秋の声が聞こえてくると食べたくなるかぼちゃ。一言でかぼちゃといっても、品種によりホクホク、しっとり、と、タイプがありますね。今回はそんなかぼちゃの中医薬膳学的な効能やおいしい食べ方をご紹介します。

かぼちゃの原産地は?
かぼちゃはウリ科カボチャ属の野菜で、中南米が原産だといわれています。もともとは苦みが強く、可食部は少なく、ヒョウタンのように水をすくったり、水や食べ物を保存しておいたりするための道具として利用されていたようです。
その後、現地で品種改良や突然変異などを経て、食用になるものが栽培されるようになりました。やがてコロンブスによりアメリカ大陸からヨーロッパに持ち帰られ、さらに品種改良が繰り返され、現在のような姿へと進化しました。
かぼちゃはポルトガル人により日本にも持ち込まれたとされています。その際、「カンボジアの野菜だ」と伝えられたことからカンボジアの売り、ということで、かぼちゃという名前になったといわれています。
日本に伝わってからもさまざまに品種改良が施されました。
・日本かぼちゃ 表面は花付きと軸を結ぶ放射状にでこぼこしていて皮が固く、肉質は水分が多くてねっとり、あっさりとした味が特徴です。主に煮物として利用されています。
・西洋かぼちゃ 表面は比較的つるりとしていて、皮は薄め。肉質はホクホクとして甘味が強いのが特徴です。煮物、焼き物や揚げ物のほか、菓子にと、オールマイティーに利用できます。
かぼちゃの栄養や薬膳的効能
かぼちゃにはとても豊富な栄養素が詰まっています。
かぼちゃの効能
- お肌の保護、アンチエイジング
- 免疫力アップ
- 冷え性の改善
肌や粘膜を保護するβカロテン
βカロテンは、私たちの体内でビタミンAに変化し、皮膚や粘膜を保護して免疫力の向上を担っています。また、目の網膜を構成する成分の一つ、ロドプシンの原料となり、暗いところでもある程度の視力を維持する働きを助けています。
また、ビタミンAは抗酸化作用が高く細胞の酸化やがん化を防ぐ働きがあります。
肌の再生に大切なビタミンC
私たちの肌の細胞一つひとつを結合しているコラーゲンを形成するために欠かせない成分で、皮膚や粘膜を健やかに保つ働きがあります。また、鉄分の吸収を高め、ビタミンA同様、高い抗酸化作用を持っています。
アンチエイジングに効果的なビタミンE
ビタミンEは細胞膜や血管の老化を予防し、血行を促進し、アンチエイジングにとても効果的な栄養素です。ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種なので、油を使った調理法がむいています。
中医薬膳学では、かぼちゃを下記の通り定義しています。
性味 | 帰経 | 効能 | 適応 |
甘/温 | 脾胃 | 補中 補気 化痰 | 胃弱 疲労 粘膜保護 血行促進 |
薬膳で考える こんな時にはかぼちゃがおすすめ
・冷え症 胃腸虚弱
薬膳では、かぼちゃは血行を促進し、体を温める効果に優れているといわれています。
最近の猛暑により、夏はエアコンの効いた室内で過ごす時間が長くなっていますね。そのため、一年中冷えを感じている女性が多くなっていますが、そんな冷え症の方にかぼちゃは適しています。
また、かぼちゃは薬膳では胃腸の働きを高める(補中)といわれています。ホクホクとして、繊維質も豊富に含むかぼちゃは便のかさを増やして腸の働きをよくすることから、特に冷えや加齢により腸の動きが悪くなり、下痢や便秘を引き起こしている方にもおすすめです。
・疲れやすい
かぼちゃには、気の働きを高め、生理機能の向上を促す働きがあるといわれています。これを薬膳では補気作用といい、体の基礎を整えることにより、気力(元気、やる気)を補う力があります。
・粘膜の保護
かぼちゃに含まれるビタミンA、C、Eは、どれも抗酸化作用が強いビタミンで、代謝を高め、傷ついた粘膜の保護や再生を促す力がとても強い野菜です。薬膳でも、かぼちゃは粘膜を保護し、喉に溜まった痰を切る力が強く、免疫力を高める作用が強いといわれています。
薬膳から考える 冬にかぼちゃを食べる理由
日本では、冬至にはかぼちゃを食べますね。これはかぼちゃの豊富な栄養素を取ることにより、免疫力を高めて風邪を引かないようにする、という意味だといわれています。
かぼちゃは夏から秋にかけて収穫し、1ヶ月程度の追熟を経て出荷されます。丸ごとのかぼちゃは日持ちすることから、古くから大切に保存して冬にも食べられてきました。
中医薬膳学では、かぼちゃをはじめとする、夏の強い日差しを浴びて成長する野菜は、「陽の気(成長する気)」をしっかりと蓄えているといわれています。
