冬から春にかけて旬を迎えるセロリは、独特の香りや食感に好き嫌いがわかれる野菜ですね。ですが、あの香りの中には、私たちの心身をリラックスさせ、体によい効果が期待できる成分も含まれています。今回はそんなセロリが持つ薬膳の効能や、おいしいレシピをご紹介します。

セロリの原産地や特徴とは?
セロリはセリ科オランダミツバ属に含まれる野菜で、ヨーロッパから地中海沿岸、インドにかけて、が原産といわれています。にんじん葉やセリのように、独特の芳香を持っているのが特徴です。
古代ローマの時代から、その香りに整腸作用などがあることが知られ、薬草として利用されていました。古代エジプトではミイラを作る時の臭い消しとして、セロリの首飾りが作られていたということです。
日本には中国・朝鮮半島を経由して安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、加藤清正により、中国種が持ち込まれました。当時は清正にんじんと呼ばれていたようですが、セロリ特有の香りが好まれず、普及することはありませんでした。
現在のように食べられるようになったのは、戦後、洋食が普及するようになってからのことです。
セロリには緑色種、黄色種、東洋在来種及び中間種という、大きく分けて4つの品種があります。日本で主に作られているのはコーネル種という中間種の一種で、特有のクセが抑えられた品種です。セロリは暑さが苦手なため、冷涼な長野県で多く栽培され、ついで静岡、愛知、北海道で多く生産されています。
セロリの栄養
- カリウム
カリウムには体内のナトリウム濃度を調整する働きがあります。そのため、体の中で増え過ぎたナトリウムを薄めるために溜まった水分を排泄してむくみを解消したり、水分が増えた血液を全身に送り届けるために上がってしまった血圧を安定化させたりする働きがあります。
- βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変化します。ビタミンAは強い抗酸化作用を持ち、肌を健やかに保つ働きがあります。また、鼻やのどの粘膜を保護し、ウイルスや細菌が体内へと侵入するのを防いだり、目の網膜に働きかけて暗いところでも視力を保つ働きを助けたりしています。
- ビタミンB1
ビタミンB1は糖質からエネルギーを作り出したり、皮膚や粘膜を健やかに保ったりする働きがあります。かつて「江戸患い」ともいわれた脚気は、食生活の変化によりビタミンB1が欠乏することによっておこった病気だといわれています。
- ビタミンB2
ビタミンBは皮膚や粘膜の健康を維持する働きがあるほか、糖質や脂質、たんぱく質をエネルギーに変え、代謝を司る働きがあります。
- ビタミンC
ビタミンCは私たちの細胞同士を結び付けているコラーゲンの生成を行い、肌や粘膜を健やかに保ちます。高い抗酸化力もあり、動脈硬化や心疾患などの予防に役立ちます。
- ビタミンE
ビタミンEは抗酸化作用があり、主に体内の脂質の酸化を予防し、動脈硬化を予防する、老化による疾患の予防などが期待されています。また、血行を促進する働きもあります。
- ビタミンU
ビタミンUはキャベツに多く含まれる成分で、キャベツから名前を取った有名な胃薬にも配合されています。胃酸の分泌を抑えたり、傷ついた胃腸の粘膜を保護、修復したりする働きがあります。セロリにもビタミンUが含まれています。
- 食物繊維
食物繊維には、血糖値をコントロールしたり血液中の過剰なコレステロールを排泄し、血液をサラサラにしたりする水溶性食物繊維と、水分を含んで便のかさを増やし、便秘解消に役立つ不溶性の食物繊維があります。セロリには、不溶性の食物繊維が多く含まれています。
- アピイン・セネリン
アピイン、セネリンは共にセロリに含まれる香り成分の一種で、精神を安定させ、ストレスからくる頭痛を緩和し、イライラを解消する働きがあるとされています。
- ピラジン
ピラジンはセロリに含まれる香り成分の一つです。血液をサラサラにしたり、脳をリラックスさせたりする効果があることが知られています。
そのため、高血圧や心筋梗塞などの予防に効果があるとされています。
セロリの薬膳的効能
中医薬膳学ではセロリを下記の通り定義しています。
性味 | 帰経 | 効能 | 適応 |
甘苦/涼 | 肝 肺膀胱 | 平肝 清熱 利湿 治淋 活血 | 高血圧 充血 痙攣 瘀血 精神安定 |
『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より
薬膳で考える こんな時にセロリがおすすめ
・イライラして耳鳴りやめまいを感じるとき
薬膳では、セロリには「平肝」といって、気持ちを落ち着かせ、肝の陰陽を安定させて耳鳴りやめまいを鎮める効果があるとされています。
セロリの香りや歯ごたえの良さを楽しめるよう、ピクルスがおすすめです。セロリには体の熱をとる作用がありますが、薬膳では、ピクルスに利用する酢には体を温める働きがあることが知られています。セロリの清熱作用を打ち消してくれますよ。
市販の合わせ酢を利用し、黒コショウやローリエ、唐辛子などをプラスすると、簡単に作ることができますね。
・熱っぽさを感じたり、尿量が少なかったりするとき
薬膳では、セロリには体にこもった熱を発散させる働きがあることが知られています。
頻尿や、膀胱に湿熱が溜まり、排尿量が少なくなったり、出渋りなどを治療したりする時にも用いられます。
セロリレシピ
・セロリの下処理の方法
セロリの軸を見ると、縦に出っ張った部分がありますね。その中には太くて固いスジが通っています。このスジは加熱しても柔らかくなることはなく、口に残ることが多いため、あらかじめ取り除いておきましょう。
セロリを調理する時は、まずは葉を落とし、葉がついていた部分から根本の方向に向かって包丁でスジをひっかけて削ぎ取るようにして取り除きます。
そのあとで必要に応じたサイズに切り、調理にかかりましょう。
セロリと切り昆布の浅漬け
セロリを購入した時、食感のよい軸の部分をメインに利用することと思いますが、葉の部分はどうなさっていますか?実は抗酸化作用が高いβカロテンは、軸よりも葉の部分に多く含まれています。
栄養価の高いセロリの葉を捨ててしまうのはもったいない!ということで、今回はセロリの葉をおいしく食べられる、浅漬けをご紹介します。
【材料】
・セロリ・・・1本(葉のみ、または軸と葉、軸のみ、割合はお好みで大丈夫です。)
・塩・・・セロリの重量の2%
・切り昆布・・・セロリの重量の2%~(乾燥したもの)
【作り方】
- セロリは洗って「セロリの下処理の方法」の項を参照してスジを取り、軸、葉共に一口大に切っておきます。
- ファスナー付きの保存袋にセロリを入れ、塩、切り昆布を入れて、空気を入れるように口を閉じてから振りまぜ、塩を均一にまぶしつけます。
- 一旦保存袋の口を開き、空気を抜くように軽く押さえてから再度口を閉じ、30分以上なじませます。
セロリからしみ出した水分で昆布が柔らかく戻り、味がなじんだら食べられます。冷蔵庫で保存し、3日程度日持ちしますよ。
まとめ
独特の芳香から好き嫌いが分かれるセロリですが、薬膳では、その香りにはさまざまな健康効果があることが知られていました。近年になり、香り成分の分析も進み、西洋医学的な観点からもその効能が認められるところとなっています。
今回ご紹介した浅漬けだけではなく、シチューなど煮込み料理の肉類の臭み消しとして、また、美味しい具材として、おいしくその栄養や健康効果を利用してくださいね。