薬膳の体質「気血水」のバランスとは?

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今日はみなさんが気になる、「薬膳の体質診断」についてご説明します!

前回のブログで触れた「陰陽五行説」とも密接に関係するお話です。前回のブログはこちらから

薬膳は病気ではなく、「体の調子が良くないな」と感じているそのひと本人をみます。病気になる前の、なんとなく体の不調やプチ症状を感じている状態、これは「未病」と呼ばれており、身体のバランスが崩れてきているしるしです。

漢方や薬膳の専門医に診断してもらうと、まずは診察(カウンセリング)を受けます。本人が自覚している体の不調のほか、顔色、舌の色や柔らかさ、目や爪の状態、体のにおい、脈拍、声の感じなどの全体をまんべんなく見ていきます。

ここでもっとも大事なのはコミュニケーションと、相談者の全体像です。

(患者の方をあまり見ないで、話だけササッと聞いて薬を処方するだけ、はNGですね!)

それでは、薬膳の世界の「体質」とはどんなものでしょうか?今回は「気・血・水」というキーワードに注目していきますよ。

「気・血・水」とは

「気・血・水」とは、概念を大まかに説明すると、人体を巡るエネルギーのことです。

この3つが「大黒柱」となって、体の健康を支えているとイメージしてみてください。

薬膳の体質診断では、この3つのバランスがどうなっているかを診断します。「気・血・水」がそれぞれ足りなかったり、巡りが滞っていたり、汚れたりしていると、未病の状態と考えられます。

「気・血・水」の柱は人によって太さや強さが異なります。「水」の柱がもろくなりやすいという人もいれば、「気」の柱が強くて他の2本を圧倒してしまうという人もいます。あるいは、全部の柱がパワー不足という人も……

「気・血・水」の柱のありようは、一人ひとり個性があります。この個性という言葉からわかるように、柱のありようについて「病気である」というようなことは東洋医学の世界ではありません。

その人の個性を受け入れたうえで、バランスが偏りやすいものや不足しやすいものについては、食事や養生で補って、心身全体の調子を整えていくという考え方です。

そして、この個性のことを「体質」と薬膳の世界では呼んでいます。

次の章からは、「気・血・水」とは何か、また未病にいたるような「気・血・水」の状態について説明していきますね。

気とは

「気」とは、人間の生命活動のエネルギー、活力や元気の元になるもののことです。

体全体を動かす、いわば燃料で、循環することで体の免疫力を強くしたり、栄養の吸収や代謝の働きを助けたりする力があります。

もともと「気」は人間の体にも備わっていますが、気候や食事によって後から補強したり、巡らせたりすることもできます。

もしあなたが「気が不足している」状態なら、「気を補う食材」を使った薬膳を食べるようにすると体の調子が整っていく、という感じです。

気虚とは

「気が不足している」状態です。

エネルギーそのものが足りていないので、免疫力が低下します。

また、気が足りないことでストレスを感じやすくなり、さらに「気」を消耗してしまうという悪循環に入ってしまいやすいのが注意点です。次のような症状が目立ちます。

・疲れやすい

・風邪をひきやすい

・体温が低い、基礎代謝が低い

・ストレスを感じやすい

・運動不足になりがち、太りやすい

・食欲がない、消化不良

・やる気が出ない

「気を補う」食材には次のようなものがあります。

じゃがいも、とうもろこし、かぼちゃ、キャベツ、えだまめ、さつまいも、しいたけ、もち米、きび、なつめ、高麗人参、うなぎ、カツオ、鶏肉、牛肉、ホタテ貝、牛乳

気滞とは

「気の流れが悪くなっている」状態です。エネルギーが停滞していたり、あるいは逆流したりすることで、自律神経が乱れやすくなっています。

原因のひとつは精神的なストレス。責任感が強い、完璧主義、ストレス発散ができていない、繊細で悩みを抱え込んでしまうといったタイプの人は、「気滞」になりやすい傾向にあります。

