秋に入り、風が冷たく乾燥する季節になると、喉が乾燥しやすくなり痛みや不調を感じるという人も増えてきます。

中医学では、喉の不調は「肺(はい)」が深く関係していると考えられ、肺を潤すことが喉の乾燥を防ぐことにも繋がっていると言われています。もちろん、そのような不調にも身近で手に入る食材を使った薬膳はおすすめ。肺を潤す効果のある薬膳を積極的に摂ることで、喉の痛みや不調に対処していきましょう。
喉の痛みが起こる原因は?
喉の痛みが起こる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
中医学では、五臓六腑(ごぞうろっぷ)の「肺(はい)」が喉の痛みや不調に大きく関係していると考えられています。
五臓六腑とは?
五臓六腑とは、中医学において身体を構成するもののうち、内臓を指す言葉です。
“五臓”は、気や血を生成したり貯蔵や運搬をする臓器のことで、「肝(かん)」、「心(しん)」、「脾(ひ)」、「肺(はい)」、「腎(じん)」が当てはまります。
一方、“六腑”とは食べたものを運んだり消化する臓器のことで、「胆(たん)」、「小腸(しょうちょう)」、「大腸(だいちょう)」、「胃(い)」、「膀胱(ぼうこう)」、「三焦(さんしょう)」が当てはまります。
肺が喉に影響する
身体には欠かせない五臓六腑ですが、このなかで「肺(はい)」は呼吸をつかさどる臓器です。肺が呼吸をつかさどるというのは、現代医学でも中医学でも共通して考えられていることですが、さらに中医学では肺には以下のような役割があると考えています。
・気をつかさどる
・宣発(せんぱつ)・粛降(しゅくこう)をつかさどる
・通調水道(つうちょうすいどう)の作用がある
・百脈を朝じる
これらは、気の巡りを良くすることで呼吸をスムーズに行なえるようにし、さらに水分を身体全体に巡らせることで、乾燥を防ぐことができるということです。
特に中医学における秋は、大気が乾燥し、肺が弱りやすい季節として考えられています。
肺は呼吸することで外気を取り込む唯一の臓器です。そのため、乾燥した外気の影響を非常に受けやすい臓器であると言えるのです。
肺が弱ると喉の不調を起こす
肺の異常として代表的なものには、肺気虚(はいききょ)、肺陽虚(はいようきょ)、肺陰虚(はいいんきょ)、肺腎気虚(はいじんききょ)、肺腎陰虚(はいじんいんきょ)、風寒犯肺(ふうかんはんはい)、風熱犯肺(ふうねつはんはい)、痰熱壅肺(たんねつようはい)、痰湿阻肺(たんしつそはい)、操邪犯肺(そうじゃはんはい)があります。
これらは肺に必要なものが不足している状態であったり、邪気が入り込んだ状態によっておこる肺の異常です。
【おもな肺の異常】
肺気虚 | 肺に送り込む「気(き)」が不足した状態 |
肺陽虚 | 「気(き)」の不足が進み、身体を温める作用が低下した状態 |
肺陰虚 | 肺に送られる「血(けつ)」や「津液(しんえき)」が不足した状態 |
肺腎気虚 | 肺(はい)と腎(じん)に送り込む「気(き)」が不足した状態 |
肺腎陰虚 | 肺(はい)と腎(じん)に送り込む「血(けつ)」と「津液(しんえき)」が不足した状態 |
風寒犯肺 | 肺に「風寒邪(ふうかんじゃ)」が入り込んだ状態 |
風熱犯肺 | 肺に「風熱邪(ふうねつじゃ)」が入り込んだ状態 |
痰熱壅肺 | 「痰飲(たんいん)」という身体に停滞した異常な水液が熱を帯び、肺の機能を阻害した状態 |
痰湿阻肺 | 「痰飲(たんいん)」が肺に溜まり、機能を阻害した状態 |
操邪犯肺 | 「操邪(そうじゃ)」の影響を受け、肺の機能が低下した状態 |
このなかでも、喉の異常には特に肺陰虚(はいいんきょ)が関係していると考えられています。
肺陰虚は、肺に送り込む血(けつ)や津液(しんえき)が不足した状態のことで、身体を潤す機能が不足してしまいます。血(けつ)や津液(しんえき)には、熱を抑制する役割もあるので、不足することで熱を帯び乾燥した状態になってしまうのです。
