秋に食べたいさといも(里芋)

普段使いの薬膳レシピ
さといも(里芋)

一年を通じて見られるさといもですが、秋が旬の薬膳食材だということはご存じでしたでしょうか?現在、「いも」と言われて最初に想像されるのはじゃがいもやさつまいもではないかと思いますが、実は、さといもはじゃがいもやさつまいもよりも古くから栽培され、私たち日本人に親しまれてきた薬膳食材なのです。今回はそんなさといもについて、ご紹介します。

さといもの語源や原産地は?

本来、日本では「いも」は「山芋」のことを指していました。これに対し、里で人々が栽培するイモ、ということで、さといも(里芋)と名づけられてといわれています。

このさといも、原産地は東南アジアです。かの地ではタロイモと呼ばれるイモの一種で、古くから主食として利用されていました。

現地での品種改良を経て、日本には縄文時代に伝わってきたといわれています。日本にもたらされてからも、さまざまに品種改良されました。

芋を食べるものには、いわゆる「さといも」や「海老芋」、「京いも」、親芋と小芋が合わさっている「八つ頭」のほか、葉柄の部分を食べる、「ずいき」や「はすいも」などがあります。

スポンジのような編み目状になっていて、とてもよく出汁を吸い、煮物や炒め煮などに利用されています。

さといもは種芋の上に親芋ができ、その周りに小芋、さらにその周りに孫芋ができることから、子孫繁栄を意味し、縁起がよいとして、古くから正月や十五夜などの節句の供え物、料理に利用されてきました。十五夜のお月見を、別名「芋名月」と言いますが、この「芋」とはさといものことを指し、団子を供えるようになる前には、里芋を供えていたということです。

薬膳食材としてのさといも

中医薬膳学では、薬膳食材であるさといもは「五性」の平性、胃腸のトラブルが多くでやすい脾虚の体質のひとでは積極的に摂りたい食材です。また、胃腸の緊張を緩和して働きを向上し、高血圧の予防、むくみ解消や痰を切る働きがあるといわれています。

性味帰経効能適応
甘辛/平脾胃解毒 消腫 和胃 調中 化痰便秘・下痢/消化促進 高血圧予防
『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

さといもの栄養価・効能

では、さといもにはどのような栄養が含まれているのかを見ていきましょう。

むくみ解消に効果的なカリウム

薬膳食材であるさといもには、カリウムという成分が多く含まれています。カリウムはミネラルの一種で、細胞の活動をサポートし、筋肉や内臓が正常に動く働きをサポートしています。

また、過剰に摂取したナトリウムを排泄させることにより、むくみを解消するとともに血圧を安定させる働きがあります。

ただし、取り過ぎると高カリウム血症を引き起こす可能性があります。腎臓の働きに不安がある方は、摂取量についてかかりつけ医に相談してみてくださいね。

ぬめり成分のガラクタン・ムチン

ガラクタンは、炭水化物とたんぱく質からできている物質で、脳の働きを活性化させ、痴呆を抑制したり、免疫力を向上したりする働きがあります。また、がん細胞の増殖の抑制や、悪玉コレステロールの抑制に効果があります。

一方、ムチンは私たちの涙や鼻腔内、胃液などにも含まれているネバネバ成分で、粘膜を乾燥や細菌・ウイルス感染などから保護しています。

これらは水溶性食物繊維の一種で、これ以外にも老廃物やコレステロールなどの排せつを促してくれる効果が期待できますよ。

夏の間に水分が多く、冷たいものを食べすぎて胃腸に冷えが溜まり、何となく重く感じる場合、外出を控えていたために代謝が落ち、むくみを感じる場合などには、里芋の温かいみそ汁や煮ものでほっこりと温まるのもよいですね。

さといもの選び方・保存方法

皮つきのさといもは触ってみてしっかりと固く、ふっくらと丸みを帯びているものを選びます。芽が出ていたり、柔らかくなったりしているものは古く傷んでいるので避けましょう。

皮をむいて販売されているものは、表面が白くつやがあるものを選びます。黄みがかっているもの、赤い斑点があるものは避けましょう。

購入後、泥付きのものは乾燥を防ぐため新聞紙につつみ、常温で保存します。泥を洗ってあるものは冷蔵庫で保存しますが、傷みやすいのでできるだけ早く食べましょう。

皮がむいてあるものは水に浸けて変色を防ぎ、1~2日中に食べきるようにします。

それでも残ってしまいそうなときは、冷凍保存をお勧めします。さといもは作る料理に合わせて切り、ファスナー付きのフリーザーバックなどに並べて入れ、冷凍します。調理する時は、凍ったまま茹でるか焼いて料理することができますよ。

さといもの調理で手がかゆくなるのはなぜ?

