胃腸の働きを強める 栗

brown round fruit on gray textile 普段使いの薬膳レシピ
Photo by Ylanite Koppens on Pexels.com

茶色くてコロンとかわいい栗、モンブランやマロングラッセ、お正月の栗きんとんに栗ご飯と、日本人が最も好む木の実の一つですね。少しずつ品種は違うもの、世界中で愛されている栗は、お菓子だけではなく料理にも使われています。今回は秋においしい栗の栄養やおいしい料理をご紹介します。

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栗の原産地や特徴とは?

栗には、私たちに最もなじみがある、日本原産の「ニホングリ」、天津甘栗で有名な、甘味が強くてちょっと小粒の「チュウゴクグリ」、マロングラッセに利用される、「ヨーロッパグリ」、そして、あまり日本には入っていない、「アメリカグリ」の4種の系統があります。

ヨーロッパグリやアメリカグリは病気に弱く、日本で栽培されているのは主にニホングリになります。

12,900年ほど前の縄文時代初期の遺跡からも炭化した栗が出土しているということから、私たち日本人と栗との付き合いがとても長いことを伺い知ることができますね。

奈良時代には、京都府丹波地方で栗の栽培がおこなわれていたことが万葉集などに記されているということで、かの地は現在に至るまで最上級の栗が名産品となっています。

また、戦国時代には、栗の実を炒って(または生のまま)干した「かちぐり」を、「勝つ」に通じると縁起を担ぎ、食糧の一つに加えて戦いに持って行っていたようです。

冒頭でもご紹介した通り、日本では、栗ごはん、栗おこわ、焼き栗など、鬼皮と渋皮をむいて栗の形を生かした調理方法が多いのに対し、イタリアでは栗を製粉し、小麦粉とともにクレープやニョッキなどに利用しています。

栗の栄養や薬膳的効能

カリウム

カリウムは、私たちが取り過ぎた塩分(ナトリウム)を排泄し、むくみ解消や血圧安定の役割をしています。また、カルシウムがきちんと骨に定着する働きを助け、骨粗しょう症予防にも役立っていることが、近年の研究で明らかになってきました。

マグネシウム

マグネシウムはエネルギー代謝を司る酵素の働きやたんぱく質の合成を促す働きがあります。そのため、ダイエットや美肌にとても効果的で、美のミネラルとの異名を持っています。

銅は私たちが取った鉄分を血液中のヘモグロビンに取り込ませる役割があります。

そのため、鉄分とともに貧血予防の役割を担っています。

ビタミンB1

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えて、疲労回復を助ける働きがあります。

また、糖が唯一のエネルギー源である脳神経系を健やかに保つ働きがあります。

ビタミンB6

ビタミンB1が糖からエネルギーを生産するのに対し、こちらのビタミンB6はたんぱく質からエネルギーを作り出します。

また、皮膚や筋肉、血液の生成にかかわっており、湿疹や口内炎予防に効果があるといわれています。

葉酸

葉酸は水溶性ビタミンの一種で、細胞分裂を正常に行う働きを行っています。妊娠初期に不足していると胎児に発育障害などがみられることで有名です。

一方、成人の場合は、不足すると巨赤芽球性貧血という悪性貧血や脳卒中、心筋梗塞などの循環器系疾患の発症リスクが高まります。

ビタミンC

ビタミンCは、私たちの肌の細胞同士をつなげているコラーゲンの生成に欠かせないビタミンで、しわやたるみを防ぐ働きがあります。また、高い抗酸化作用の働きで動脈硬化や心疾患の予防をするほか、鉄分の吸収を助ける働きもあります。

タンニン

タンニンは植物が動物や昆虫から身を守るために身に着けた成分で、その種類は5000種以上あり、栗の場合は渋皮に多く含まれています。

収斂効果が高く、化粧品にも多く含まれています。

中医薬膳学では栗を下記の通り定義しています。

性味帰経効能適応
甘(微鹹)/ 温脾胃腎益胃 健脾 補腎 強筋 活血 止血 止咳 化痰 健脳腰膝の衰え 気管支炎 下痢 胃弱 頻尿 尿失禁

『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

・下痢や頻尿の防止に

薬膳では収斂作用を持つ栗の渋みが、力がなく下痢をしてしまっている腸そのものを引き締め、下痢を予防するといわれています。同様に、膀胱の働きを高め、頻尿や尿漏れの防止にも役立つと考えられています。

