
夏の終わりから秋にかけて旬を迎えるレンコン。童謡『お弁当の歌』で、「穴のあいたレンコンさん」と親しんだ方も多いのではないでしょうか?実はこのレンコン、秋に起きる呼吸器の乾燥やアレルギーによる鼻水などを抑える働きなど、薬膳ではとても体に良い食材として知られています。今回は薬膳からみるレンコンの効能や、効果的でおいしい食べ方をご紹介します。
レンコンの原産地や特徴とは?
レンコンの原産地には諸説あり、中国南部やインド、また、エジプトあたりと言われています。日本に伝わってきたのがいつ頃なのかははっきりとしていませんが、1951年に千葉県の遺跡で発掘されたレンコンの種子が2000年以上の時を経て発芽、開花したことから、縄文時代には到来していたことを伺い知ることができます。
奈良~平安時代には食用として利用されていたようですが、本格的な栽培は明治時代に中国から持ち込まれた中国種が普及してからだと言われています。
在来種と言われる、日本で古くから栽培されていたものは、奈良時代以前に中国から持ち込まれたものがもとになっています。在来種のレンコンは、粘りは強くおいしいのですが、細く、また地中深いところで成長するため、労力の割に収穫量は少なかったようです。
一方、中国種は浅いところで生育し、肉厚で丸みを帯びた形をしています。そのため、栽培・収穫作業が幾分楽な中国種が、広く栽培されるようになりました。
なお、レンコンとして食べる部分は、根や球根ではなく、地下茎にあたります。泥の中で生長するレンコンは、葉から得た空気をほかの葉や根に運ぶために地下茎に穴を持つようになりました。そのため、地上に出ている葉柄(葉の付け根部分)を切ってみると、私たちが知っているレンコンと同じような穴が開いているということです。
レンコンの栄養や薬膳的効能
白くて、調理方法によりシャキシャキ、もちもち、ホコホコとさまざまな食感を楽しめるレンコン。私たちの体によい栄養素も豊富に含んでいます。
大切なエネルギーの素となる糖質
敬遠されがちな糖質ですが、私たちが生きていくには欠かせない栄養素の一つです。
糖質は私たちが体を動かすために必要なエネルギー源となり、特に脳にとっては栄養源でもあります。
糖質不足が続くとイライラしたり、頭がぼんやりとしたりするほか、頭痛、動機など、様々な不調が現れます。
肌の弾力を保つビタミンC
ビタミンCは、私たちの皮膚や粘膜の細胞をつなげているコラーゲンの形成にとても大切なビタミンで、鉄分の吸収を助けたり、動脈硬化や心疾患を予防したりする働きがあります。
血圧を安定させるカリウム
カリウムは、体内で過剰に摂取したナトリウムを体外へ排せつし、血圧を安定させる働きがあります。
また、近年カルシウムの排せつを抑制する働きが発見され、骨粗しょう症予防に一役買っているのではないかと期待されています。
貧血を予防し、元気を保つ鉄
鉄は赤血球の中のヘモグロビンに含まれ、体の隅々に酸素をいきわたらせる働きがあります。不足すると女性は月経で多くの鉄分を失うため、積極的にとっておきたいミネラルの一つです。
代謝を担い、味覚を正常に保つ亜鉛
亜鉛は新陳代謝を司る多くの酵素の原料になっています。そのため、皮膚や粘膜の代謝を促し、健やかに保つ働きがあります。
亜鉛が不足すると舌の上にある味蕾(味を感じるセンサーの役割をする細胞)も、新しく作り変えられるペースが落ちてしまい、味覚障害が発生します。
貧血予防の陰の主役 銅
銅は、鉄分を血液中のヘモグロビンに届ける役割をしています。そのため、銅不足になると、せっかくとった鉄分を上手く利用できずに貧血をおこしてしまうことがあります。また、骨を形成したり、抗酸化物質として働く酵素の材料として利用されていたりします。
肌を引き締めるタンニン
タンニンは、植物が病害虫から身を守るために身に着けたポリフェノールの一種で、紅茶やワインに多く含まれていることが知られています。収斂作用があり、毛穴を引き締めてくれるほか、抗酸化作用があり、動脈硬化や生活習慣病の予防にも役立ちます。
腸を整える食物繊維
レンコンには水溶性・不溶性の食物繊維がバランスよく含まれています。よく、レンコンを切ったときにスーッと糸を引いたように見えるものが食物繊維で、腸の蠕動運動を活発にし、便秘や下痢の解消、血中コレステロール値を下げ、動脈硬化や心疾患の予防に効果があります。
