気の滞りを解消し食欲増進に春菊

普段使いの薬膳レシピ

秋が深まり、冬の足音が聞こえるようになると食べたくなる春菊。特有の苦みや香りは好き嫌いが分かれるところですが、好きな方にとっては、冬の鍋や和え物には欠かせないものですね。今回はそんな春菊の魅力に迫ってみたいと思います。

春菊の原産地や特徴とは?

春菊はキク科シュンギク属に分類される葉物野菜の一つで、地中海沿岸のトルコやギリシア辺りが原産地とされています。しかし、かの地をはじめ、多くの国や地域では観賞用の植物として扱われ、食用にしているのは日本をはじめとするアジアの一部ということです。

日本に伝えられたのがいつなのかは定かではありませんが、室町時代にはすでに食べられていたようで、江戸時代の農業書『農業全書』などには、春菊の栽培方法が記載されています。

日本で多く出回る時期は10月から3月にかけての寒い時期で、春に菊のような花をつけるので、春菊という名前が付いたとされています。姿がキクの葉と似ていることから、関西では菊菜(キクナ)という名前で呼ばれています。

春菊には、葉の切れ込みがこまかく複雑な中葉種、小葉種と、切れ込みが浅い大葉種の、大きく分けて3種類があります、大葉種は主に西日本、中葉種は東日本で栽培されています。

春菊の栄養

  • βカロテン

βカロテンは体内でビタミンAとして働く、植物や動物に含まれる色素成分です。抗酸化作用があり、活性酸素から私たちの体を守ってくれるほか、免疫力を高めたり、肌の健康を維持したりする働きが知られています。

  • ビタミンB2

ビタミンB2は皮膚や粘膜の健康維持をするほか、糖質やたんぱく質、脂質からエネルギーを作り出す働きがあります。日々の活動量が多く、基礎代謝量が多い人ほどたくさん必要になります。

  • ビタミンC

ビタミンCは私たちの体の細胞同士をつなぎ合わせているコラーゲンを作るために欠かせない成分で、皮膚や粘膜を健やかに保つ働きがあります。また、心身にかかるストレスに負けない体づくりをしたり、鉄分の吸収力を高めたりする働きがあります。

  • ビタミンE

ビタミンEは抗酸化力が高く、体内に入った活性酸素から血管や細胞が傷つくのを防ぎ、老化を防止したり、動脈硬化などの生活習慣病を予防したりする働きがあります。

  • ビタミンK

ビタミンKは脂に溶ける脂溶性ビタミンの一種で、ある程度の量は体内の腸内細菌の働きで作りだしています。ビタミンKには、怪我などをして出血した時に血液を止める働きを促すほか、骨のたんぱく質を強める働きがあるため、骨粗しょう症の薬として利用されています。

  • 葉酸

葉酸はたんぱく質や血液などの細胞のDNAを正確に複製するのを助ける働きがあります。そのため、妊娠中は特にしっかりと取っておきたい栄養素の一つです。

また、ビタミンB12とともに血液を作り出す働きがあり、不足すると巨赤芽球性貧血という悪性の貧血を引き起こすことがあります。

鉄は、体内に存在する70%が赤血球のヘモグロビンに含まれ、体の隅々まで酸素を届けるために利用されています。残り25%は肝臓に貯蔵されています。鉄分が不足すると、鉄欠乏性貧血を引き起こすほか、集中力や運動能力が低下したり、低体温になり、免疫力が低下したりすることがあります。

  • カルシウム

カルシウムは骨や歯を形成するほか、出血した際に血液を凝固させる酵素を活性かさせる働きがあります。また、神経伝達を正常に行ったり、ストレスをやわらげたりする作用があります。

国民健康・栄養調査結果によると、日本人のカルシウム平均摂取量は年齢を問わず必要量に達していない割合が高いため、毎日意識して取ることが必要です。

  • α-ピネンなど

独特の芳香を持つ春菊は、α-ピネンなど、様々な芳香成分を持っています。

α-ピネンはヒノキにも含まれ、森林浴をしたときのように気持ちを穏やかに落ち着かせてくれるといわれる香りです。また、ペリルアルデヒドという、強い抗菌効果を持つ香り成分も含んでいます。