さといもの皮をむいていると、チクチクと痒くなることがありますね。これは、皮から少し内側の細胞に含まれる、トゲのような形をしたシュウ酸カルシウムという成分の結晶が、皮膚に刺さることでおこります。

ビニール手袋を着用するか、流水をかけながらむくと、防ぐことができます。それでも痒くなってしまった場合は、塩や重曹をまぶし、洗い流してくださいね。

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さといもレシピ

さといもの白みそ和え

さといもは、京都風の白みそがとてもよく合います。柔らかな食感のさといもに、とろりとした白みそがからまり、ほっこりとした味を楽しめます。お好みで練りからしを添えて、ピリリと引き締めてもおいしいですよ。

かつおだしがしっかりと効いたみそ和えは、おふくろの味として男性にも好まれ、柔らかく仕上がるので小さな子どもから年配の方まで幅広い年齢層の方に楽しんでいただけます。

冬になると、練りからしの代わりに柚子の皮を散らしても香り高くおいしいですよ。

【材料】    2人分

・さといも・・・中4~6個

 (サイズにより調整してください)

・かつおだし・・・350~400cc

・しょうゆ・・・大さじ1

 (あれば薄口しょうゆ)

・かつおぶし・・・ひとつかみ

・白みそ・・・大さじ3程度

・三つ葉、練りからし・・・各適宜

【作り方】

 (キッチンペーパーで包むか、お茶パックなどに入れておきます。)

  • さといもは皮をむいて、大きければ半分に切り、さっと下茹でしておきます。
  • 鍋にかつおだしを沸かし、さといもを入れて、途中、かつおぶしを加え、すっと竹串が通るようになるまで煮ます。
  • ボールに白みそ、お好みで練りがらしを入れ、マヨネーズ程度の固さになるまで、②のゆで汁を加えて伸ばし、しょうゆで味を整えます。
  • 水分を切った②のサトイモを加え、和えます。
  • 器に盛り、小口に切った三つ葉を散らして出来上がりです。

さといもの香り焼き

潰したさといもにちりめんじゃこや干しアミエビなどを張り付けて、フライパンで焼きます。

ねっとりとしたさといもに香ばしさが加わり、とても風味豊かな味わいになります。

お好みで一味唐辛子を振って召し上がってくださいね。

【材料】    2人分

・さといも・・・中4~6個

 (サイズにより調整してください)

・ちりめんじゃこ、干しアミエビ、いりごまなど・・・各適宜

・片栗粉・・・適宜

・サラダオイル・・・大さじ1

・しょうゆ、みりん・・・各大さじ1程度

・ねぎ又は大葉・・・適宜

【作り方】

  • さといもはきれいに洗って耐熱容器に入れ、ふんわりとラップフィルムをかけて、竹串がすっと刺さるまで電子レンジで加熱します。(600Wで約3~4分、途中様子を見て上下を返してください)
  • ①が少し冷めたら皮をむき、ビニール袋に入れて麺棒で叩き潰します。4等分し、厚さ1cm程度の丸型に形を整え、干しアミエビやちりめんじゃこなどをまぶしつけます。そのあと、茶こしなどで片栗粉を薄く振っておきます。
  • ねぎは小口切りに、大葉を使う時は千切りにしてさっと水にさらし、しっかりと水気を切っておきます。
  • フライパンにサラダオイルを熱し、②を両面焼きます。
  • ④が焼けたらしょうゆ、みりんを加え、煮たてて全体にからめます。さといもにふりかけた片栗粉で上手にとろみがつきます。
  • 器に盛り、③のねぎ又は大葉を天盛りにします。
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まとめ

秋から冬にかけて旬を迎える薬膳食材であるさといも。日本だけではなく、アジアからヨーロッパまで、広く愛されている芋で、地中海沿岸では古くから揚げ物などに利用されています。

まとめて購入し、皮をむいて冷凍しておけば毎日少しずつ、みそ汁に入れたりさっと炊いたりして手軽に食べることができます。

ぜひ、日々の食卓に取り入れ、健康な体づくりに役立ててくださいね。

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