糖質制限やグルテンフリーの食事など、日本でも以前から健康志向が高まってきています。そんななか注目されているものの一つが薬膳です。
薬膳が気になっているけど、何をしたら良いかわからないという方は、まずは自分の身体を知ることが大切です。
せっかく薬膳を意識した生活を始めても、反対の性質を持つ食材を取り入れていては、いつまでたっても改善しません。場合によっては、症状がますます悪化してしまうことも。自分がどのタイプにあてはまるのかを知って、正しく対処していきましょう。
体質のタイプ
中医学では、身体を巡る3つの要素「気」「血」「水」がバランスを保つことで健康状態を維持していると考えます。
この3つの要素の過不足や流れによって、中医学の概念でいくつかのタイプに分けることができます。体質から分類されるタイプを知り、それぞれに適した生活スタイルや薬膳を取り入れて対処しましょう。
体質のタイプには大小さまざまな分け方がありますが、ここでは8つのタイプに分けていきたいと思います。
気虚タイプ
最初に紹介するのは、気虚タイプです。気虚とは、「気」というエネルギーが不足している状態のこと。誰しも激しい運動をしたり、力のいる作業をするとドッと疲れが出て一時的に気が不足した状態になります。通常は睡眠や休息によって回復するものの、気虚タイプは慢性的に気のエネルギーが失われてしまうのが特徴です。
気虚になると免疫力の低下がみられ、風邪をひきやすくなります。感染症の気になる時期、気虚タイプにあてはまる方は、早めに体質改善していきたいものです。
気虚タイプの特徴 |
・体力があまりない ・風邪をひきやすい ・動悸や息切れを起こしやすい ・食欲がない ・生理不順 ・不正出血を起こしやすい |
気虚の対処法 |
免疫力を上げることが大事。うなぎや卵、山芋など滋養強壮の効果がある薬膳を取り入れましょう。消化機能が低下しないよう、油っぽいものや冷たいものは控えるようにしましょう。 質の良い睡眠を取ることも大切です。 |
気滞
気滞とは、「気」のエネルギーの循環が悪くなっている状態のこと。自律神経の乱れがあったり、コントロールが難しくなっているのが特徴です。精神的にも不安定になりやすいので、心を落ち着かせることが大切です。
気滞タイプの特徴 |
・イライラしやすい ・おならやゲップなどのガスが出やすい ・気持ちにムラがある ・寝つきが悪い ・月経前症候群に悩まされている |
気滞の対処法 |
気滞の場合、「気」そのものは不足していません。せっかくある気の巡りを良くするためには、良く動いてしっかり休むという、オンとオフの切り替えをはっきりすることが重要です。ストレスも原因となっていることがあるので、規則正しい生活をこころがけ、リラックスする時間を作るようにしましょう。 薬膳としては、パセリや青じそ、生姜などの香味野菜や、ハーブなどを取り入れて心を落ち着かせるのが良いでしょう。トマトやきゅうりなど、熱を冷ます食材を取り入れるのもおすすめです。 |
血虚
血虚とは、「血」が不足している状態のこと。血液量が少なかったり、量は十分でも質がよくない状態が血虚にあてはまります。
月経や出産などで血が失われる機会の多い女性に多くみられるタイプです。
血虚タイプの特徴 |
・眠りが浅い、不眠 ・めまいや立ちくらみがある ・月経血が少ない ・集中力がない ・目が疲れやすい ・手や唇が荒れやすい |
血虚の対処法 |
血虚の対処法としては、血の消耗を避けることが大切。夜更かしは避け、早めに休むようにしましょう。 また、血虚タイプの方は栄養不足であるため、ひじきや黒ゴマなどの黒い食材を積極的に摂る薬膳がおすすめ。血を補う効果のある、ライチやほうれん草なども取り入れるとさらに良いですよ。 |
血瘀
中医学では「血」は血液の意味に加え、養分を巡らせる働きを意味しています。その血液や養分が滞っているのが血瘀タイプです。
血や養分の巡りが悪いため、肌のトラブルや肩こり、関節痛に悩まされることが多いのが特徴です。
