食生活や感染症、疲れなど、お腹の調子が悪くなる原因にはさまざまなものがあります。注意しなければいけないのが、下痢の症状と便秘の症状では対処方法が異なり、取り入れるべき薬膳も違うということです。
ここでは、それぞれ症状別に摂るべき薬膳を紹介していきたいと思います。

中医学から見る下痢
細菌やウイルス感染が原因の場合は、できるだけ早く病院へ行くことをおすすめしますが、自宅で対応できることであれば薬膳を取り入れて改善していきたいものです。
冒頭でも下痢の症状がある場合と便秘の症状がある場合とで対処方法が違うと言いましたが、中医学では、下痢は4つのタイプに分けることができます。
暴飲暴食タイプ
食べすぎ飲みすぎは、下痢の症状がおこるもっとも多い原因の一つです。これは中医学からみたものに限ったものではありません。日ごろの食生活はもちろん、飲み会の席でも食べすぎや飲みすぎにならないよう事前に気を付けるようにしましょう。
ストレスタイプ
ストレスが溜まっていると、気の巡りが悪くなり胃腸が弱くなって下痢になりやすくなります。現代社会では特に多くなっている原因であるため、ストレスを溜めない生活をおこなうように心がけることが必要でしょう。
寒湿タイプ
冷えによってお腹の調子が悪くなると、水毒の状態になります。水毒とは身体のなかに余分な水分が溜まっている状態のことです。
水毒によって下痢を起こしているため、寒湿タイプの人は冷えと水毒の両方を改善する必要があります。
気虚タイプ
気虚タイプとは、「気」が不足して体力が落ち、免疫力が下がっている状態のことです。
胃腸が弱くなっているので下痢になりやすくなります。
中医学から見る便秘
便秘は快適に排便ができない状態のことですが、3~4日以上排便がなければ便秘であると言えるでしょう。
中医学では、便秘は以下の4つのタイプに分けることができます。
熱秘(ねっぴ)タイプ
熱秘タイプとは、胃腸に熱がこもることにより腸内で水分が多く吸収され、便が硬くなってしまうことです。
このタイプの人には、もともと胃腸に熱がこもりやすい体質の場合と、辛いものや味の濃いもの、お酒の飲みすぎによって胃腸で水分が多く吸収され、便が硬くなってしまった人の2つのパターンが考えられます。
寒秘(かんぴ)タイプ
お腹が冷えていることで腸の働きが悪くなり、排便がうまくいかないのがこのタイプです。このタイプは冷え性であったり、冷たいものの摂りすぎが原因でおこることが特徴です。
操秘(そうひ)タイプ
操秘タイプとは、身体の潤いが不足している状態のことです。産後や病後、高齢者などで体力があまりなく、腸が水分不足になっていると身体の潤いが不足しやすくなります。
気秘(きっぴ)タイプ
気秘タイプはストレスなどが原因で便秘になる人のことです。環境の変化で起こりやすく、旅行先では便秘になりやすいという人は気秘の可能性が高いと言えるでしょう。
お腹の調子が悪いときにおすすめの薬膳① 下痢のとき
ここからは症状に合わせておすすめの薬膳を紹介していきましょう。
まずは、下痢の症状におすすめの薬膳について紹介していきたいと思います。
おすすめの食材
下痢の症状があるときにおすすめの食材は、牛肉や山芋です。
いずれも、胃腸の調子を良くしてくれる作用があり、なかでも牛肉は、下痢を改善する効果が期待できます。
山芋は消化を助ける効果が期待できるので、積極的に摂取したい薬膳です。
薬膳レシピ
お肉は消化に悪いというイメージがありますが、牛肉は胃腸の調子を良くして下痢を改善してくれる薬膳の食材です。ここでは、「牛すじの薬膳スープ」と「山芋とろろ」を紹介します。
牛肉を使ったスープはテールスープが代表的ですが、牛テールはなかなか手に入りにくいのが難点。ここでは家庭でも作りやすいように、牛すじを使ったレシピで紹介したいと思います。
牛すじの薬膳スープ
【材料】
牛すじ 500g
長ネギ(煮込み用に青い部分) 1本分
長ネギ(仕上げ用) 1/2本
にんにく 2かけ
生姜 1かけ
鶏がらスープの素 大さじ1と1/2
塩コショウ 少々
水 1L
【作り方】
- まず初めに、牛すじの下処理からおこなっていきましょう。大きめの一口サイズにカットした牛すじを鍋に入れ、牛すじが被るくらいのひたひたの水(分量外)を入れて強火にかけます。
- 沸騰してきたら中火にし、5分ほど加熱してください。灰汁が出てきたらその都度取り除きます。
