<まだまだあります!秋のおすすめ食材>
前回は秋に食べて頂きたい食材についてご紹介しましたが、今回も引き続き秋に食べて頂きたいおすすめの食材を薬膳の観点からお伝えします。
<前回のおさらい>
秋は乾燥しやすく、津液や肺を損傷しやすいという特徴があります。
8月下旬から9月上旬までが初秋と言われており、残暑による熱邪や秋の燥邪を取り除き、肺を潤すことが重要です。そのため適切に涼(微寒)性、甘味を持つ食材を摂取すること(=清燥潤肺)が推奨されています。
また、暑邪により身体の気と陰(津液)が消耗されているため甘味かつ平性を持ち、補気養陰の食材で補う必要(=益気養陰)があります。
おすすめの食材としてはユリ根、無花果、白木耳、長芋、枸杞子(クコの実)、秋刀魚などがあります。
11月上旬から下旬までが晩秋と言われており、冬に向かって燥邪を取り除くと同時に寒邪の侵襲を予防する必要があります。そのため、潤し温める食材を摂取する(=温肺潤燥)必要があります。おすすめの食材としては、胡桃があります。
さて、今回は初秋におすすめの無花果と枸杞子、晩秋におすすめの胡桃についてお話していきます。

◎無花果
まさに今が旬の美味しい果物ですね。そのまま生で食べるのはもちろん、お菓子にトッピングしたり、お肉やお魚にも合うため料理に使ったりいろいろな用途があります。
・産地:原産地はアラビア南部です。ペルシャから中国を経て長崎に伝来しました。
・性味帰経:涼※1・甘・肺・胃・大腸
・薬効成分:糖類(ブドウ糖、果糖、ショ糖)、ポリフェノール、有機酸(クエン酸など)、
カルシウム、鉄、食物繊維(ペクチン)
・効能:清熱生津、健脾開胃、解毒消腫
・健康効果:鎮痛作用(燥熱による咽喉、嗄声に効きます。)
整腸作用(腸熱による便秘、消化不良に効きます。)
抗ガン作用(がんの予防に良いとされています。)
・旬の時期:6月下旬から7月頃に夏の収穫時期があり、8月から10月頃に
秋の収穫時期となります。夏に旬を迎えるものよりも秋のもののほうが
甘みがあるのが特徴です。
・レシピ:無花果の天ぷら
☆材料(2個分)
無花果 2個
小麦粉 70g
溶き卵 1/2個
水 90ml
揚げ油 適量
☆作り方
①溶き卵と水を混ぜたら小麦粉を加えて混ぜ、天ぷら衣を作ります。
②よく洗った無花果の軸を切り落として横半分に切り、皮ごと①にくぐらせます。
(気になる方は皮をむいても良いです。)
③170℃に熱した油で揚げ、衣に火が通れば完成です。
◆調理のコツとしては、無花果は完熟ではなくやや硬めのものを使うと良いです。
もしも熟れた無花果を使う場合は皮つきのまま揚げましょう。
無花果は水分が多いので油が跳ねるのを防ぐためと言われています。
また、無花果はチーズや生ハムとも相性が良いため、挟んで揚げても美味しいです。
塩や天ぷらつゆをつけて召し上がってください。
◎枸杞子
皆様もご存じ、杏仁豆腐の上にのっているあの赤い実です。
薬膳料理によく登場しますので、今回ご紹介させて頂きたいと思います。
・産地:中国が原産で、日本や朝鮮半島、台湾、北アメリカなどにも伝わっていきました。
・性味帰経:平※2・甘・肝・腎・肺
・薬効成分:ビタミンA、B群、ビタミンC、食物繊維、ポリフェノール、カルシウム、鉄、ベタイン、ゼアキサンチン
・効能:滋補肝腎、明目、潤肺
・健康効果:眼精疲労回復
(肝腎隠虚によるめまいや視力減退、消渇に効くとされています。)
コレステロール低下作用
(肝機能を高めて脂肪肝や肝硬変などの予防効果が期待されています。)
・旬の時期:夏から秋と言われています。
・レシピ:キャロットラペ
☆材料(2名分)
人参 中2本(250g)
枸杞子(乾燥) 30粒(=約5g)
レーズン 30粒(=約15g)
塩 小さじ1(=6g)
オリーブオイル 大さじ1(=12g)
酢 大さじ2(=30g)
粒マスタード 小さじ2(=12g)
塩コショウ 適量
☆作り方
①乾燥した枸杞子は水につけ戻します。戻すには2~3時間かかると言われていますが、実が軽くふやけていればOKです。
