毎日の食卓に、味噌汁や味噌を使った料理は登場していますか?地域により、白味噌や赤味噌、田舎味噌、麦味噌…いろいろな種類の、ご当地自慢の味噌がありますね。今回はこれらの味噌の持つ栄養や薬膳で考える効果、おいしい食べ方をご紹介します。

味噌発祥の地や特徴とは?
味噌は古代中国でつくられていた醤(ジャン/ひしお・しょう)がその起源ではないかといわれています。醤とは、肉や魚、雑穀、麹などを塩とともに漬け込んだ、今で言う「しょっつる」やナンプラーに近い発酵食品のことです。
この醤が日本に伝わってきたのがいつ頃なのかははっきりと確認されていませんが、平安時代には贅沢品として、貴族層の間で野菜などに載せて大切に食べられていました。
その後、時を経て味噌は庶民にも広まり、鎌倉時代には今の味噌汁のようなものが食べられるようになりました。また、戦国時代になると、大豆から作られる味噌は保存が効く大切なたんぱく源、調味料として戦の際には各地へ持ち運ばれるようになりました。その結果、各地にその製造方法が伝わり、土地土地で手に入る材料により、特色のある味噌が作られるようになっていきます。
江戸時代になると人口増加に伴い、各地に大きな味噌蔵が作られ、発達していきました。
近代になると、女性の社会進出とともに出汁いりの味噌や具材入りのインスタントみそ汁が作られるようになってきました。
一般的には西に行くほど甘く、北へ行くほど塩辛く、色も赤くなるといわれています。また、原料の点からみると、西日本では米麹を使った米味噌、四国、九州では、麦麹を使った麦味噌、東海地方の、豆麹をつかった豆味噌と分けることができます。
各地の味噌を取り寄せたり、特色を生かして料理により使い分けたりするのも楽しいですね。
味噌の栄養
大豆が主原料である味噌には大豆由来の栄養素が多く含まれています。
- 植物性たんぱく質
味噌を作る工程で、大豆に含まれるたんぱく質は酵素により分解され、消化、吸収しやすいアミノ酸に分解されています。
- 鉄
鉄は血液中のヘモグロビンの中に含まれ、私たちの体の隅々まで届ける働きがあります。鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血になり、動悸や息切れ、めまいなどをひきおこすことがあります。
- サポニン
サポニンには抗酸化作用があり、血液中の脂質やコレステロールが酸化されて血管壁に蓄積されるのを防いだり、脂肪肝を予防したりする働きがあります。また、リンパ球の一つであるナチュラルキラー細胞を活性化させて、免疫力をアップする働きもあります。
- 大豆レシチン
レシチンはリン脂質という物質の仲間で、細胞膜の主成分となっています。私たちの脳内の約30%を占め、神経組織も材料ともなっています。そのため、大豆や卵黄に含まれるレシチンをしっかりと摂取しておくことで、脳機能の維持に役立つといわれています。
また、大豆レシチンは血液中にとどまる時間が比較的長く、動脈硬化や脳卒中などの予防、また、ダイエット効果が期待できるということです。
- イソフラボン
イソフラボンは大豆に含まれるポリフェノールの一種で、女性ホルモンの一つ、エストロゲンに似た作用があります。
閉経前後の女性はエストロゲンの分泌が減少し、のぼせや肩こり、イライラなどの症状が、更年期障害として現れます。味噌をはじめとする大豆製品からイソフラボンを取ることが、これらの不快な症状を軽減する一助になります。
また、イソフラボンには骨の中のカルシウムが流出するのを防ぐ働きがあり、骨粗しょう症の予防にもなっています。
- メラノイジン
メラノイジンは、味噌や醤油などの原料となる大豆に含まれているアミノ酸が、糖質と結合してできる、茶色い物質のことです。味噌や醤油が発酵していく過程で作り出され、熟成が進むほどに色が濃くなっていくのはこの作用のためで、これをメイラード反応といいます。
