
気分の落ち込みやイライラといった軽い鬱症状は誰しも経験があるかと思います。
こういったメンタルの不調が、体の不調のサインだということはご存知ですか?
東洋医学では「凡病之起、多由於鬱(およそ病は、うつにて起こること多し)」という言葉があるように、鬱から様々な不調につながると考えます。
私たちの身近で、悩ましいメンタルの不調。
今回はこの「メンタルの不調」について、東洋医学の知識を取り入れ、よりよく自分の心と体と向き合いましょう。
メンタルの不調とは
メンタルの不調は気の異常
気分の落ち込みやイライラ、空虚感。
そんな日常生活に支障をきたすことがない程度の軽い鬱症状で悩んでいらっしゃいませんか。
東洋医学ではこういったメンタルの不調を気の異常と考えます。
症状
漠然とした不安感や喉の異物感を伴う時は気が滞っている状態です。
またイライラや筋肉の痙攣、食欲低下などを伴う場合は肝に気が鬱積した状態です。
また悩むことにより脾が不調になり、気虚を生じた場合にも、やる気が起きないといった症状が現れます。
「メンタルの不調」代表的なタイプ
①気滞タイプ
抑鬱感、不安感など、うつうつとした精神症状を感じるタイプです。
喉の異物感や胸の苦しさといった上半身のつまり感を伴うことが多いです。
②肝実脾虚タイプ
イライラや怒りが長く続くと肝に気が鬱積し、熱を帯び、気を巡らせる疏泄機能が低下します。
脾にも影響し消化機能が低下します。
結果、怒りっぽさといった精神症状に加え、不眠や手足の震え、こめかみのピクつきのほか、食欲不振などが現れます。
③気虚タイプ
心配事で思い悩むことが続くと脾の消化吸収が衰えると考えられています。
結果、エネルギーが不足した気虚になり、気力低下、全身の倦怠感など、軽度の鬱のような症状が現れるようになります。
鬱は体の不調のサイン
東洋医学では「心と体は全体で一つ」とし、鬱という心のトラブルの原因には、体の不調もあると考えます。
「凡病之起、多由於鬱(およそ病は、うつにて起こること多し)」という言葉があるように、鬱から様々な不調につながると考えます。
肝の不調による影響
たとえば肝は鬱と深く関係しています。
肝はストレスを発散させ、精神や感情をコントロールする役割を担っています。
憂鬱や怒りといった強いストレスを受けることにより、肝の働きが低下すると、気の流れが滞ってしまいます。
こうした状態は鬱の初期に多く見られます。
初期の鬱状態が長く続くと、体全体の気血が不足してしまします。
すると精神的に不安定になり、普段からストレスの影響を受けやすくなってしまいます。
対処法
イライラした時も、深呼吸すると気持ちが少し落ち着きます。
ツボを押して解消するのも一つの方法です。
話をする、気持ちを書きだす、運動や大声を出す、泣くと言ったこともストレス発散に効果的です。
趣味の時間を楽しんだり、睡眠を取るのもいいです。
またストレスをため過ぎないようにすることも大切です。
漢方薬
①気滞タイプ
→半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
漠然とした不安、うつ傾向など、精神症状を伴う場合におすすめです。
のどの詰まったような異常感がある時に使用するとよいでしょう。
②肝実脾虚タイプ
→加味逍遥散(かみしょうようさん)
たびたび気分が変調して不安定、神経過敏、イライラなどの症状がみられる人におすすめです。
→抑肝散化陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
神経の高ぶりなどが見られる人におすすめです。
神経症など精神不安のほか、筋肉のこわばりを解消します。
③気虚タイプ
→加味帰脾湯(かみきひとう)
体力が中等度以下で心身が疲れ、血色が悪く、熱感を伴う人におすすめです。
貧血、不眠症などにもいいでしょう。
食養生
①気滞タイプ
→香りの野菜や酸味の食材
気の巡りを改善するのは、春菊やセロリなどの香りの高い野菜です。
柑橘類や梅干しなど、酸味の素材は肝の疏泄作用を改善します。
②肝実脾虚タイプ
→肝の機能を高め、気血の流れを整える食材
肝機能を高めるレバーがいいです。
解毒作用にすぐれたニンニク、シジミも肝機能強化に効果的です。
③気虚タイプ
→肉類、豆類は気を補う食材
鶏肉や牛肉、海老、鶏卵は補気効果が高いです。
納豆や豆腐の原料となる大豆のほか、空豆や枝豆などもいいです。
ストレスとは
メンタルの不調には、ストレスをため過ぎないようにすることも大切です。
しかしこのストレスの原因とは何でしょうか?
