
  3. 蓋を閉め、冷暗所で保存します。3日程度でしょうゆににんにくの味や香りが付き始めますが、2か月目頃から味がなじみ、よりおいしくなります。

出来上がったしょうゆはそのまま中華風の炒め物や刺身のつけ醤油として、また、ドレッシングを作る時に利用しても、簡単に味に深みを与えることができます。

にんにくは一日ひとかけくらいずつ、そのまま食べたり、すりおろし、または刻んで調理に使ったりして利用してくださいね。

まとめ

とても多くの薬効があることが古くから知られているにんにく。アメリカでは、かつてがんによる死亡率の高さが問題になっていまいした。

そんな中、国立がん研究所により、がんになりにくい、がんを予防する効果が期待できるという食品を選び、デザイナーフーズ計画として、その効果が強いと思われる順にピラミッド形に表し、推奨していました。

にんにくはその頂点に位置しており、がんを予防する効果が高いと考えられています。

ただし、ニンニクは薬効が強く、食べすぎるとかえって胃腸を炒めてしまうことがあります。過ぎたるは猶及ばざるが如し、適量を守り、少しずついただき、健康な体を維持できるとよいですね。