記憶力低下とは

記憶力低下とは

私たちの日常により身近な原因について 

前回の記事では、記憶力低下の老化による原因についてご紹介いたしました。

しかし記憶力低下は老化によるものだけではありません。

今回はこの記憶力低下について、私たちの日常により身近な原因について取り上げ、ご紹介いたします。

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心の不調と記憶力低下

心の不調は、記憶力低下の原因となります。

それではこの「心」とは何でしょうか。

心とは

心とは何でしょうか?
心と聞いて、心臓を思い浮かべる方が大半だと思います。
東洋医学でも、心とは、すなわち心臓を指します。

ただし心の働きについては、全く同じというわけではありません。

東洋医学では、現代医学で脳の働きであると考えられている精神活動も含めて、心と考えます。

今でも心臓移植をした人に、心臓を提供した人の記憶が伝達されていたり、心臓に脳点がある等、脳と心臓の働きは互いに影響し合っていることが分かっています。

だから精神活動が、必ずしも脳だけの働きではないということは、現代医学においても言えることですね。

心の働き

では具体的に東洋医学において、心とはどのように考えられるのでしょうか。

東洋医学では「生の本」と考えられます。

これは生命の根本を担う臓器という意味です。

心が、血をつかさどり血を全身に循環させるほか、精神活動の中心となっていることを指しています。

あるいは「君主の官」とも考えられています。

これは最高指導者という意味です。

心は知覚・記憶・思考・意識・判断等、すべての精神活動の中心で、五臓六腑が調和を保って活動するようにしているからです。

つまり心には大きく分けて二つの大きな役割があります。

一つは血を全身に循環させる役割、二つ目は精神・意識などをコントロールする役割です。

心の不調による記憶力低下

それでは心の不調が、なぜ記憶力低下と関係があるのでしょうか。

それは心の不調が精神面へと影響するからです。

それによって集中力がなくなる、物忘れが増える、不安になる、クヨクヨしがちになる、驚きやすくなる等の症状が出ます。

それが悪化すると意識障害などにもつながります。

脾の不調と記憶力低下

脾の不調は、記憶力低下の原因となります。

それではこの「脾」とは何でしょうか。

脾とは

脾とは何でしょうか?

脾とは脾臓を指します。

脾の働き

では具体的に脾はどのような働きをするのでしょうか。

脾は主に胃と一緒に働いて、食べたものを消化吸収し、気・血・水のもとになる水穀の精微を作り出して運搬するという役割を担っています。

胃で作られた水穀の精微を吸収し、全身に送り届けるために、心や肺に運ぶのが脾の役割です。

脾の不調による記憶力低下

それでは脾は記憶力低下とどのような関りがあるのでしょうか。

脾が弱り、気、血をつくることができないと、脳に栄養分が行き渡らなくなります。

それが記憶力低下を引き起こします。

またストレスなどで脾に負担がかかることで、水分代謝が悪くなり、痰ができ、痰が気と一緒に逆上することでも記憶力低下を引き起こします。

対処法

心の不調による記憶力低下には

心の不調では記憶力低下の他、不眠、息切れ、物忘れ、動悸、夢をよく見る、味覚異常、不整脈、胸が苦しい、精神不安、生理が来ない、青色が青白いといった症状があります。

心を不調にさせないためには、睡眠をしっかりとることが肝心です。

とくに夏の時期に負担がかかりやすいので気を付けてください。

精神が不安定、動悸、夢をたくさん見る、眠れないといった症状がある場合、精神を安定にさせる食材である玄米、小麦、大棗、桑の実、チンゲン菜、ユリ根、あさり、いわし、牡蠣、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ジャスミン、緑茶などがおすすめです。

心の食養生

心の働きを助ける食材

蓮の実、豚の心臓、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ココナッツ、カカオ等

苦味は五味で心に作用がある味です。

熱を冷ます、余分な水分を取り除く、解毒などの作用があります。

苦みの食材

苦瓜、アロエ、らっきょう、緑茶

これらの食材に合わせて、以下の自分の体調にあった食材を組み合わせるといいです。

①いらいらする場合

心と肝の働きは密接に関わりがあります。

肝の不調が、心の働きに影響することがあります。

そうした場合は心だけではなく、肝も補うことが重要です。

イライラ、こむら返り、筋の引きつり、目の疲れ、爪が割れる、肩こり、頭痛、生理不順、わき腹・胸の辺りが張って苦しい、顔やつめの色が悪い、手足のしびれ、めまい、足がつる、視力減退、不眠等の症状がある場合。