②人参は皮をむいて長さ5㎝程度に千切りし、塩を振ってもみ30分おきます。
しんなりしたらしっかり水けを絞ります。
③オリーブオイル、酢、粒マスタード、塩コショウを混ぜ合わせておきます。
④ボウルに①と枸杞子、レーズンを入れ②であえて完成です。
◆完成してから食べるまでに寝かせておくと味がしみ込んで更に美味しくなりますよ。
おかずの中で最初に作って冷蔵庫で寝かせておくのがおすすめです。
ご家庭にスライサーがあれば利用して人参をスライスすると時短になります。
◎胡桃
そのままでも食べられますし、お菓子やパンに入っていることも多く身近な食材ですが、
オメガ3脂肪酸やメラトニンという成分が含まれていて、不眠症、うつ病、
アルツハイマー型認知症にも良いとされていて、栄養学の観点からもおすすめです。
・産地:原産地はヨーロッパ南西部からアジア西部(中国)です。
日本では長野県が有数の産地です。
・性味帰経:温※3・甘※4・肺・腎
・薬効成分:たんぱく質、ビタミンB2、ビタミンE、鉄、カルシウム、ポリフェノール
・効能:補腎、温肺、潤腸
・健康効果:抗酸化作用(動脈硬化、老化を防ぎます。)
整腸作用(便秘を防ぎます。特に老人性の便秘に効きます。)
・旬の時期:9月から10頃です。
・レシピ:胡桃の炊き込みおこわ
☆材料(2人分)
お米 1合
もち米 1/2合
胡桃 20g
舞茸 100g
人参 20g
油揚げ 20g
だし汁 約250ml
酒 大さじ2(=30g)
醤油 小さじ2(=12g)
みりん 小さじ1(=6g)
塩 小さじ1/4(=1.5g)
ゴマ塩 お好みで
☆作り方
①お米ともち米は合わせておき、水で研ぎザルにあげておきます。
②胡桃は粗く刻み、フライパンで軽く煎っておきましょう。
③舞茸は小房に分け、人参は洗って皮をむき千切りにします。
④油揚げは熱湯をかけて油抜きをし、みじん切りにします。
⑤炊飯器に①を入れ、酒、醤油、みりん、塩、だし汁を炊飯器の分量線まで加えます。
⑥⑤を一度かき混ぜてから舞茸、人参、胡桃を加えて炊飯ボタンを押します。
⑦炊き上がったら完成です。お好みでゴマ塩をかけて召し上がってください。
<終わりに>
秋におすすめの薬膳の食材をご紹介させて頂きました。薬効成分や効能など難しいところもありますが、「今の時期はこういったものを食べることで養生につながるんだ。こういう食材を料理に使うだけでも薬膳になるんだ。」と感じて頂ければ嬉しいです。
手軽な食材もありますのでたくさん量を食べてしまうこともあるかもしれませんが、
それで健康になれるわけではありません。むしろ体調不良になる恐れもありますので、
適正量を守って食べて頂ければと思います。
皆さまも日常に薬膳を取り入れて元気に秋を過ごしましょう。
<語句解説>
※1涼性とは、五性(温・熱・涼・寒・平)において体を冷やす性質を持つとされています。
同じく体を冷やす寒性よりは弱い性質です。火照りに効果があると言われています。
※2平性とは、五性において寒熱どちらでもない性質を持つとされています。
滋養や強壮効果があると言われています。
※3温性とは、五性において体を温める性質を持つとされています。同じく体を温める
熱性よりは弱い性質です。冷え性の人に効果があると言われています。
※4甘味とは、五味(酸・苦・甘・辛・鹹)において、血液などの栄養成分や気を補給し、
疲れをとる作用や痛みを和らげる作用があるとされています。
疲労や虚弱体質に効果があると言われています。
<参考URL>
http://www.yakuzenjoho.net/chuyaku/kuko.html
https://www.californiakurumi.jp/
https://ryoko-club.com/food/walnuts-season.html
https://radish-pocket.com/list/431/
<参考文献>
日本薬膳学会 管理薬膳講座2015年「薬膳の基礎‐食材の作用」