老化は誰しも経験します。
したがって老化とどう付き合うかは、私たちにとって大変重要な問題と言えるでしょう。
しかし老化とはいったい何でしょうか?
私たちは老化について何かを知り、今後具体的にどう対処していくべきか考える必要があります。
今回は、誰しも経験する身近な現象、「老化」についてご紹介します。

老化と男女差
私たちが誰しも経験する老化。
この老化、男女差があるのはご存知ですか。
老化のサイクル
東洋医学では、男性は8年ごとに、女性は7年ごとに、体の節目を迎えると考えられています。
女性は老化のサインが男性よりも少し早めに訪れます。
例えば35歳で容姿の衰えが見え始め、42歳で白髪が目立ち、49歳で閉経します。
28歳のピークを過ぎてからは、老化の曲線が急激な下降曲線となります。
男女ともに、40歳以降から加齢に伴うトラブルが生じてくるために、病院に通う頻度も多くなってきます。
陰陽や虚実の変化
東洋医学では、老化について二つの大きな変化があると考えます。
まず一つは「陽から陰への変化」です。
二つ目は「実から虚への変化」です。
陽から陰への変化
それでは「陽から陰への変化」とは何でしょうか?
これは体が熱を発することができる若い頃の陽の状態から、加齢によって冷えて寒さに弱くなる陰に向かっている状態へ変化することです。
この陽と陰とは何でしょうか?
陽と陰とは東洋医学の基本概念のひとつで、世界のあらゆるモノとコトを陰と陽に分類した理論、陰陽論に基づいた概念です。
陰陽論
ではこの陰陽論について、詳しく見ていきましょう。
東洋医学では、対になる二つのものを「陰」と「陽」に分類する陰陽論という考え方があります。
例えば以下のような対になります。
「陰」を夜、「陽」を昼
「陰」を秋冬、「陽」を春夏
「陰」を女性、「陽」を男性
「陰」を大地、「陽」を天
このように「陽」は太陽の当たるところをさし、温かい、明るい、上・外向きという性質です。
それに対して「陰」は太陽が当たらない陰をさし、性質は冷たい、暗い、下・内向きという性質を表しています。
陰と陽のバランス
この陰陽のバランスは常に変動しています。
どのように変動するかというと、陰が強くなれば、それを抑えるように陽が強くなるというように変わります。
そして陰と陽はその勢いが最高点に達すると相対する陽と陰に転換していきます。
例えば一日で考えると、真昼には陽が極まり、真夜中になると陰が極まり、夜明けが近づくにつれ陰が弱く、再び陽の勢いが強くなります。
また四季で考えると、夏至に陽が最大となり、冬至には陰が最大となります。
このように陰と陽は互いにバランスをとりながら常に変動しているのです。
私たちの体と陰陽論
この陰陽論は私たちの体についても当てはめて考えられます。
私たちの体は、夏には体内の陽が強くなり過ぎないように発汗し、冬には汗腺を閉じて体温を保ち、腸が弱くならないように調整するなど、陰と陽のバランスを自然に回復する機能が備わっています。
こうした体内における陰と陽のバランスは、私たちが健康な時はうまく保たれています。
老化と陰陽論
この陰陽論は老化についても当てはめて考えることができます。
体の新陳代謝が低下した状態を陰、反対に新陳代謝が活発な状態を陽と考えます。
老化とは、つまり「加齢によって新陳代謝が活発な陽の状態から、冷えて寒さに弱くなる陰の状態に向かうこと」です。
一般的には20代後半から30代前半が陽のピークで、30代後半からは陽から陰への過渡期になります。
この頃から、新陳代謝が以前より衰えるため、冷えやすい、太りやすいと言った症状を自覚しやすくなります。
つまり老化についての一つ目の変化、「陽から陰への変化」とは次のようなことです。
老化を陰陽論で考えた時に、私たちの体が新陳代謝が活発な状態から、加齢により新陳代謝が落ちていき、以前より衰え、冷えやすくなっていく状態を指します。
実から虚への変化