喉の痛みにおすすめの薬膳
このように、喉の痛みや不調を改善するには、肺を潤し喉の乾燥を防ぐことが大切であることがわかります。ここからは、喉の痛みや不調におすすめの食材や薬膳レシピを紹介していきましょう。
おすすめの食材
肺を潤す薬膳には、大根、はちみつ、金柑、蓮根、バナナがおすすめです。
なかでもバナナを使った薬膳は、熱性を抑制する効果が期待できるので、夏に熱を帯びたときにもおすすめの薬膳です。

薬膳レシピ
おすすめの薬膳レシピは、風邪のときに摂りたい薬膳の記事でも紹介した「大根のはちみつ漬け」はもちろんですが、「蓮根入り豆腐ハンバーグ」や「金柑の甘露煮(コンポート)」、さらに手軽に作ることができる「バナナジュース」です。
特にバナナは一年中手に入る食材なので、いつでもすぐに作ることができますよ。
蓮根入り豆腐ハンバーグ 2~3人分
【材料】
木綿豆腐 100g
鶏ひき肉 150g
蓮根 100g
卵 1/2個
パン粉 大さじ3
大葉 3枚
大根 50g
塩コショウ 少々
ポン酢 適宜
【作り方】
- まずは豆腐の水切りをしていきましょう。木綿豆腐はキッチンペーパーで包み、深めの耐熱皿に入れて電子レンジで600Wの1分30秒加熱します。出てきた水分は捨て、粗熱を取っておきましょう。
- 蓮根はみじん切りにし、鶏ひき肉、①の水切りした豆腐、卵、パン粉を入れて塩コショウを少々します。粘りが出るまでよく捏ねましょう。
- ②の肉だねを3~4等分にし、成形します。
- フライパンを熱し、成形した肉だねを並べ、中火で片面に焼き色がつく程度に焼きます。焼き色がついてきたら蓋をして弱火にし、表面が白っぽくなるまで6~7分焼きましょう。
- 裏返し、さらに5分焼きます。
- 中まで火が通ったらお皿に並べ、大葉をハンバーグの上にのせ、すりおろして汁を切った大根をのせます。
- ポン酢をかけて完成です。喉が荒れているときは、酸味の少ない和風ドレッシングなどをかけて食べるとよいでしょう。
金柑の甘露煮(コンポート)
【材料】
金柑 500g
砂糖 200g
水 200㏄
白ワイン 100㏄
レモン汁 大さじ1~2
【作り方】
- 金柑は竹串などを使ってヘタを取り、綺麗に洗って側面に数か所包丁で切れ目を入れておきます。ちょっとしたひと手間ですが、こうすることでシワになりにくく、綺麗な甘露煮に仕上がりますよ。
- ①の金柑と材料の砂糖を鍋に入れ、金柑がひたひたになるように水を加えて中火にかけます。
- 沸騰し始めたら弱火にし、15分ほど煮てください。途中で灰汁が出てきたら取り除きましょう。
- 白ワインを加えて、さらに15分煮ます。
- 仕上げにレモン汁を加えて完成です。レモン汁はお好みで大さじ1~2の間で加えましょう。一度にたくさん作った場合は、熱いうちに煮沸消毒した瓶に詰め、蓋をして逆さまにしておくと脱気することができ、長期保存が可能です。
バナナジュース 2人分
【材料】
バナナ 2本
牛乳 200ml
【作り方】
- バナナはしっかり熟して黒い斑点ができたものを使用します。あらかじめ皮をむいて冷凍しておきましょう。
- 冷凍庫から出したバナナを6等分くらいにカットし、ミキサーに入れます。カットするときは、2~3分ほど常温に出しておくと切りやすくなりますよ。
- 牛乳を入れてミキサーにかけます。ミキサーにかける時間はお好みで調整してください。あまり長くかけすぎない方が、ほどよく粒が残りおいしくなります。
まとめ
いかがでしたか?
喉には乾燥が大敵。喉との関りが強い「肺(はい)」を潤すことで、喉の粘膜が乾燥することを抑えることができるということがわかりました。
肺を潤す薬膳は、これから寒くなる季節に積極的に摂りたいものです。今回紹介した薬膳は、保存がきくものもあるのでぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。