薬膳で考える こんな時に春菊がおすすめ

中医薬膳学では春菊を下記の通り定義しています。

性味帰経効能適応
辛甘/平肝肺清肝 明目 潤肺 化痰高血圧 痰の多い咳 のぼせ 頭重

『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

乾燥した空気で肺を痛め、風邪を引いて痰の多い咳が出るとき

中医学では、春菊は食用だけではなく、生薬としても利用されています。リラックス効果をはじめ、多くの健康効果を持つ独特の香り成分や栄養価は薬膳ではどのような効果として知られているのかをご紹介します。

秋から冬にかけて、乾燥した空気のせいで気管支や肺の粘膜が傷つき、風邪を引きやすくなりますね。薬膳では、古くから春菊は「食べる風邪薬」と言われています。肺を潤し、痰を出やすくして咳を鎮める働きがあるといわれています。

蒸気も含め、たっぷりの水分を取れる鍋ものやスープがおすすめです。

精神的なストレスからくる不眠や不安感があるとき

先ほどもご紹介したとおり、春菊の香り成分には精神安定の働きがあることが、現代医学でも証明されています。

薬膳でも、イライラを鎮め、気持ちを穏やかにする働きがあることが知られています。カリカリとした食感も楽しめるナッツやクルトンをプラスしたサラダがおすすめです。ドレッシングには、菊菜同様ストレスを発散する作用があるグレープフルーツやゆずなどの柑橘系の香りが効いたものがよいですね。

イライラして頭が重く、血圧が上がったり体が熱く感じたりするとき

イライラとしてストレスが溜まった時、肝の機能が高まり、目が充実したり頭痛やのぼせが起こったりすることがあります。薬膳では春菊の持つ清肝の働きが、肝の気を静め、気持ちを穏やかにして頭痛をやわらげ、体の熱を鎮めてくれるといわれています。

ストレスで消耗されるビタミンCを豊富に含む柿やリンゴ、薬膳では体の熱を取る働きがあるといわれる豆腐を使った白和えがおすすめです。

春菊レシピ

春菊とフルーツの白和え

香り良い春菊はさっと茹でて、ビタミンCもとれる柿やリンゴと合わせます。全体をまとめてくれるのは、体の熱を穏やかに取ってくれる豆腐です。男性や子どもなど、ボリュームが欲しい方には、クリームチーズを柔らかくしたものを豆腐に加えてもよいですね。

【材料】   2人分

・春菊・・・1/2把

・柿またはリンゴ・・・1/4個

≪和えごろも≫

・豆腐・・・1/2丁(約120~150g)

・みりん・・・大さじ1

・しょうゆ・・・少々

・塩・・・ひとつまみ

【作り方】

  • 豆腐はキッチンペーパーなどに包み、バットか小皿を乗せて水切りしておきます。
  • 春菊は根元よりの太い茎は斜め切りにし、葉は一口大に切ります。(根付きの物は砂などが入っていることが多いので、念入りに洗っておきます。)塩少々(分量外)を加えた熱湯でさっと茹で、しっかりと水気を絞っておきます。
  • 柿、リンゴなどは皮をむき、細切りにしておきます。
  • ①の豆腐をザルなどでボールに濾しとり、みりん、しょうゆ、塩を加えてよく混ぜ、味を整えます。
  • ④のボールに②の春菊、③のくだものを加え、さっくりと混ぜて出来上がりです。

まとめ

冬においしい春菊は、その香り成分が私たちのストレスを程よく解消してくれる野菜です。

最近はサラダ用に柔らかく育てたものも販売されていますが、もとから生食ができるので、鍋や和え物だけではなく、サラダやサンドイッチの具材など、さまざまな料理に利用することができます。

美味しく食べて元気に冬を乗り切りたいですね。

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