一方、冬になると、自然界や私たちの体には、寒さから体が縮こまり、「陰の気(ひきこもる気)」が満ちているといわれています。薬膳では、夏の成長する陽の気を蓄えたかぼちゃを、陰の気が満ちている冬に食べ、気の調和を図ることで健康になる、と考えます。
かぼちゃの選び方と保存方法
かぼちゃは表面に傷がなく、重みがあってヘタがコルクのように乾燥してひび割れているもの、切ってあるものは切り口が瑞々しく、種がたくさん入っているものがおすすめです。
保存の際は丸ごとのものは新聞紙などに包んで冷暗所に、切ってあるものは傷みやすい種の部分をスプーンなどで取り除き、ラップフィルムなどに包んで冷蔵庫で保存します。
すぐに食べきることができない場合は必要なサイズに切り分け、ラップフィルムで包んで冷凍することもできます。
かぼちゃレシピ
かぼちゃのひき肉あんかけ
ほくほくとしたかぼちゃは、小さな子どもや高齢者の方にとって、のどに詰まりやすく、飲み込みにくさを感じることもあります。そんな時にはとろとろとしたあんかけで、水分をしっかりと加えて食べやすくしてあげましょう。
薬膳では体を温めるかぼちゃ、しょうが、肌を整えるといわれる豚肉を合わせました。
体を温める作用を強くしたい場合は、同じく薬膳で体を温めるといわれる鶏肉や、エビを叩いてひき肉状にしたものを利用するとよいですよ。
【材料】 2人分
・かぼちゃ 200g程度
・豚ひき肉 100g
・しょうが 1/2かけ
・サラダオイル 大さじ1
・出汁 400cc
・しょうゆ、みりん 各適宜
・水溶き片栗粉 大さじ1程度
・ネギ、三つ葉など 各適宜
【作り方】1 かぼちゃは一口大に切り、濡らしたキッチンペーパーにくるんでラップフィルムをかけ、電子レンジ600Wで約4分、竹串がすっと通る程度に加熱しておいます。
(かぼちゃやにんじんなど糖分の多い野菜は、濡らしたキッチンペーパーなどで水分を加えておかないと発火することがありますので、ご注意ください。)2 しょうがはみじん切りにしておきます。3 フライパンにサラダオイルと②のしょうがを入れて熱し、香りが出てきたら豚ひき肉を加えて炒めます。4 豚ひき肉に火が通ったら出汁を加え、アクや脂を取りながらさっと煮たてます。5 しょうゆ、みりんで味を整え、水溶き片栗粉でとろみをつけます。6 器に①のかぼちゃを盛り、⑤のあんをかけ、ネギや三つ葉の小口切りを天盛りにします。
パンプキンプリン
「かぼちゃ料理」があまり好みではない方でも、甘いお菓子だと手が出やすいのではないでしょうか?
中医薬膳学では、材料の牛乳、卵、ともに体力を回復する作用に優れているといわれています。免疫機能を高める効果が期待できるかぼちゃと共に作るパンプキンプリン、秋から冬にかけて風邪を引きやすくなる季節に、ぜひともつくりたいおやつですね。
【材料】 18cmの丸型1個分
≪プリン≫
・かぼちゃ(正味) 300g
・牛乳 300cc
・グラニュー糖 60~80g
・卵 4個
≪カラメルソース≫
・グラニュー糖 80g
・水 大さじ2+1
【作り方】1 型には薄くバター(分量外)を塗っておきます。大きな型がない場合は、プリンカップやマグカップでも作ることができます。2 小鍋に水大さじ2とグラニュー糖を入れ、火にかけてカラメルを作ります。砂糖が溶けてカラメル色になれば火を止め、2~3分置いてから水大さじ1を加え、再度火にかけて煮溶かします。溶ければ①の型に流しいれておきます。3 かぼちゃは皮と種、ワタを取って2cm角程度に切り、濡らしたキッチンペーパーにくるんでラップフィルムをかけ、電子レンジ600Wで約4分、竹串がすっと通る程度に加熱しておいます。4 かぼちゃと牛乳、砂糖をミキサーに入れて攪拌し、なめらかになったらボールに移して、割りほぐした卵を少しずつ加え溶きのばします。5 ザルで濾しながら①の型に流しいれ、天板に湯をはったオーブンで40分程度、180℃で蒸し焼きにします。
まとめ
私たちのとても身近にある野菜、かぼちゃ。世界各国で利用され、さまざまな料理に利用して愛され続けてきたのには、栄養が豊富だという理由があったのですね。
ご紹介したように、薬膳でもさまざまな効能が認められています。便秘解消には多めの水分と共に、疲労回復や免疫力の強化のためには毎日少しずついただきましょう。
即効性を期待することは難しいかもしれませんが、日々美味しく食べて健康になれるのが薬膳のだいご味です。
パウダーでも売っているので大きなかぼちゃを料理するのは少し大変という人でもパウダーをちょっと料理に足すことでかぼちゃの効能をえられますよ