
健康志向が高まる現代において、薬膳に興味を持たれる方が増えています。
それと同時に薬膳に関するさまざまな資格も増えており、資格を取得した方が多方面で活躍する場も登場しています。
テレビや雑誌等で目にする機会も増えた薬膳ですが、まだまだ身近なものとは言えません。
皆さんは薬膳がどういったものなのか考えたことはありますか?
今回はあまり知られていない薬膳とその魅力、薬膳をいかせる仕事についてお伝えします。
<薬膳とは?>
中医学※1の理論に基づき食材と中薬※2とを組み合わせ、健康の維持や増進、病気の予防や治療を目的とした料理のことを薬膳と言います。
日々の食事と薬の源は同じであるとする、中国古来の思想「薬食同源」から生まれました。
薬膳では、全ての食物は五味(酸味、苦味、甘味、辛味、塩味)と五性(熱性、温性、平性、涼性、寒性)の特性を持つと考えられています。この五味五性を生かして食材を選び、
食べる人の体調、体質や季節を考えることでより効果が得られるとされています。
他にも基本的な考え方として陰陽があります。食材を陰と陽に分け、体を冷やすトマトやナスなどの食材を陰、体を温める紫蘇やイカなどの食材を陽としています。この陰陽の食材と、そのどちらでもない食材(米やごまなど)を組み合わせることが大切とされています。
※1:中国伝統医学のこと。 ※2:日本でいう生薬のこと。
<未病を防ぎ健康な毎日を>
病気というほどではないけれど、体がだるかったり疲れやすかったり、なんとなく体調がすぐれないときがありませんか?そのような状態を「未病」といいます。未病のまま放置しておくと、病気に進行してしまう恐れがあります。体質や季節に合わせた料理(薬膳)を普段の食事に取り入れ、適度な運動と休息をとる=養生することで、未病を防ぐことができると考えられています。
未病を防ぐことで精神的にも身体的にも健やかな毎日を過ごすことができます。
<薬膳をいかせる仕事とは?>
最近は薬膳に関するさまざまな資格があります。自宅で指定の講座を受講し試験を受け合格して取得できる資格もあり、資格取得がより身近なものになりました。
例えば、薬膳コーディネーターや薬膳アドバイザーという資格があります。前者は薬膳の基礎的な内容を学ぶことができます。後者は取得後、中医薬膳指導員など上位の資格へのステップアップが期待できます。さらにその上級の資格である国際中医薬膳師も設けられており、ますますの活躍も期待できます。そのため、薬膳をより深く学びたい方や勉強のモチベーションを上げたい方におすすめです。他にもたくさん資格がありますので、興味がある方はぜひ検索してみてください。
さて、せっかく時間とお金をかけて資格を取得したのだから、仕事にいかすことができたら嬉しいですよね。
そこで、薬膳をいかせる仕事をいくつか考えてみましたのでご紹介いたします。
ライター、講師
まずは、学んだ知識をほかの人に伝えるライターや講師の仕事です。SNSが普及している今、インターネットだけでなくフェイスブック、インスタグラムなどを使ってライターとして多くの方に自分の知識を伝えることができるようになりました。パソコンがあればどこでも仕事ができ、いろんなジャンルで働けるためライターの人気は高まっています。ただ知識を広めるだけでなく、薬膳料理の作り方も教えられる料理教室を開催することもできます。実際に薬膳というものに触れて頂く機会をあなたが自分で作るのです。
まだまだ「薬膳」と聞くと、難しい・薬みたいな味がして美味しくないと捉える方もいますが、料理教室で調理して食べることでその後ろ向きなイメージを前向きなものに変える絶好のチャンスとなるかもしれません。
レストラン・スーパー・企業などで働く
学んだ知識を活用し、上記のお店で働くことができます。お店を利用されるお客様にとってプラスになる情報を伝えることができれば、きっと喜んで頂けるはずです。料理や食材の効能をメニュー表や紹介文に載せてみるなどの工夫もできます。また、料理が好きな方であればレシピ開発や商品開発に積極的に携わることも可能です。
健康や美容の分野で働く
ほかにもドラッグストア、スポーツジム、エステサロンなどでも活躍の場が広がっていくと考えられます。薬膳について詳しく教えてほしいというお客様もいらっしゃいます。そんなとき専門的な知識を持っているスタッフがいれば、お客様だけでなくお店にとっても利益となり、重宝される存在となるでしょう。活躍していくことでオリジナリティあふれるお店を目指せるのではないでしょうか。
ほかの資格とコラボレーションさせる
また、ほかの資格と合わせて働くこともできます。例えば、調理師の資格を取得していれば、薬膳料理を提供する店を起業することが可能です。
最初に述べましたが、最近は健康志向が高まっているため、今後薬膳料理を提供する店の需要は増えていくと考えられます。
フードコーディネーターや食生活アドバイザーなど食べ物に関する資格も薬膳をいかすことができるでしょう。
管理栄養士資格を取得している方であれば、栄養指導でも薬膳の知識を活用することができます。栄養指導は個人の病態や生活習慣に合わせ、一人ひとり違った指導を行います。
食べたものの聞き取りをし、何をどれくらい食べると良いかアドバイスをします。
時には食事の話だけでなく、ちょっとした世間話をすることで関係性を築くこともあります。一か月あるいは三か月ごとなど定期的に指導を行う対象者がいますが、季節によって異なる日常の体の悩みも耳にします。その悩みごとが栄養学と薬膳の知識で解決できれば、採血結果だけでなく対象者が自分自身の体の変化に気づくこともでき、生活の質(QOL)を上げる可能性があると考えています。
<お家でも薬膳>
ここまでどんなふうに仕事で薬膳をいかすことができるかお伝えしてきましたが、主婦の方もお家で薬膳をいかすことができます。
例えば、これから秋になると、乾燥の影響を受けて「肺」の機能が低下していきます。肺は呼吸や全身の水分調節に関係しているため、肺の機能が低下すると咳風邪を引いたり、髪や肌が乾燥しやすくなります。
肺の働きを高めるためには唐辛子など辛味のある食材を摂り、気の巡りを活発にすると良いとされています。ただ、辛味のある食材を摂りすぎると逆に体が冷えてしまうので注意が必要です。また、秋は体を潤す白い食材を摂ると良いとされています。例えば、豆腐、白きくらげ、レンコン、しめじ・しいたけ・えのきなどのキノコ類がそうです。果物でいうと、りんごや梨も当てはまります。このような肺に良いとされる食材を組み合わせることで、乾燥を防ぐことができるとされています。白い食材は秋が旬のものも多いですね。お家で旬のものを食べることで、養生につながるのです。
<おわりに>
いかがでしたか?薬膳って思ったよりも身近な存在で、いろんな職業にいかすことができると感じて頂けたでしょうか。
読んで頂いた方に薬膳の魅力や可能性が伝わっていると嬉しいです。
ぜひ薬膳の知識を役立てて頂き、未病を防いで健やかな毎日を送って頂きたいと思います。
参考文献・URL:
・https://www.yomeishu.co.jp/health/3371/
養命酒製造株式会社「薬膳とは?いつもの食材でできる薬膳の基本」
・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E8%86%B3
Wikipedia「薬膳」
・https://www.asc-jp.com/kenkousyoku/yakuzen/
日本安全食料料理協会「薬膳の資格と活用出来る仕事について」