中医薬膳学ではレンコンを下記の通り定義しています。
性味 | 帰経 | 効能 | 適応 |
甘/寒 | 心脾胃 | 止渇 生津 清熱 潤肺 涼血 化瘀 | 肺の熱(炎症)を下げる 下痢・貧血の予防、止血 アレルギーの症状の緩和 |
『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より
薬膳で考える こんな時にレンコンがおすすめ
● 秋の冷たく乾燥した空気から風邪をひきかけているとき
薬膳では、レンコンは呼吸器が乾燥して出る咳、イガイガとした痛みを感じる喉や肺を潤したり、軽い炎症を起こした肺の熱を鎮めたりして、風邪の初期症状を緩和するといわれています。
● 花粉などのアレルギー症状が出始めたとき
薬膳では、レンコンはアレルギー症状の緩和にも使われます。ただし、炒めたり揚げたりする高温の調理法では、抗アレルギー作用が低下してしまいますので、後にご紹介するような、茹でたり蒸したりする調理法をお勧めします。
あくまで民間療法ではありますが、鼻水がとまらないときに、レンコンのしぼり汁を麺棒などにつけ、鼻の穴に塗ると鼻水が止まるといいます。
● 下痢や便秘のとき
レンコンに含まれる食物繊維が腸の蠕動運動を活発にして便秘を解消します。また、レンコンに含まれるタンニンが腸の過剰な動きを抑え、下痢を鎮めます。
レンコンレシピ
レンコンのすり流し
レンコンをすりおろし、鰹節と昆布でとった出汁に、すりおろしたレンコンを加えて作る、言わば和風のポタージュスープです。レンコンの持つでんぷんでとろみがつき、口当たりも優しい仕上がりになります。
塩分に気を付けると、離乳食や持病がある高齢者様にも召し上がっていただけ、作り方もとても簡単ですので、ぜひお試しくださいね。
【材料】 2人分
・レンコン・・・80~100g
・かつお昆布だし・・・400cc
(白だしやだしパックを規定量に薄めたものでも大丈夫です。)
・日本酒・・・大さじ1/2
・薄口しょうゆ・・・大さじ1/2
(利用するだしの塩分により、調整してください)
・しょうが、ねぎなど・・・各適宜
【作り方】1 レンコンは必要に応じて皮をむき、すりおろします。2 鍋にかつお昆布だしを沸かし、①のすりおろしレンコンを加え、時々かき混ぜながら沸騰させ、レンコンのでんぷんでとろみが付くまで煮ます。途中出てきたアクをすくい取り、日本酒、薄口しょうゆで味を整えます。3 器によそい、お好みでしょうがのすりおろしや小口に切ったねぎなどを吸い口に添えます。
作り置きにも便利!レンコンのピクルス
箸休めに、お弁当の口直しに、ちょっとあるとうれしいピクルス、細かく刻んでマヨネーズと混ぜ、タルタルソースを作ってもおいしいですよ。
【材料】 作りやすい分量
・レンコン・・・200g
・赤とうがらし・・・1本
・黒こしょう(粒)/クローブ/コリアンダーシード/ベイリーフなど・・・お好みで、各適宜
≪ピクルス液≫
※ピクルス液の分量は、目安になります。使用する保存容器やレンコンのサイズにより使用量は違ってくるので、適宜追加して作ってください。量の目安は、レンコンがすっかり浸かってしまう程度になります。
空気に触れている部分があると、そこからカビが生えることがありますので、ご注意ください。
・酢・・・200cc
・水・・・100cc
・塩・・・小さじ1.5
・砂糖・・・小さじ1.5
【作り方】1 レンコンは好みで皮をむき、5mm程度の厚さのいちょう切りにします。2 ≪ピクルス液≫の材料をすべて鍋に入れて煮立て、好みのスパイスを入れてひと煮立ちさせます。耐熱性のボールや保存容器に移しておきます。3 ①のレンコンをさっと茹でてザルにあけ、すぐに②のピクルス液に浸けます。半日程度つけて味がしみたころからおいしくいただけます。
まとめ
私たちの身近にある野菜、レンコン。今回ご紹介したように、薬膳では実にさまざまな健康効果が知られています。おいしく食べて元気に秋を楽しみたいものですね。
特にレンコンの有効成分は皮近くに多く含まれているといわれています。調理の際、気にならないようであれば、できるだけ皮はむかずにご利用くださいね。
食材として使わないときでも蓮根パウダーを使って料理にプラスすることもできますよ。