またストレスによって具体的にどのような心配があるのでしょうか?
東洋医学的にストレスについて考え、メンタル不調の糸口にしましょう。
ストレスの原因
ストレスはメンタル不調の大きな原因として挙げられます。
でもメンタル不調を改善させるために過度なストレスを抱えないことが大事だとは分かっていても具体的にどうすればいいか分かりませんよね。
いったいストレスの原因とは何でしょうか。
それは人間関係のトラブルや将来への不安などからくる精神的な要因、睡眠不足、体の痛みや怪我、疲労などからくる身体的な要因、温度や騒音などに影響される環境的な要因です。
それでは、ストレスを感じやすい人はいるのでしょうか。
ストレスを感じやすい人はいます。
性格的にまじめだったり、几帳面な人、内向的で消極的な人、頑固な人、取り越し苦労をする人はストレスを感じやすいと言えます。
ご自身にお心当たりがある方は特に注意が必要です。
ストレスを受けやすい五臓は「肝」「心」「脾」
適度なストレスは生活に張り合いをもたせ、いい働きをします。
一方でストレスも過度になりすぎると体にとって負担でしかありません。
そんなことは分かっていても、いったいどう身体に悪いかあまりイメージがつきませんよね。
ストレスは体のさまざまな場所に影響をもたらしますが、その中でもとくにストレスによって影響を受けやすい五臓は、「肝」、「心」、「脾」です。
「肝」は情緒や自律神経に関与します。
「心」は精神、意識や思考をコントロールしています。
「脾」の消化吸収および運搬をしています。
ストレスの影響
ではストレスによって、「肝」、「心」、「脾」の臓器に負担がかかると、どのような影響がもたらされてしまうのでしょうか。
「肝」、「心」、「脾」の臓器は互いに関係しあっています。
したがってそれらの臓器が弱ったり、過剰に働くことが、その臓器だけではなく他の臓器にまで不調をもたらしてしまうのです。
こういった考え方を相生・相克関係と言います。
「肝」、「心」、「脾」は、「肝」→「心」→「脾」というサイクルで、それぞれ次の臓を援助しています。
そして「肝」は「脾」を抑制してバランスをとっています。
したがって、ストレスがかかると「肝」「心」「脾」の「気」の巡りが乱れ、不調が出はじめます。
さらに「肝」が「気」の巡りをうまくできず、「脾」に負担がかかりやすくなるのです。
対処法
ストレスには腹式呼吸や深呼吸がいいです。
ストレスによって乱れてしまった自律神経を整える効果があります。
話をする、気持ちを書き出す、運動や大声を出す、泣くと言ったこともストレス発散に効果的です。
趣味の時間を楽しんだり、睡眠を取るのもいいです。
またストレスを溜めないようにすることが大事ですが、具体的にどんなことをすればいいか分かりませんよね。
そんな方は、どんな時にストレスを感じるかメモをとっておくといいです。
自分にとってストレスが何か、意識することによって、ストレスを回避するように行動することができます。
食養生
ストレスによって影響を受けやすい臓器は「肝」、「心」、「脾」でしたね。
それぞれの臓器を補う食材についてご紹介いたします。
①肝タイプ
イライラ、足がつる、目の症状、頭痛、肩こりなど張るような痛み、ストレスで悪化などの症状。
ストレスによって「肝」の働きがうまくいかず「気」、「血」の巡りがうまくいかなくなり、自律神経が乱れています。
→「肝」の働きを助ける食材
苺、うなぎ、ししゃも、レバー、干ししいたけ、ロイヤルゼリー、黒ゴマ、ぶどう等
②心タイプ
動悸、不眠、物忘れ、夢をたくさん見る、精神不安などの症状。
「血」や「陰液」の不足で栄養や潤いが不足し、機能低下や「熱」を発生してしまうことで不調が起こります。
→「心」の働きを助ける食材
ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ココナッツ、カカオ等
③脾タイプ
食欲不振、疲れやすい、お腹が張る、食後に眠くなる、軟便、痣ができやすい等の症状。
疲労から「気」の巡りが悪くなり、機能が低下します。
→「脾」の働きを正常にする食材
うるち米、玄米、もち米、さつまいも、じゃがいも、黒豆、大豆、チンゲン菜など
まとめ
メンタルの不調は気の異常。
そして東洋医学では、鬱という心のトラブルの原因には、体の不調があり、鬱から様々な不調につながると考えます。
メンタルの不調には、ストレスをため過ぎないようにすることが大切です。
このストレスによって影響を受けやすい五臓は、「肝」、「心」、「脾」です。
それぞれの臓器を補う食材を把握し、上手に体の不調と付き合いましょう。