血瘀タイプの特徴 |
・目の下にクマができやすい ・肩こりに悩まされている ・アザができるとなかなか消えない ・肌の乾燥が気になる ・肌がくすんでいる ・肌のシミが多い ・頭痛や関節痛がある ・喫煙者 |
血瘀の対処法 |
血瘀タイプの方は、血の巡りを良くするため身体を冷やさないことが大切です。身体を締め付けやすい洋服を避け、日々の生活のなかにストレッチを取り入れていきましょう。 血流を良くする薬膳もおすすめです。玉ねぎや青魚などを積極的に摂取しましょう。 |
陽虚
中医学では陰陽説といって温かい状態のことを「陽」、寒い状態のことを「陰」と表しています。
陽虚は暖かい状態である「陽」が不足していることで、寒気を感じてしまうのが特徴です。「気」「血」「水」の3の要素とは別の考え方ではありますが、陽虚が進行すると血瘀になることもあるので、早めに改善することが大切です。
陽虚タイプの特徴 |
・手足が冷たい ・下半身が冷えやすい ・寒気を感じる ・下痢になりやすい ・体型はぽっちゃりしている ・運動が苦手 ・色白 ・むくみやすい |
陽虚の対処法 |
露出の多い服は避け、普段から身体を冷やさないようすることが大事。夜はゆっくり湯船につかり、半身浴がおすすめです。 冷えを感じていたり、むくみやすい方は、身体を温める生姜や牛肉などの薬膳を取り入れましょう。 |
陰虚
陽虚に対して、「陰」が不足している状態なのが陰虚です。陰虚は自律神経が興奮しやすく、全身の潤いが不足して乾燥しているのが特徴です。
更年期が近づいていたり、長期的に薬を服用している方がなりやすい傾向にあります。
陰虚タイプの特徴 |
・火照ったり、のぼせやすい ・喉が渇きやすい ・塩辛いものが好き ・便秘になりやすい ・めまいや目のかすみがある ・やせ型 |
陰虚の対処法 |
潤いが不足しているので、水分を補うことが大切です。発汗作用のある食材は控え、野菜や果物からゆっくり水分を補うようにしましょう。 また、激しい運動は大量の汗をかいて乾燥状態が進行します。適度な運動にし、水分補給を欠かさないようにしましょう。 |
陽盛タイプ
水分は不足していないものの、身体に熱が籠りやすいのが陽盛タイプです。陽盛タイプは血液が粘性傾向にあるため、生活習慣病にならないよう注意が必要です。
陽盛タイプの特徴 |
・暑がり ・汗をかきやすい ・トイレに行く回数が少ない ・肌や髪が乾燥する ・便秘がち ・味の濃い食べ物が好き ・せっかちで怒りっぽい |
陽盛の対処法 |
陽盛の対処法としては、身体の熱を冷まし定期的に運動をすることが大事。 脂っこい食べ物やアルコール、刺激の強いスパイスはできるだけ控えるようにしましょう。スイカやセロリ、トマトやきゅうりなどの夏野菜や暑い地域の食材は身体の熱を冷ますものが多いので、意識して選んでみましょう。 |
痰湿タイプ
身体に余分な水分や老廃物が溜まっているのが痰湿タイプです。水が溜まることで、痰やむくみが生じます。水滞や水毒と表現されることもあります。
痰湿タイプは、五臓六腑のうち脾・胃・肺が弱っているのが特徴です。
痰湿タイプの特徴 |
・むくみやすい ・身体がだるく、重いと感じる ・甘いものが好き ・脂っこいものを好んで食べる ・痰や鼻水がよく出る ・肥満 |
痰湿の対処法 |
水分の摂りすぎには注意しましょう。脾・胃・肺が弱っているので、コーヒーなどの刺激物はできるだけ控えるのが賢明です。 痰湿タイプは身体に余分な水分が溜まっているので、外に排泄しやすい薬膳がおすすめ。そら豆やニラ、春菊や豆乳を積極的に取り入れましょう。 水分を排泄することで、痰やむくみを取ることができます。 |
まとめ
少し不調を感じていたり、すっきりしない感覚があったとしても、対処法がわからずそのまま放置してしまうことも少なくありません。
まずは自分の身体と向き合ってみることが大切です。対処するためにも、普段の症状などから体質のタイプを知ることから始めてみましょう。