骨を丈夫にしてむくみ解消にも効果的な鰆

普段使いの薬膳レシピ

魚へんに春とか書いて「鰆(さわら)」。魚の中では小骨が少なく、子どもや年配の方にもおすすめしやすい魚です。癖もなく、食べやすいのも魅力ですね。地方によりさまざまな呼び名がありますが、小さいものをサゴシ、大きくなるとサワラと呼び名が変わる出世魚でもあります。今回は鰆の薬膳効能や、おいしい食べ方をご紹介します。

鰆の原産地や特徴とは?

鰆はスズキ目サバ科に属する魚で、北海道から東南アジア一帯迄生息している大型魚です。和食だけではなく、近隣の韓国、中国でも好んで食べられています。

主にプランクトンや小魚を食べる肉食性の回遊魚で、他の魚にくらべ水分が多いのが特徴です。日本では4月から5月にかけて、産卵のため瀬戸内海に入る鰆が多く水揚げされます。「鰆の相場は岡山で決まる」とまで言われるほど、岡山県をはじめとする瀬戸内海沿岸から西日本一帯にかけて愛されている魚です。

春の鰆は産卵のために脂が抜け、さっぱりとした味が特徴で、しゃぶしゃぶにしたり、後程ご紹介するように西京味噌で味噌漬けにしたりしていただきます。魚へんに春と書く通り、西日本では春が旬の魚で、俳句では鰆は春の季語となっています。

これに対し、関東地方では鰆の旬は冬だといわれ、しっかりと脂がのった濃厚な味が好まれています。

水分が多く柔らかい身を崩さないように、皮目をさっと炙ってつくるたたきや、酢を効かせて作るマリネ、焼き物がむいています。

江戸時代には、鰆の卵巣をからすみに加工していたことが、本草書『大和本草』貝原益軒著に記載されています。

鰆の栄養や薬膳的効能

筋肉のもとになり、肌や髪を健やかに保つたんぱく質

三大栄養素の一つに数えられるたんぱく質は、私たちの生命維持にとても大切な物質の一つです。骨や筋肉を作る材料になるほか、白血球や免疫細胞の材料としても利用されています。また、エネルギー源として利用したり、日々再生されたりするため、毎日欠かさずに取り続ける必要があります。

ダイエットのためと控える方もいらっしゃいますが、よい筋肉をつくり、代謝を上げることでダイエット効果も上がります。良質のたんぱく質は欠かさないようにしましょう。

ダイエットや成長に欠かせないビタミンB2

ビタミンB2は水溶性のビタミンの一種で、私たちが取った糖質やたんぱく質、脂質をエネルギーにかえる役割をしています。また、すこやかな成長を支える働きもあり、「発育ビタミン」とも呼ばれ、皮膚や粘膜、髪などの細胞の再生、抗酸化作用も持っています。

むくみを解消し、血圧安定に効果的なカリウム

カリウムは取り過ぎた塩分を体外へと排せつする働きがあります。

私たちの体は、取り過ぎた塩分を薄めるために体内に水分を貯める仕組みがあり、これがむくみや高血圧の原因にもなっているのです。

カリウムをしっかりと取ることで不要な塩分を排泄し、むくみ解消、血圧の安定につなげることができます。

ただし、高カリウム血症、また、透析を受けている方はあらかじめかかりつけの医師の判断を仰いだうえで召し上がってくださいね。

血液をサラサラにして生活習慣病予防にDHA/EPA

DHA(ドコサヘキサエン酸)/EPA(エイコサペタンエン)共に、私たちの体内ではほとんど作ることができない必須脂肪酸の一種で、主に青魚に含まれています。

DHAは脳や目などの神経系、心臓、胎盤や母乳に多く含まれる栄養素の一つで、脳に直接作用し、思考能力、記憶能力の維持に深くかかわっています。

EPAは血液中の血栓を予防し、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの引き金になる高脂血症を予防する働きがあります。また、血管や細胞膜にしなやかさを与え、柔らかく保つことができるため、血行促進効果があり、結果として肌を美しく保つことができるようになります。