- 牛すじをザルにあげ、牛すじの表面に付いた灰汁などを流水で洗います。使った鍋も内側の壁面に灰汁が付いているので、一度洗っておきましょう。少し手間のかかる作業ですが、このひと手間が牛すじの臭みをとり、おいしく食べることができますよ。
- ここからは、牛すじを煮込んでいきます。
- 洗った鍋に牛すじを戻し、長ネギの青い部分、ニンニク2かけを入れて火にかけます。約1時間から1時間半、牛すじが柔らかくなるまで煮込みます。圧力鍋を使う場合は、15分加熱したら火を止め、圧が下がるまで放置しましょう。
- 牛すじから出る脂が気になる人は、このまま完全に冷めるまで放置すると冷えて脂が表面に固まります。固まった脂は取り除いても良いでしょう。脂は牛脂として他の料理に使うこともできますよ。
- 牛すじが柔らかくなったら、鶏がらスープの素、斜め薄切りにした長ネギ、千切りにした生姜を入れてひと煮立ちさせます。最後に塩コショウで味を整えて完成です。
山芋とろろ 1人分
【材料】
山芋 50g
白だし 大さじ1
【作り方】
- 山芋は皮をむき、すり鉢またはおろし金を使ってすります。山芋はさまざまな品種がありますが、粘りの強い自然薯などがおすすめです。
- 白だしを加え、全体に馴染むようにしっかり混ぜ合わせましょう。食べるときはご飯にかけて食べるのがおすすめですよ。
お腹の調子が悪いときにおすすめの薬膳② 便秘のとき
次に、便秘のときにおすすめの薬膳を紹介していきたいと思います。
おすすめの食材
便秘のときにおすすめの食材は、人参やさつまいもです。
いずれも胃腸の調子を良くし、便秘の改善に繋がる効果が期待できます。
薬膳レシピ
おすすめの薬膳レシピは人参を使った「キャロットラぺ」や根菜を別々に炊いて盛り付ける「根菜の炊き合わせ」です。
キャロットラペは、日持ちがするので多めに作っておくと便利ですよ。
キャロットラペ
【材料】
人参 2本
干しブドウ 適量
白ワインビネガー(または酢) 大さじ3
オリーブオイル 大さじ1
砂糖 大さじ1/2
塩 小さじ1/2
【作り方】
- 人参は千切りにし、塩もみしておきます。しんなりして水分が出てきたら、水気を絞りましょう。
- 調味料となるドレッシングを作ります。大きめのボウルに白ワインビネガー、オリーブオイル、砂糖、塩を入れしっかり混ぜ合わせます。酸味が苦手な人は砂糖の分量を増やしても良いでしょう。
- ①の人参を加えてドレッシングをしっかり馴染ませます。お好みで干しブドウを入れてさらに混ぜたら出来上がり。日持ちするので、数日分まとめて作っておくことができますよ。
根菜の炊き合わせ
【材料】
人参 1/3本
さつまいも 1/2本
蓮根 10cm
インゲン豆 5本
A: だし汁 300㏄
A: 砂糖 大さじ1
A: 薄口しょうゆ 大さじ1と1/2
A: 酒 大さじ1
A: みりん 大さじ1
B: 水 200㏄
B: 砂糖 大さじ1/2
B: 薄口しょうゆ 大さじ1/2
B: 酒 大さじ1
B: 塩 少々
【作り方】
- 炊き合わせはそれぞれの食材を別々に煮て一緒に盛り付ける料理ですが、ここでは2つの鍋に分けて調理していきたいと思います。
- まず、人参は1cmの厚さのいちょう切りにします。輪切りにし、野菜のぬき型を使って飾り切りにしても良いでしょう。
- さつまいもは綺麗に洗って皮ごと1.5cmの暑さに輪切りにします。切ったものは水にさらしておきましょう。
- 蓮根は1cmの厚さに半月切りにします。蓮根も切ったら水にさらしておきましょう。いんげんは筋を取り除いておいてください。
- それぞれ煮ていきます。まず、Aの調味料を鍋に入れ、火にかけます。ひと煮立ちしたらさつまいもと蓮根を入れ、15分ほど煮ます。柔らかくなったら火を止め、そのまま冷ましましょう。
- 次に、Bの調味料を②とは別の鍋に入れ、ひと煮立ちしたら人参を加えて5~6分煮ます。人参が柔らかくなったら、いんげんを加え、1~2分煮たら先ほどと同じようにそのまま冷ましておきましょう。
- 煮た野菜は一度冷ますことで味が染み込みます。食べるときは一つのお皿に一緒に盛り付けて食べましょう。
まとめ
薬膳は中国の食材を使ったものだけでなく、日常で食べているものでも作ることができます。和風や洋風の料理でも、しっかり薬膳としての役割を果たしてくれるので、日々の生活に積極的に取り入れていってくださいね。