「いつも疲れている」「だるい状態が続いている」
だからといって病院で検査をしたからといって何か異常があるわけではない。
こうした症状に心当たりはありませんか。
もしかしたらそれは体のサインかもしれません。
こうした慢性疲労は病気になる一歩手前の未病の状態です。
東洋医学の知識を取り入れ、未病を未然に防ぎましょう。

疲労の原因は「気虚」「気滞」「腎虚」??
疲労とはどんな状態なのでしょうか。
一口に「疲労」と言っても、その状態はさまざまです。
またさまざまな症状が併合している場合もあります。
よく見られる症状として「気虚」、「気滞」、「腎虚」があります。
それぞれの症状について、自分の状態と合わせて確認しましょう。
「気虚」とは
まず慢性疲労として、最も多いと言われているのが「気虚」の状態です。
これは気の量が不足し、各器官の機能が低下している状態です。
気虚の原因
それではどうして気が不足するのでしょうか。
それは脾胃の働きが低下し、消化吸収の働きが失調することによります。
また過労やストレス、大病などで気が過剰に消費されることも原因となります。
気虚による不調
では、このように気が不足してしまうと、どのような状態に陥ってしまうのでしょうか。
気が不足した臓腑、組織が変調を引き起こします。
例えば腎の気が不足してしまうと精気を蓄えることができず、生殖機能が衰えます。
衛気が不足すると、体表の防衛機能が失調し、発汗が過度になる自汗症状があらわれます。
気虚による症状
気虚とは気の量が不足して、新陳代謝が悪く、機能が低下した状態です。
疲れやすく、やる気が出ず、免疫力も低下しています。
それでは気虚では具体的にどのような症状が見られるのでしょうか。
気虚では、疲れやすい、風邪をひきやすい、手足の冷え、食後すぐに眠たくなる、むくみ、息切れ、胃もたれ、疲れると各主症状が悪化する、内蔵下垂といった症状が見られます。
気虚による症状 ~舌の状態~
舌の先が白っぽくぽっちゃりとしています。
水分代謝が悪く歯形がつくこともあります。
「気滞」とは
肉体的な疲れだけではなく、無気力、不眠といった精神症状が見られる場合は、「気滞」です。
気滞とは、気の流れが滞り、鬱積した状態のことです。
気滞の原因
過度なストレスなどが原因になりやすいです。
この場合、ストレスで肝の働きが弱まり、体内で気が流れず停滞してしまいます。
また情緒の乱れ、栄養の過不足、瘀血なども気滞の原因になります。
その他、外邪によって気の運行が阻害されると関連する器官に症状があらわれます。
この外邪とは、病気の原因の一つで、風邪や伝染病、季節の変動などにより生じる悪影響を指します。
気滞による不調
気が停滞しているため、お腹や身体のあちこちに張るような痛みがあります。
また気が発散するため、ため息、ゲップ、おならが多く出ます。
気の滞りで生じた熱により目の充血、顔のほてり、頭痛が生じます。
とくに女性は生理前になると胸に張るような痛みを感じたり、怒りやすくなります。
気滞による症状
気滞とは気の流れが滞り、気が鬱積している状態です。
では具体的にどのような症状が見られるのでしょうか。
気滞では、イライラ、怒りやすい、ストレス、頭痛、肩こり、嫌お腹の張り、ゲップ・ガス・しゃっくりが多い、喉につかえた感じ、下痢と便秘を繰り返す、張る痛み、痛みがあちこちにうつる、ストレスで痛みが増強するといった症状があります。
気滞による症状 ~舌の状態~
舌の先、舌の周りが赤くなります。
また舌の中心に白か黄色の苔も見られます。
腎虚とは
中高年で腰痛や下半身の脱力感などを伴う場合は「腎虚」が原因と考えられます。
これは加齢により腎の働きの低下している状態です。
腎の働きと腎虚
腎は西洋医学の腎臓機能のほか、体を温め、水分代謝や生殖機能にも関わっています。