酸味の食材

梅、グレープフルーツ、トマト、いちご

②肌や髪、睡眠のトラブルがある場合(血虚)

血が足りないことで脳に栄養が行き渡らず、物忘れ、記憶力低下につながります。

動悸、物忘れ、眠りが浅い、夢をよく見る、めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉の痙攣、顔色が白い、つやがない、目のかすみ、生理不順、肌の乾燥、白髪、抜け毛、不安、落ち込みやすい等の症状がある場合。

血を補う食材

黒豆、黒ごま、黒きくらげ、ほうれん草、人参、しめじ、パセリ、ライチ、牡蠣、あさり、いか、たこ、うなぎ、かつお、鮭、さば、ぶり、まぐろ、ひじき、牛肉、鶏卵、レバー、桑の実、松の実、大棗など

脾の不調による記憶力低下には

脾の不調では記憶力低下の他、食欲不振、疲れやすい、お腹がはる、食後に眠くなる、軟便、下痢、お腹がもたれやすい、内蔵下垂、出血しやすい、むくみ・痰、味覚異常、痣ができやすい等の症状があります。

脾を不調にさせないためには、食事をよく噛んで食べることが大切です。

とくに梅雨やじめじめした湿の多い時期に負担がかかりやすいため、気をつくけて下さい。

水分代謝が悪く、むくみがある人は、余分な水分を取り除くことで脾の働きを助けることになります。

脾の変調が出るところは、口、筋肉、唇、感情、涎です。

以上の箇所に、いつもと違った症状が見られた場合には、注意が必要です。

脾の食養生

脾の働きを助ける食材

うるち米、玄米、もち米、さつまいも、じゃがいも、山芋、黒豆、大豆、枝豆、おくら、カリフラワー、小松菜、チンゲン菜、人参、ねぎ、白菜、ブロッコリー、りんご、ライチ、栗、いわし、すずき、たい、ぶり、牛肉、カモ肉、大棗

これらの食材に合わせて、以下の自分の体調にあった食材を組み合わせるといいです。

①消化が悪い場合

甘みのある食材は五味で脾に作用がある味です。

消化器官を整え、気、血を補います。

腹痛など急な症状を緩和させる作用がある

甘みのある食材

穀類、芋類、豆類、鶏肉、チーズ

②疲れやすい場合(気虚)

気が不足し、気、血をつくれず、栄養が不足してしまうことで、物忘れ、記憶力低下につながります。

疲れやすい、かぜをひきやすい、手足の冷え、食後すぐに眠くなる、むくみ、息切れ、胃もたれ、疲れると各主症状が悪化する、内蔵下垂等の症状が見られる場合。

気を補う食材

うるち米、もち米、山芋、さつまいも、じゃがいも、大豆、枝豆、かぼちゃ、アスパラガス、さやいんげん、しいたけ、舞茸、ぶどう、大棗、いわし、うなぎ、鮭、さば、まぐろ、えび、牛肉、豚肉、鶏肉、甘酒等

陽を補う食材

羊肉、えび、まぐろ、くるみ、にら、八角、フェンネル等

③むくみやすい場合(水帯)

ストレスなどで脾に負担がかかることで、水分代謝が悪くなり、痰ができ、痰が気と一緒に逆上することが記憶力低下に影響します。

むくみ、体が重だるい、倦怠感、喉が渇きにくい、軟便、下痢しやすい、めまい、吐き気、アレルギー性鼻炎、喘息、じんましん、胃がむかむかする等の症状が見られる場合。

身体の余分な水分を取り除く食材

とうもろこし、冬瓜、なす、もやし、レタス、すいか、小豆、黒豆、緑豆、アスパラガス、きゅうり、あさり、鴨肉、昆布、海藻類、ウーロン茶、プーアール茶、紅茶、ココア、コーヒー、緑茶等

痰を取り除く食材

豆乳、アーモンド、えのき茸、かぼちゃ、生姜、大根、玉ねぎ、にんにく、梅、梨、レモン、あさり、昆布、ししゃも、のり、もずく、わかめ、ウーロン茶、プーアール茶等

まとめ

記憶力低下の原因は老化だけではありません。

心や脾の不調により、気、血が不足したり、きちんと巡らないことでも記憶力低下につながります。

記憶力と言えば、まず最初に私たちが考えるのは脳だと思います。

でも今回の記事で紹介した様に、記憶力低下といっても必ずしも脳が直接的な原因というわけではありません。

私たちの体は相互に作用し、助け合いながら、機能しています。

そしてある症状が、実はもっと深刻な状況を示しているということもあるのです。

こうした体のサインに気付けるように、私たちはより私たちの体と向き合うことが大事です。