唐揚げに水炊き、照り焼きやフライドチキン、私たちの食卓には欠かせないたんぱく源の一つ、鶏肉。もも肉、胸肉をはじめ、レバーや心臓、砂ずりなど、さまざまな部位をおいしくいただくことができますね。今回は特に鶏肉について、ご紹介していきたいと思います。

にわとりの原産地や特徴とは?
鶏(にわとり)とは、東南アジアに住んでいるセキショクヤケイ、またはセイロンヤケイやハイイロヤケイなどを期限としているといわれています。
中国や東南アジアでは、古くから闘鶏や祭祀用として、のちに食用として飼育されるようになっていきました。紀元前15世紀から14世紀頃には、現在のインドを経てエジプトにももたらされていたようです。
一方、日本にいつ伝来したのかははっきりとしていませんが、弥生時代頃に中国を経由してもちこまれたのではないかとされています。その後、仏教の思想により、肉食を禁じることとなり、長らく鶏肉を食べることはありませんでした。
その後、江戸時代になると長崎の平戸屋敷において鶏肉を水炊きとして食べていたことを、当時の書物などにより、垣間見ることができます。日本で本格的に鶏肉が食べられるようになったのは江戸時代後期から明治時代に入ってからのことで、食習慣の欧米化とともに鶏肉や鶏卵の需要が高まっていきました。
現在、食肉用として一般的に出回っているものは、レグホーンをはじめとする西洋種のほかにも、比内地鶏や名古屋コーチン、シャモなど、日本各地で守り継がれてきた地鶏があります。
鶏肉の栄養や薬膳的効能
牛や豚と比べ、ヘルシーだといわれている鶏肉。どのような栄養価を持っているのか?部位による違いや薬膳的な効能はどのようなものなのかをご紹介します。
- たんぱく質
たんぱく質は、脂質、糖質とともに三大栄養素のうちの一つに数えられ、私たちが生きていくうえでとても重要な栄養素です。皮膚や血液、毛髪、免疫細胞などのもとになるほか、1gあたり4kcalのエネルギーを作り出すことができます。
- ビタミンK
ビタミンKは出血した時などに血液を固め、止血する働きがあるほか、骨のなかに含まれているたんぱく質の働きを活性化し、骨の形成を促進する役割を担っています。
鶏手羽肉100gあたり42mg、鶏胸肉100gあたり23mgのビタミンKを含んでいます。
- ナイアシン
ナイアシンはビタミンB群の一つで、糖質、たんぱく質や脂質からエネルギーを作り出す働きを助けています。また、皮膚や粘膜を健やかに保つ作用があり、不足すると倦怠感や食欲不振、皮膚炎などを引き起こすことがあります。
- ビタミンB6
ビタミンB6はたんぱく質の合成や血液を作り出す働きを助けるほか、神経伝達物質を生成したり、アレルギーを抑制したりする働きがあります。
- パントテン酸
パントテン酸は糖質、たんぱく質、脂質の代謝を促し、神経や副腎皮質の働きを正常に保つ作用があります。また、皮膚や毛根に栄養を与え、健やかに保つ働きがあります。
- トリプトファン
トリプトファンは、幸せホルモンともいわれるセロトニンの材料となっています。
セロトニンは脳内ホルモンの一つで、ノルアドレナリン、ドーパミンとともに三大神経伝達物質と呼ばれています。感情や精神面などをコントロールする働きがあり、自律神経のバランスを整え、リラックス効果をもたらし、ストレスや疲労を回復する働きがあります。
また、夜になると良質な睡眠をもたらすメラトニンという物質にも変化します。
トリプトファンは体内で合成することができないため、日々取り続ける必要があります。
薬膳的効能 こんなときに鶏肉はおすすめ
中医薬膳学では鶏肉を下記の通り定義しています。
性味 | 帰経 | 効能 | 適応 |
甘/温 | 脾胃 | 温中 補気 益精 填髄 降逆 | 体力の低下 食欲不振 冷えからのげっぷ しゃっくり、嘔吐 |
『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より
胃腸が冷え、消化不良や吐き気など不快感があるとき