・虚弱体質の改善、筋肉の増強に

薬膳では、栗は腎の働きを強めるといいます。腎とは、現代の西洋医学でいうところの内分泌系や泌尿・生殖器系、また、中枢神経系や免疫機能系の一部を指します。

これらの機能を高めることで、胃腸の働きが正常になり、栄養の吸収が高まることで骨や筋肉の機能も高まり、足腰が強くなるということです。

・血行促進、不正出血などの改善に

胃腸の機能が高まり、筋肉が増えることで体を動かしやすくなることから血行が促進され、瘀血(薬膳では、血行不良で血液が体の一部に淀み、凝りや痛みが生じている状態のことを指します。)を改善します。

また、このような作用から長引く生理や不正出血を改善する働きがあります。

栗のレシピ

基本の栗のむき方

固い殻に包まれた栗、専用の道具がないと、手間がかかるのでは、や、怪我をしないか?と、ちょっと手に取りにくい食材でもありますね。

まずは安全に栗をむく方法をご紹介します。

  • 栗をボールに入れて洗い、たっぷりの熱湯に浸けて3~4時間放置します。
  • 利き手と反対側の手には、けが防止のために滑り止めつきの軍手をはめておきます。
  • 栗を上下逆さまに持ち、平らな側の、艶がある部分とザラザラとしている部分の境目に一筋包丁目を入れます。
  • ③の切り目に包丁の根本の角を差し込み、艶があるほうの鬼皮を手前にひいて剥きます。
  • 平らな方を向き終えたらザラザラな方に包丁の根本の角を差し込み、めくりあげると、膨らみがあるほうの鬼皮まで、一気に向くことができます。
  • 鬼皮がむけたら渋皮をむいていきます。

栗ごはん

栗を使った料理の定番中の定番といえば、栗ごはんですね。今回はシンプルに、栗のおいしさを楽しみましょう。

【材料】   作りやすい分量

・栗・・・400g程度

・米・・・2合

・塩・・・小さじ1/2程度

【作り方】

  • 栗は上記のとおりに剥き、必要に応じて2~3つに切り分け、水につけておきます。
  • 米を洗い、炊飯器の内釜に入れて水加減し、30分程度水に浸けておきます。
  • ②に塩を加えてさっと混ぜ、栗を平らに広げて入れ、白米モードで炊き上げます。

※栗が出回る頃は米も新米が多く、もちもちとした食感で美味しいものですが、お好みで米の2割程度をもち米に変えてもおいしく作ることができますよ。その場合、水に浸けておく時間は一時間を目安にしてください。

簡単!手作りモンブラン

秋の洋菓子店でひときわ目を引くモンブラン。少し手間はかかりますが、手作りすると、素朴な味わいがとてもおいしいですよ。

【材料】   8個分

・市販のスポンジケーキ、またはタルト・・・適宜

≪マロンクリーム≫  作りやすい分量

・栗・・400g

・砂糖・・・40g程度(栗の味をみて加減してください)

・バター・・・大さじ1

・お好みで、ラム酒まらはバニラエッセンス・・・適宜

・生クリーム・・・200cc

【作り方】

  • 栗は鬼皮つきのまま、さっと洗って水から茹でます。

はじめは弱火で、鍋肌にふつふつと小さな気泡が出始めたら、中火にし、沸騰させます。

その後、再び弱火にして30分程度茹で、一つ切って茹で具合を確認して、そのまま40℃程度まで冷まします。

  • 栗が冷めたら縦半分に切り、スプーンで実を取り出します。
  • 取り出した栗をボールに入れ、麺棒などでつぶしながら砂糖、バターを加えます。滑らかになったら、生クリームを少しずつ加え、味噌程度の固さに整えます。
  • 残りの生クリームに砂糖適宜を加え、泡立てます。
  • スポンジケーキを利用する場合は1cm程度の厚さに切り、8cmの丸型に抜いておきます。
  • ⑤のスポンジケーキかタルトシェルに生クリームをこんもりと丸く絞ります。
  • ③のマロンクリームを、好みの口金をつけた絞り袋に入れ、⑥の上に絞ります。

まとめ

秋の声が聞こえるようになると、スーパーマーケットの店頭を賑わすようになる栗。見つけると季節の移ろいを感じ、何を作ろうかとワクワクしますね。

今回ご紹介した通り、薬膳で知られる効能を統合すると、栗には、夏に冷たいものを食べて疲れた胃腸の働きを助け、来る冬に備えて体力を回復する働きがあるとも言えます。

少し手間はかかりますが、それだけの価値がある木の実、栗、おいしい旬の味を楽しみたいですね。

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