「気滞」は「血と水」の循環も悪くしてしまうので、さまざまな症状を引き起こしやすいので注意が必要です。

・胸につかえたような感じがある

・お腹に張り感や痛みがある

・ストレスを感じやすい

・イライラしやすい、気分不安定

・自律神経が乱れる

・頭痛、目まい

・のぼせ

・生理痛や生理不順

「気の循環を促す」食材は以下の通りです。

セロリ、春菊、生姜、ニラ、しそ、みょうが、パセリ、ミント、八角、陳皮、みかん、ゆず、グレープフルーツ、コショウ、ジャスミン茶

血とは

「血」は、血液そのものの他に、東洋医学では「栄養と酸素を体内に巡らせる働き」を意味しています。性ホルモンにも関係します。

「気」が不足すると「血」を作り出す力も弱くなってしまいます。また、「水」が足りないことで「血」が流れにくくなったり、ドロドロになってしまったりします。

特に女性は「血」が不足しやすいので、積極的に薬膳を取り入れていくと良いでしょう。

血虚とは

「血が不足している状態」です。栄養不足・潤い不足をもたらし、各臓腑・器官・組織にも栄養が届かなくなりやすいです。そのため、血色が悪くなる、肌にツヤがなくなる、抜け毛が増える、便秘になるといったさまざまな不調を引き起こします。

特に、心・脾・肝という臓への影響力が強いです。

・顔色が悪くなる

・爪が割れやすい

・目がかすむ、眼精疲労

・不眠、眠りが浅い

・抜け毛や白髪

・無月経、生理不順

・しつこい疲労感

「血を補う」食材は以下です。

なつめ、黒きくらげ、黒ゴマ、黒米、くるみ、松の実、ほうれんそう、ニンジン、あんず、イチジク、ぶどう、レーズン、牡蠣、赤身肉、羊肉、レバー、ひじき、卵、牛乳

瘀血(おけつ)とは

「血の流れが滞っている」状態です。

「血」が体の各所で溜まって汚れてしまっているので、放ってくおくと巡りがどんどん悪くなってしまいます。体に栄養が行きわたらないため、クマやシミ、ニキビといった皮膚の悩みが増えやすい傾向にあります。

また、肩こりや腰痛、頭痛も瘀血タイプに見られる症状です。

・肩こり

・頭痛

・腰痛

・関節痛

・肌がくすむ、土気色になる

・あざが出来やすい

・生理痛、不正出血

・シミ、ニキビ、クマ

「血の流れを促す」食材は以下の通りです。

あずき、黒豆、紅花、黒きくらげ、ウコン、とうがらし、ほうれんそう、ニラ、にんにく、玉ねぎ、ラッキョウ、なす、ピーマン、桃、ブルーベリー、まぐろ、かつお、黒砂糖、黒酢、酒、ローズティー

水とは

「水」は、生命活動を支える、血液以外のすべての体液(津液)をあらわします。汗、涙、尿、だえき、リンパ液などで、人体の約6~7割を占めるといわれています。

「水」の働きは、内臓や皮膚を潤したり、汗や尿をつくったり、関節を動かしやすくすること。また、体外に老廃物を排出することで、体の水分バランスを保ちます。

水が体内に偏在して溜まってしまうと「水毒」となります。

水滞とは

水分代謝がうまく機能せず、体に「水」が過剰に溜まってしまっている状態です。

体に水が溜まると、むくみ、めまい、鼻水、痰、中耳炎、低体温、だるさなどを引き起こします。

気圧や気候の変化の影響を受けやすく、特に湿度の高い梅雨のシーズンは「水滞」になりやすいです。

「水滞を解消する」食材は以下の通りです。冷たい水分の摂りすぎを控えて、温かいものを口にするようにしましょう。

はとむぎ、あずき、黒豆、とうもろこし、ナンバンゲ、きゅうり、冬瓜、もやし、スイカ、のり、ワカメ、昆布、豆乳、はまぐり、ウーロン茶、紅茶、緑茶

陰虚とは

反対に、こちらは「水」が足りていない状態です。

※中医学では、「血」や「水(津液)」のことを「陰液」と総称します。

脱水症状や、便秘、口が乾く、声が枯れる、体に熱がこもるといった状態になりやすいです。

「体を潤す」食材は以下の通りです。

れんこん、百合根、白きくらげ、白ゴマ、豆腐、梨、ブドウ、みかん、ライチ、かりん、トマト、鴨肉、豚肉、豚足

薬膳で「気・血・水」のバランスを整え、健康になろう!

いかがでしたか?「気・血・水」は相互に密接に関係しているので、どれか一つだけを取り出して見るのではなく、全体的にうまく整えていく必要があります。

そのため、食材の組み合わせや調理法によって多種多様な効能を併せ持ったり、相乗効果を発揮できる薬膳は、心強い味方となるのです。

今日の解説を読んで、「私は血虚かもしれないな……」「もしかして、自分は水滞?」などと思い当たる内容があったら、さっそく自分に合った食材を選んで食事を作ってみてください。

簡単なひとあじ、ひと工夫を加えるところから薬膳料理は作れます。

次回のブログもお楽しみに!