鶏むね肉やささみは脂質が少なく、さっぱりと食べやすいのが特徴ですね。薬膳では脾胃を温め、働きを高める作用があるといわれ、胃腸に負担がかからないのが魅力です。補気(体の働きを高める)作用があるじゃがいもや長芋と一緒に弱火でコトコトと柔らかく炊いた、温かいポトフがおすすめです。
成長期やスポーツのために良質な筋肉をつけたいとき
高たんぱく低カロリーの鶏肉は、薬膳では体をあたため、填髄作用(筋骨を増強する働き)があるとされています。成長期やスポーツを頑張っている方は鉄分をはじめ、多くの栄養素をしっかりと取っておく必要があります。コラーゲンも併せて取れる鶏手羽の酢醤油煮がおすすめです。付け合わせには青菜炒めやフルーツなど、ビタミン類もしっかりと取れるメニューを添えてくださいね。
また、筋肉はつけたいけれど脂質は控えたい、という方には、サラダチキンもおすすめです。
食事をとるとげっぷが出て苦しいとき
薬膳では、鶏肉には降逆の働きがあるとされています。
これは、胃に入った食べ物が本来進むべき腸の方へ向かわずに、げっぷや嘔吐により吐き戻してしまうことを抑える、という働きを指します。
鶏ひき肉を団子にしてスープ煮にし、気の働きを高めるゆずが含まれるポン酢をつけて食べるとよいですね。
鶏肉レシピ
手作りサラダチキンとコールスローのサンドイッチ
スーパーマーケットやコンビニでも手軽に手に入るサラダチキンですが、簡単に手作りすることができます。スーパーマーケットで特売になっている日などにまとめて作り、一つずつラップフィルムで包んで冷凍しておくと、食べたい時にさっと使えて便利ですよ。
・基本のサラダチキン
【材料】
・鶏むね肉・・・適宜
・塩・・・適宜
・しょうが・・・ひとかけ
・白ネギの青い部分・・・1本分
【作り方】
- 鶏むね肉はお好みで皮を取り除き、1枚につき塩ひとつまみをすり込んで、30分程度なじませておきます。
- しょうがは1かけを3等分位に切り、白ネギの青い部分はさっと洗っておきます。
- 鍋に①の鶏むね肉を入れ、ひたひたになる程度の水、②のしょうがと白ネギの青い部分を入れて落し蓋をし、沸騰直前まで温めます。湯の表面が軽くゆらゆらと揺れる程度の火加減で30分程度加熱し、ゆっくりと火を通します。
※ここで強火にすると、肉の水分が流出し、パサパサになりやすいので注意してくださいね。
4.煮汁が透明になり、肉のいちばん厚みがある部分に竹串を刺して赤みを帯びた肉汁が出なくなったら火を止め、そのまま荒熱が取れるまで冷まします。冷めたらすぐに食べないものをラップフィルムでぴっちりと包み、冷蔵または冷凍保存しておきましょう。
・手作りサラダチキンとコールスローのサンドイッチ
【材料】 2人分
・サラダチキン・・・1個
・にんじん、キャベツ、玉ねぎなど、各適宜
・マヨネーズ・・・大さじ1.5
・白すりごま・・・小さじ1
・しょうゆ・・・小さじ1
・サンドイッチ用食パン・・・4枚
(8枚切りなど、少し厚めの物の方がよく合います。)
・バター・・・少々
【作り方】
- サラダチキンはまな板に乗せ、上から手で軽く押さえるようにして肉の繊維をほぐし、食べやすいサイズに裂いておきます。
- マヨネーズに白すりごま、しょうゆを混ぜてドレッシングを作ります。固すぎる場合は、牛乳少々を加え、のばします。
- ニンジン、キャベツ、玉ねぎなどは千切りにし、ざっくりと混ぜ、①のサラダチキン、②のドレッシングを和えておきます。
- サンドイッチ用のパンにバターを塗り、③の水分をきるようにしながらこんもりと乗せ、もう一枚のパンを重ねます。
- ラップフィルムか使い捨てのオーブンシートなどで包み、10分ほどおいて全体をなじませてから好みのサイズに切り分けます。
まとめ
鶏肉は消化がよく、私たちの体だけではなく、精神面の安定など、さまざまな効果が期待できる成分をも含んでいます。
今回ご紹介したサラダチキンは、鶏むね肉そのものを楽しめるほか、できた煮汁もとてもよい出汁がでていて、煮物の出汁やスープとして楽しむことができますよ。1つの調理で2つのメニューが出来上がる、一石二鳥のレシピです。ぜひ試してみてくださいね。