では老化についての二つ目の変化、「実から虚への変化」とは何でしょうか。
これは東洋医学における「虚実」という考え方に基づいています。
この「虚実」とは、人間それぞれが本来もっている、体力や病気に対する抵抗力の強弱を示す東洋医学的な指標です。
「虚実」は実と虚に分けられます。
実が体力や気力が充実しており、病気に対する抵抗力が強い状態です。
虚は体力や気力が充実していないため、病気に対する抵抗力や反応が弱い状態です。
これらの状態は必ずしも明確に区別できるものではなく、「やや実証」や「実証寄り」というような状態もあります。
人間だれしも加齢によって実から虚へと移行する性質があり、これを老化の一つととらえています。
脾の機能低下
老化によって脾の機能が低下すると老化現象を引き起こします。
なぜ脾の機能が低下すると老化が進行するのでしょうか。
脾の機能低下による老化のメカニズム
脾は胃とともに働いて、食べたものを消化吸収し、気、血、水の元になる水穀の精微を作り出して運搬するという役割を担っています。
胃では食べたものを消化して水穀の精微を作り出します。
作られた水穀の精微を吸収し、全身に送り届けるために、心や肺に運ぶのが脾の役割です。
つまり脾は体を構成する基本的な物質である「気」「血」「津液」をつくる大本となるところです。
「気」「血」「津液」は、臓腑はもちろん体を動かすのに必要なものなので、不足すると老化が早くなります。
老化によって脾の機能が低下すると、以下のような不調が現れます。
まず運化作用の低下から、食欲不振、消化不良、下痢や吐き気などの消化器に関する不調が多くなります。
消化吸収がうまくいかないと、気が十分に作れず、疲れを感じ、気力もわかず、最終的には全身的なエネルギー不足を引き起こし、気虚となります。
また筋肉の衰えによってこりを感じやすくなります。
加齢とともに胃腸の働きは弱ってくるので、良い筋肉を作ることができなくなりやすいです。
先天の精の減少
先天の精の減少に伴って、老化が進行します。
それではこの「先天の精」とは何でしょうか?
先天の精の減少による老化のメカニズム
先天の精とは腎に貯蔵されている両親から受け継がれた気のことです。
腎にはこの先天の精の他に、後天の精があります。
後天の精とは脾や胃で食べ物を吸収して作られる気です。
これらの先天の精と、後天の精が合わさったものを腎精と言います。
腎精は骨や歯の発育、髄の生成、脊椎や神経、大脳機能を健全に保つといった成長に関わる働き、そして生殖に関わる働きがあります。
まさに腎精は人間の生命力の源といえます。
先天の精は年齢とともに減少していきます。
後天の精を補うことで減少した精を補填することができますが、脾と胃の働きも加齢とともに衰えてくるので、先天の精の減少に補うことができる後天の精が追いつかなくなっていきます。
したがって腎精は年齢を重ねるごとに徐々に減っていき、老化が進行していくのです。
腎精の減少による症状
腎精の減少による老化は、具体的にどのような症状を引き起こすのでしょうか。
腎精の減少によって、徐々に腎の機能が弱まり「腎虚」の状態になります。
例えば、皮膚につやがない、白髪、眼のかすみ。、頻尿、耳が遠い、耳鳴りなどの症状です。
また水分代謝が低下し、老廃物を溜め込み、脂肪が体内に滞るようになります。
これがいわゆる中年太りです。
腹や尻、太ももといった下半身に脂肪がつきやすいのが特徴です。
まとめ
老化とは、陰陽や虚実の変化、脾の機能低下、あるいは先天の精の減少と言ったことが原因で引き起こされることについて具体的にご紹介いたしました。
老化との付き合い方は、私たちの体との付き合い方に通じる問題です。
老化を止めることができませんが、老化の速度を緩めることはできます。
より心も体も健やかに、年齢を重ねていくことができるかは、その時々の適度を知り、自覚して体を労わってあげることが重要です。