メラノジンには優れた抗酸化作用があり、脂質の酸化を防ぐことで動脈硬化を予防したり、コレステロール値を下げたりする働きがあります。また、血糖値を正常に保つ働きがあり、糖尿病の予防効果についても期待されています。
味噌の「薬膳的効能」
中医薬膳学では味噌を下記の通り定義しています。
性味 | 帰経 | 効能 | 適応 |
甘鹹/温 | 脾胃腎 | 温中 降気 解毒 | 腰の冷え 二日酔い コレステロールの抑制と排泄 抗酸化 がん予防 脂肪肝予防 高血圧防止 |
『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より
薬膳で考える「こんな時に味噌がおすすめ」
冷えがひどく、胃腸に痛みが出ているとき
薬膳では、味噌には体を温める働きがあるといわれています。胃腸が冷えて痛みができた場合には、柔らかく炊いた野菜を具材にしたみそ汁がおすすめです。
冬のアウトドアスポーツなどで体が冷えた時にも、温かいみそ汁はとても効果的です。
みそ汁の中にほんのひとかけらのバターを浮かべると、脂の膜ができて冷めにくくなるとともにコクが出ます。
さらに、バターには寒さにさらされ、乾燥した皮膚を潤したり、咳を鎮めたりする働きがありますよ。
げっぷやしゃっくりが出やすいとき
薬膳では、味噌には「降気」という作用があるといいます。これは、食べたものを胃から腸へ、腸から排泄へ、と、上から下へと送っていく気の働きのことを言います。この働きが衰えると、本来降りていくはずのものが逆流することになり、げっぷやしゃっくりへとつながります。
味噌には、下へと降りていく気の働きを整える作用もあります。みそ汁以外にも、肉や魚を味噌床に漬けてつくる、味噌漬けもよいですね。
味噌レシピ
作り置きにも便利!ネギ味噌
冬だけではなく、冷房で体が冷えやすい女性は多いですね。このような冷えを感じやすい方には、味噌と同様に体を温める効果がある長ネギを、味噌とともに炒めて作るネギ味噌がおすすめです。ご飯に載せて食べるだけではなく、お豆腐や大根の田楽に乗せて食べたり、炒め物の味付けに使ったりととても便利な一品になりますよ。
【材料】
・長ネギ・・・1本
・しょうが・・・1/2かけ
・味噌・・・大さじ3
・酒・・・大さじ2
・砂糖・・・大さじ1
・みりん・・・大さじ2~
・ごま油・・・大さじ1
・一味唐辛子・・・少々
【作り方】
- 長ネギは粗みじん切りか輪切りに、しょうがはみじん切りにしておきます。
- フライパンにごま油を熱し、①の長ネギ、しょうがを炒めます。
- ②がしんなりとしてきたら、味噌、酒、砂糖、みりんの半量を加え、味噌を溶きのばしながら、さらに炒めます。
- 味噌が煮詰まってきたら味を見て、みりんで調整してぽってりとした固さになるまで煮詰め、出来上がりです。(冷めると少し固くなります)
まとめ
「味噌は医者いらず」「医者に金を払うよりも、味噌屋に払え」という言葉を、ご存じでしょうか?味噌を食べていると、病気をすることがないので医者にかかることはない、医者にかからないで良いように、味噌を食べましょう。という意味ですが、それだけ体に良いということが古くから知られていたということですね。
味噌には塩分が多く含まれているのですが、たとえば、みそ汁には野菜を多く入れることでカリウムの摂取量を増やすと、過剰なナトリウムを排泄することができます。
それでも気になる場合は、出汁をしっかりと効かせて野菜をたっぷりと加え、味噌を控えめにすると、美味しい味噌汁を作ることができますよ。
毎日の食卓に取り入れやすい味噌汁、いろいろな出汁や野菜、味噌の組み合わせを楽しんでみるのもよいですね。