【薬膳】肌を整え冷え症改善、むくみ解消によいふぐ

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冬の鍋の王様、といえば、ふぐではないでしょうか?てっさ、ふぐの唐揚げにヒレ酒、おいしいてっちりをいただくと、翌日はお肌もしっとり。今回は毒を持ちながらも私たち日本人が愛してやまないふぐについて、生態からおいしいレシピ、薬膳の効能などをご紹介します。

ふぐの原産地や特徴とは?

ふぐの仲間は、世界中に400種以上が知られており、日本周辺には約60種類の生息が確認されています。そのなかから私たちが食用としているものは20種類程度となっています。

一般的に「ふぐ」と呼んでいますが、これはフグ目フグ科に属する魚の総称で、トラフグやマフグ、ショウサイフグ、シロサバフグなどが有名ですね。

ふぐのほとんどは陸地に近い岩礁部や砂利などが多い浅瀬に生息し、強力な4本の歯でカニやエビなどの甲殻類やゴカイの仲間などを捕食しています。中には海底の砂底に直径2メートルほどもある、まるでミステリーサークルのような円形の巣を作って産卵する種類、砂底に潜っている種類など、その生態も面白いものです。

日本では古くから食用とされ、縄文時代の貝塚からもフグの骨が発見されています。しかし、その毒で命を落とすものがいることから、豊臣秀吉は、ふぐを食べることを禁じていました。

明治時代に入り、伊藤博文の働きにより、再びふぐが食用の魚として広く認められるようになっていきます。

ふぐの毒は、おもにテトロドトキシンという物質で、いまだに解毒薬が開発されていません。毒を含む部位は品種によって違いがあるほか、同じ品種のふぐでも、生息環境により含まれている部位が変わってしまうという、やっかいな性質を持っています。

さらに、昨今の海水温の上昇からふぐの生息域が変化し、ふぐの交雑化が進んでいます。雑種になったふぐは思わぬ部位に毒を貯めていることがあり、素人が捌いて調理すると中毒を起こす危険があります。魚釣りで釣れることもあるふぐですが、食べるときは必ず免許を持つ魚屋さんなどに調理を依頼しましょう。

ふぐの栄養や薬膳的効能

  • たんぱ
  • く質

脂質、糖質とともに3大栄養素の一つであるたんぱく質は私たちの筋肉や骨、免疫細胞のもとになるほか、エネルギー源としても利用されています。肌や骨は日々破壊、再生を繰り返しているため、毎日欠かさずに取る必要があります。

  • カリウム

カリウムは過剰に摂取したナトリウムを排せつさせ、体内の塩分濃度を調節する働きがあります。そのため、塩分を薄めようと体内に停滞している水分も排せつされるため、むくみは解消し、血圧を安定させる働きがあります。

  • 亜鉛

亜鉛は新陳代謝を司る酵素の成分の一つで、皮膚や粘膜、血管の健康を維持する働きがあります。不足すると肌が荒れたり、味覚障害を引き起こしたりすることがあります。

  • ビタミンB6

ビタミンB6はたんぱく質からエネルギーを生産し、筋肉や血液の生成にかかわっています。不足すると、湿疹や口内炎、貧血を引き起こすことがあります。

  • ビタミンB12

ビタミンB12は、葉酸とともに赤血球の中に含まれるヘモグロビンを作る働きをしています。また、脳から出る神経の伝達を正常に行う働きもあります。

  • タウリン

タウリンは水溶性のアミノ酸の一種で、体内のあらゆる臓器に存在し、体温や血液を一定に保ち、肝臓の解毒作用を高めてコレステロール値を正常に保つ働きがあります。

  • コラーゲン

コラーゲンはたんぱく質の一種で、肌のハリ、弾力を保つ働きがあります。ビタミンCと合わせて摂取することで、上手く取り込むことができるようになります。てっちりでふぐとともにポン酢や野菜を合わせるのは、理にかなっているのですね。

  • ナイアシン

ナイアシンは水溶性ビタミンの一種で、たんぱく質や脂質からエネルギーを作り出すとともに、皮膚や粘膜を健やかに保つ働きがあります。不足すると食欲不振や認知症、皮膚がうろこ状になる皮膚炎を引き起こすことがあります。