中医薬膳学では鰆を下記の通り定義しています。

性味帰経効能適応
甘/平脾胃峻補(※) 益気高血圧 体力回復
    

『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

(※)峻補とは、大きな病気をし、衰弱した場合など、速やかに「気」を補い、体力を回復するという意味です。

薬膳で考える こんな時に鰆がおすすめ

● むくみや血圧が気になる時に

薬膳でも、鰆に血圧を安定する作用があることは古くから知られていました。カリウムの減塩効果や豊富に含まれるたんぱく質で筋肉量を増やし、その働きを滑らかに保ちます。

その結果、余分な水分や血流を運ぶリンパや血管を刺激して心臓の負担を減らすことができます。

● 疲労が回復しないときに

薬膳では、先にご紹介した通り、鰆には峻補の力があり、疲弊した体を素早くいやし、体力を回復する効果があるとされています。

● 口内炎や肌あれが気になるときに

口内炎や肌荒れなど、胃腸の疲れが肌に現れることがありますね。薬膳では脾胃に効果があるといわれる鰆は、これらの症状にも有効だとされています。

このような症状のときには、揚げ物や香辛料を多用したレシピではなく、蒸し物や焼き物など、優しい味でいただきましょう。

鰆レシピ

鰆の味噌漬け

鰆料理の定番中の定番、鰆の味噌漬けは実は自宅で手軽に作ることができます。時間がある時に作っておくと、食べるときは焼くだけと、おいしくて時短にもつながる簡単作り置きです。

お料理のメインにしたり、お弁当、また、2週間程度しっかり漬け込んだものはご飯のもととしてお茶漬けにしたりしてもおいしいですよ。

【材料】

・鰆・・・6切れ程度

・塩・・・適宜

・西京味噌・・・300g程度

・みりん・・・50cc~

【作り方】

  1.  鰆は血液などの汚れがあれば洗って水分をふき取り、塩を振って30分程度冷蔵庫でなじませます。
  2.  西京味噌をボールに取り、みりんを少しずつ加えてのばし、マヨネーズより少し硬い程度に調整します。
  3.  清潔な保存容器に②の味噌を1cmほどの厚みに敷き詰めます。
  4.  ①の鰆の水分をふき取り、③の容器に並べ、上からも全体を覆うように味噌を乗せていきます。
  5.  冷蔵庫で保存します。切り身の厚さにもよりますが、3日後頃から食べ頃になります。
  6.  食べるときは味噌をざっと洗い流し、魚焼きグリルなどで焼きます。焦げやすいので、必要に応じてアルミホイルなどで蓋をして焼いてください。

※味噌の量はあくまでも目安です。保存容器に入れた際、鰆全体が味噌に包み込まれているような量で漬け込んでください。味噌から鰆が出ていると、その部分から腐敗したりカビが生えたりすることがあります。

※長期保存するときは味噌がついたままラップフィルムでつつみ、冷凍します。

※薬膳では、発酵食品である味噌は体をあたため、解毒作用があり、二日酔いや腹の冷えの解消、がんや脂肪肝予防に効果があるとされています。

鰆のムニエル

さっぱりとした春の鰆は、オリーブオイルの香りとコクを合わせてあげると格段においしくなります。和食だけではない、薬膳だからといって中華でもない、新しい鰆の魅力を楽しめますね。

【材料】   2人分

・鰆・・・切り身2切れ

・塩・こしょう・・・各適宜

・小麦粉・・・大さじ1程度

・オリーブオイル・・・大さじ2

<付け合わせ その1>

・じゃがいも、トマト、ベビーリーフなど・・・各適宜

・レモン・・・1/2個(お好みで)

【作り方】

  1.  鰆は血液などの汚れを洗い落とし、水分をふき取ってから、塩・こしょう適宜で下味をつけます。
  2.  ①の鰆に小麦粉を薄くまんべんなくまぶしつけます。
  3.  フライパンにオリーブオイルを熱し、②の鰆を皮目の方から焼きます。
  4.  鰆に火が通ったら器に盛り、残った油をお好みで回しかけ、付け合わせとレモンを添えます。

<付け合わせ その2>

じゃがいもは皮をむき、眼を取り除いてから茹でて粉ふき芋にします。トマトやベビーリーフなどは適宜洗って一口大に切り、水分を切っておきます。レモンはくし切りにし、中央の薄皮が白く集まった部分を切り取り、種を除いておきます。

まとめ

春と冬、それぞれに違ったおいしさを楽しめる鰆、とても栄養があり、ヘルシーな魚です。近年は温暖化により、日本沿岸での生息水域が広がり、漁獲量も増加傾向にあり、ますます身近な魚になりつつあります。

このように魅力的な鰆、ぜひさまざまに料理しておいしく召し上がってくださいね。

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