また生まれた時から備わっている「生天の気」を蓄えています。
これは両親から受け継いだ気で、年齢とともに減少していき、徐々に腎の機能が弱まる腎虚の状態になります。
老化による腎虚
たとえば皮膚につやがない、白髪、眼のかすみ、頻尿、耳が遠い、耳鳴りなどの症状は、すべて腎虚によるものです。
また腎は泌尿器系などにかかわっているため、腎虚により水分代謝が低下すると老廃物を溜め込み、脂肪が体内に滞るようになります。
これがいわゆる中年太りです。
腹や尻、太ももと言った下半身につきやすいのが特徴です。
腎虚による不調
腎気は加齢とともに徐々に減っていきますが無理をすることによって、腎虚の状態が進みます。
そして見た目だけではなく身体のバランスにも不調和が生じ、体調を壊したり、更年期の症状が強く現れたりします。
腎虚による症状
腎虚では具体的にどのような症状がみられるのでしょうか。
腰痛、足腰がだるい、耳の症状、老化が早い、むくみなどの症状が見られます。
対処法
「肉体的な疲れ」と「精神的な疲れ」
疲れは「肉体的な疲れ」と「精神的な疲れ」に分かれます。
どちらが先に疲れても最終的には両方が疲れてしまいます。
「肉体的な疲れ」
体を動かしすぎると、「気」を消耗して疲れやすくなるので、疲れている時は体を休めることが大事です。
「精神的な疲れ」
精神的に疲れている人は瞑想や運動をしたり趣味を楽しんだり、リフレッシュできるような場所へ外出するなど、心から体を元気にしましょう。
「内臓の疲れ」
疲れている時は体だけではなく内蔵の働きも弱っています。
食事などで栄養を補おうとしても効率よく身体を構成する基本物質をつくることができない状況です。
食事だけで補おうとせず、できるだけ体を動かさないようにして、しっかり睡眠をとるなど、体を休めることに重点をおきましょう。
漢方薬
①気虚タイプ
病後や術後で体力が低下しているときには
→十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
滋養強壮効果が高く、術後など体力が著しく衰えている際におすすめです。
冷えや貧血、食欲不振を改善します。
呼吸器症状、不眠症がある方には
→人参養栄湯(にんじんようえいとう)
痰のある咳を鎮め、胃腸の働きを高めます。
滋養強壮作用があり、気力や体力を補います。
②気滞タイプ
顔色が悪い、不安・抑鬱傾向
→加味帰脾湯(かみきひとう)
虚弱体質で血色が悪く、不安感や不眠、考えすぎや胸騒ぎ、憂鬱を伴う疲労におすすめです。
③腎虚タイプ
高齢者で腰痛、頻尿など
→八味地黄丸(はちみじおうがん)
腎虚に対する代表的な処方です。
腎を補い、腰痛や排尿障害に効きます。
身体を温める働きもあります。
食養生
脂っぽい食事は脾に負担がかかるので控えましょう。
冷たい飲食物をとると体が冷えるので気をつかって体を温めることになり気を消耗してしまいます。
体を冷やさないようにして血の巡りや水分代謝をよくして老廃物を出していきましょう。
①気虚タイプ→胃腸の働きを活発にする食材
消化酵素を含み、胃に優しい山芋や長芋がおすすめです。
生薬でもあるナツメは消化器官の働きを補う作用があります。
②気滞タイプ→滞った気の巡りをスムーズにする食材
気を巡らせ、精神を安定させるのは、香りの高い野菜や柑橘類です。
気の流れをつかさどる肝を補う酸味の食材、梅干しや黒酢がいいです。
③腎虚タイプ→腎の働きを強化する食材
腎虚にはコラーゲンを多く含む牛筋が効果的です。
他、イカやウナギも腎の働きを高めます。
まとめ
疲労に慣れてしまってはいけません。
疲労は病気になる一歩手前の状態。
疲労の症状として代表的なものは「気虚」、「気滞」、「腎虚」がありましたが、自分の不調と合った対処法を実践し、改善していきましょう。