薬膳で考える こんな時にふぐがおすすめ

中医薬膳学ではふぐを下記の通り定義しています。

性味帰経効能適応
甘/温脾腎補虚損 袪湿 消腫冷え症 むくみ 足腰の衰え 体力回復

『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

・疲れが溜まってしまい、気力、体力が衰え、食欲が出ないとき

 薬膳ではふぐには疲労を回復し、体力をつける働きがあるとされています。

年末年始の多忙な時期、疲れがたまってしまうと、気力がなくなるだけではなく、消化不良を起こしたり、肩こりや頭痛を引き起こしたりすることがありますね。栄養学的にみても、エネルギーを作り出す働きがあるビタミン類やたんぱく質、疲労回復に効果的なタウリンを多く含むふぐはおすすめです。

あまりにも疲れて食欲が出ないときは雑炊にして、ポン酢の酸味をプラスし、温かいものを頂くとよいですね。消化の良い白身の魚なので、胃腸への負担も少ないのも魅力です。

・冷えで体が重いとき

寒さから冷えが溜まると、筋肉が縮こまり、知らず知らずのうちに体にぐっと力が入っていたり、体が重く、動きが鈍くなってしまったりすることがありますね。

薬膳では、ふぐには体を温める作用があるといわれています。家族や親しい仲間とてっちりを囲み、温かい鍋を頂くと、体の中から温まることはもちろん、鍋から上がる蒸気や熱気で体を潤し、血行が良くなることで足腰の重さも解消に向かうことでしょう。

・筋力の衰え、肌の老化が気になるとき

薬膳では、ふぐは脾に入ると考えられています。脾は消化・吸収機能、免疫機能の一部などを司るといわれています。脾の働きを整え、食べたものをしっかりと消化・吸収してこそ、私たちの体は健康を保つことができます。

ふぐレシピ

てっちりやてっさ、ふぐの唐揚げもおいしいですが、寒い冬にはちょっと目先を変えて、ふぐの蒸し寿司はいかがでしょうか?

アツアツに蒸したすし飯に、ふぐの薄造り、たっぷりのあさつきを散らすと、すし飯の予熱や湯気でフグの切り身にほんのりと火が入ります。

ふぐの蒸し寿司

【材料】   4人分

・米・・・2合

・水・・・適宜(炊飯器のメモリに合わせる)

・出汁昆布・・・10cm角(酒で湿らせたキッチンペーパーで表面を拭いておく)

・酢・・・30cc

・a塩・・・大さじ1/2

・a砂糖・・・大さじ1.5

・卵・・・2個

・b砂糖・・・大さじ1

・b塩・・・ひとつまみ

・あさつき・・・4本

・ふぐ(切り身)・・・10切れ程度

【作り方】

  • 米を洗い、炊飯器に入れて水加減をしてから昆布を入れ、30分程度吸水させてから炊飯します。
  • 小鍋に酢、aの塩、砂糖を入れてひと煮立ちさせ、塩、砂糖を煮溶かしておきます。
  • 卵にbの塩、砂糖を加え、よく溶きほぐして卵焼き機で焼き、細切りにして錦糸卵を作っておきます。
  • あさつきは小口に切っておきます。
  • ①のごはんが炊けたら飯切りに取り、②のすし酢を少しずつ加えながら混ぜ、すし飯を作っておきます。
  • 耐熱性の茶わんや和せいろなどにすし飯を盛り、③の錦糸卵を散らしてから、蒸気が上がった蒸し器に入れて温まるまで蒸します。
  • 蒸し上がったら取り出し、ふぐの切り身、あさつきを彩りよく並べます。

まとめ

お正月前になると、スーパーマーケットの魚コーナーにはふぐがたくさん並びますね。少人数のご家庭で量が多すぎる場合などは、てっさ用のお造りを求め、しゃぶしゃぶにして食べたり、今回ご紹介したような、しっかりと温まるお寿司にしたりして召し上がってみてくださいね。

なお、釣りに行くと、ふぐは意外にもよく釣れる魚の一つです。が、素人が捌くのはとても危険です。食べたい時には、必ず信頼できるフグ調理資格を持つ調理師さんに依頼してくださいね。