銀色に光り輝く美しい魚、タチウオ。夜釣りのターゲットとして人気の魚でもありますね。鋭い歯が並んでいる、ちょっと怖い顔つきをみてわかる通り、肉食性の魚です。年間を通して漁獲されています。今回は、脂がよく乗っている割にあっさりと食べられる太刀魚に迫ってみたいと思います。

タチウオの原産地や特徴とは?
タチウオはスズキ目サバ科に属する魚で、世界中の温暖な海域に暮らしています。関東以西で多く漁獲され、特に瀬戸内や和歌山、九州では漁獲量も多く、産卵のために浅瀬に近づく夏から秋にかけて、旬を迎えるといわれます。しかし、実は脂ののりは年間を通してさほど変わることなく、一年を通しておいしく味わえる魚の一つです。
美しい銀色に光り輝く、細長い体が特徴で、この銀色はグアニンという成分でできていて、うろこはありません。このグアニンがはがれてしまうとタチウオは死んでしまうため、うろこに代わる重要な役割をしていることがわかります。
過去にはこの成分をこそげて集め、人口パールの原料やマニキュアの原料として用いられていました。
タチウオという名前は、この容姿から太刀に例えられること、海中でも、刀を振りかざしているかのように、頭を上に立った姿で泳いでいることから名づけられたといわれています。
太刀という、一見物騒な名前を頂いているとおり、獰猛な魚で、イカや小魚をエサとしているほか、釣り上げられている仲間の尻尾を食いちぎって食べてしまうこともあります。魚屋さんで尻尾が切れているものは、このような理由からかもしれませんね。
身は柔らかく、あっさりとしていて、和洋中さまざまな料理に使えます。背びれの内側には小骨が多いのですが身離れがよく、食べやすいのも特徴です。購入時、調理してもらえる場合は、背びれを小骨ごと引き抜いてもらうと、より食べやすくなります。
タチウオの栄養
たんぱく質
脂質、炭水化物とともに3大栄養素のうちの一つであるたんぱく質。私たちの骨や筋肉のもとになったり、エネルギー源になったりします。また、さまざまな病原気やウイルスから体を守るための免疫細胞を作るための重要な材料にもなります。
たんぱく質が不足すると、筋肉量や代謝が落ちるため、むくみや肥満になりやすく、肌も荒れがちになります。日々作り変えられていきますので、毎日しっかりと取ることが大切です。
タチウオをはじめとする魚のたんぱく質は良質なものが多く、おすすめです。
脂質(DHA/EPA)
タチウオは、たんぱく質よりも脂質の量が多い珍しい魚です。しかし、この脂質は私たちの体に悪いものではなく、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタンエン酸)、また、オレイン酸といった、私たちの体にとても有益な不飽和脂肪酸を多く含んでいます。
DHA、EPA,ともにオメガ3脂肪酸の一種で、DHAは血中コレステロールや中性脂肪の値を下げ、生活習慣病の予防をし、脳の働きを助けて記憶力の向上に役立ちます。
一方、EPAは血管や細胞膜をしなやかに保ち、心疾患や脳梗塞などを予防します。
オレイン酸は一価不飽和脂肪酸の一種で、善玉コレステロールを増やす働きがあります。
これにより、血液中の善玉コレステロール、悪玉コレステロールのバランスが整うと、動脈硬化などの生活習慣病の予防につながります。
ビタミンB6
ビタミンB6は水溶性のビタミンの一種で、たんぱく質からエネルギーを生産し、筋肉や血液の生成にかかわっています。そのため、不足すると湿疹や口内炎、貧血などを引き起こすことがあります。
ビタミンB12
ビタミンB12は葉酸とともに赤血球の中にあるヘモグロビンを作る働きをしています。また、脳から出る神経伝達を正常に行う働きもあります。
不足すると巨赤芽球性貧血という悪性の貧血を引き起こすことがあります。
ビタミンD
ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、日光を浴びることで私たちの体内でも作り出すことができます。ビタミンDは小腸や腎臓で働き、カルシウムやリンの吸収を助けるほか、血液中のカルシウムの量を一定に保つ働きがあります。
食事からとるビタミンDが不足したり、極端な日焼け防止をしたりすると、くる病や骨粗しょう症を引き起こすことがあります。
薬膳で考える こんな時にタチウオがおすすめ
中医薬膳学ではタチウオを下記の通り定義しています。
性味 | 帰経 | 効能 | 適応 |
甘/温 | 脾胃 | 補五臓 沢膚 補中 開胃 袪風 | 食欲不振 皮膚の乾燥によるかゆみ 内臓の働きを高める |
『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より
肌の乾燥が気になるとき
秋や冬の乾燥した風を肌に受けると、肌は水分を失い、カサカサチクチクと痒みが出ることがありますね。薬膳では、タチウオには、肌を潤し、乾燥からくる痒みを抑える働きがあるとされています。同様に皮膚の乾燥を潤す働きがあるバターを使って、ムニエルにしても良いですね。
よく添え物に利用されるレモンにも美肌効果があります。
何となく冷えを感じるとき
薬膳では体を温める作用があるといわれるタチウオは、軽い冷えを感じる季節にもおすすめです。柔らかい身はスープなどにも相性がよく、おいしく体を温めてくれます。もしタチウオのアラが手に入れば、水洗いした骨を魚焼きグリルで焼き、出汁を取ると、おいしいスープを取ることができますよ。
疲労から消化不良気味なとき
薬膳では、タチウオは消化器系の働きを整えて丈夫にするといわれています。食べすぎや飲み過ぎで胃腸が疲れたとき、白身で消化がよいタチウオはおすすめです。
油脂を多く使う揚げ物や焼き物よりは、煮たり蒸したりする料理がよいですね。
タチウオレシピ
タチウオの飯蒸し
今回は、タチウオの体を温める効果を生かし、タチウオの飯蒸しをご紹介します。同じく体を温めるもち米を炊いて、丸いおにぎり状に丸めたごはんにタチウオの切り身を巻き付け、蒸してから、温かい昆布出汁をかけて食べます。
吸い口に柚子の皮や三つ葉、ブブあられなど、香りがよいものをあしらうと、気の流れがスムーズになり、体もさらに温まりますよ。
【材料】 2人分
・タチウオ(切り身)・・・20cmくらいの長さの物2枚
・塩・・・適宜
・日本酒・・・大さじ1
・もち米・・・1カップ(効果は少し下がりますが、うるち米のおにぎりでも作ることができます。)
・昆布だし・・・2カップ
・塩・・・適宜
【作り方】
- タチウオの切り身は中骨が残っていないか確認して取り除き、塩、日本酒をふりかけてしばらく置いておきます。
- もち米を洗って30分程度浸漬し、蒸すか炊いておきます。
- ②のもち米で丸いおにぎりを2つつくります。
- ①のタチウオにドリップが出ていればふき取り、③のおにぎりに巻き付けて端を楊枝で止め、蒸気の上がった蒸し器で蒸します。
(または耐熱容器に入れてふんわりとラップフィルムをかけ、600Wで約5分加熱し、完全に火を通します。)
- 昆布だしをあたため、塩で味を調えておきます。(少し薄めに入れた昆布茶でもよいです。)
- 器に盛り、ゆずの皮や三つ葉、ぶぶあられなどを天盛りにし、ふちから昆布だしをそそいていただきます。
まとめ
以外にも一年中変わらずにおいしく食べることができるタチウオ。薬膳では、秋から冬にかけての体の変化を助けてくれる食材として知られています。
季節の移行をしっかりと体が受け止め、来る冬の寒さや疾患から体を守ることができると、冬を存分に楽しむことができますね。冬はいろいろな流行性疾患が流行りやすい季節です。タンスの衣替えとともに、早いうちに体調を整えて、本格的な冬を迎える準備をしておきましょう。