いまが食べ頃”柿”は秋の風邪や二日酔い解消におすすめ

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さるかに合戦のお話にも出てくる柿、日本の里山の、秋の風景には欠かせない、最も身近な果物の一つですね。生でそのまま食べる柿のほか、いつもニコニコ仲睦まじく、と、お正月の鏡餅にも干し柿を飾りますね。こんなにも愛される柿、どのような薬膳の効能があるのか?また、日本の誇るドライフルーツ、干し柿の作り方をご紹介します。

orange round fruit on black metal round mesh container
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柿の原産地や特徴とは?

冒頭でもご初回した通り、日本の秋の風景には欠かせない柿。

カキノキ科カキ属の落葉樹で、もとは中国が原産と言われています。しかし、岐阜県瑞浪市にある第三紀層から柿の化石が発見されていることから、かなり古くから日本に自生していたとも考えられています。縄文時代の遺跡からも柿の種が発見されていて、その頃には食べられていたことが確認されています。

柿というと、生のまますぐに食べることができる甘がきと、渋抜きをしないと食べられない渋柿がありますね。意外なようですが、柿の実はすべて、元は渋柿でした。日本に持ち込まれ、品種改良を進めることで、鎌倉時代に突然変異で甘がきが誕生したといわれています。

渋柿には、カキタンニンという水溶性の渋み成分(ポリフェノール)が含まれています。

ですが、干したりアルコールで処理したりすることで、不溶性に性質が変わり、舌についても広がらなくなるために、渋みを感じなくなります。

この性質を利用して作られる干し柿は保存食として、古くから旅の僧侶などが携帯していました。今のような甘い菓子がない時代、甘味が強い干し柿は菓子として、エネルギー源として、大切にされていたのでしょうね。

鎖国を開き、ポルトガルとの交易が始まると、柿はヨーロッパにも紹介され、広く広まっていきました。フランスをはじめとする多くの国では、柿は現在でも、日本語そのままにKAKIと呼ばれ、学名にもDiospyros kaki(神の食べ物・柿)と、日本語の柿という言葉が利用されています。

柿の栄養

柿が赤くなると医者が青くなる、と言います。では、どのような栄養素が含まれ、どのように私たちの体に良いのかを見ていきましょう。

  • βカロテン

βカロテンは植物に含まれる赤色の色素で、私たちの体内に入るとビタミンAに変化します。ビタミンAは発育を促し、粘膜や皮膚の保護、免疫力の向上に役立ちます。また、目の網膜に働き、薄暗いところでも光をとらえて視力を維持する働きがあります。

  • β-クリプトキサンチン

β-クリプトキサンチンは植物に含まれるオレンジ色の色素で、βカロテンなどよりも長期間体内にとどまることが知られていて、発がん物質の除去や活性酸素による体の老化や酸化を抑える働きがあります。

また、骨粗しょう症を予防する働き、糖尿病の進行を抑制したり、免疫力を高めたりする働きがあると考えられていますが、まだまだ研究途上の栄養素の一つで、現在も多くの研究が行われ、さまざまな成果が発表されているということです。

  • ビタミンC

ビタミンCは水溶性のビタミンの一種で、皮膚や骨の細胞同士を結合しているコラーゲンの生成を担っています。また、強い抗酸化作用を持ち、美肌効果、ストレスに対する抵抗力や免疫力を高める働きがあります。また、鉄分の吸収を助け、貧血予防に役立ちます。

  • ペクチン

ペクチンは果物の皮や種の周りに多く含まれる食物繊維の一種で、手作りのジャムにとろみがつくのは、主にペクチンの働きによるものです。

ペクチンは、体内で食べ物に含まれるコレステロールが吸収されるのを防ぎ、コレステロール値が高くなるのを予防して、動脈硬化や高血圧を予防する助けになります。また、血糖値の上昇を抑えたり、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えて便秘や下痢を予防したりする働きもあります。

  • タンニン

タンニンは植物に広く含まれているポリフェノールの一種で、柿には特に多く含まれています。干し柿や甘柿にもタンニンは含まれていて、収斂作用があり、下痢を鎮める働きがあります。また、抗酸化力があり、コレステロールの酸化を防いで動脈硬化など生活習慣病の予防にもなります。

薬膳で考える こんな時に柿がおすすめ

中医薬膳学では柿を下記の通り定義しています。

性味帰経効能適応
甘渋/寒心肺胃大腸清熱 解酒毒 潤肺 止渇咳止め 吐血 口渇 口内炎 酒毒 血便 熱による下痢 二日酔い 発熱 痔/利尿

『現代の食卓に生かす「食物性味表」」日本中医食養学会編纂より

・体が熱っぽいとき

 薬膳では、柿には熱を冷ます働きがあるとされ、暖房の効きすぎでのぼせてしまったり、何となく熱っぽさ感じたりするときに、熱を冷ましてすっきりとさせてくれる働きがあります。

・二日酔いで体調が悪い時

 薬膳では、柿には酒の毒を除く働きがあると考えられています。柿に含まれるタンニンが二日酔いの時に体に溜まっているアセトアルデヒドを吸着し、体外に排せつしてくれるためです。

・乾燥して咳が出るとき

 薬膳では、柿には咳を止め口の渇きを癒す効果があるとされています。風邪のひきはじめや乾燥でから咳が続くときには、とろとろと柔らかく熟した柿をのど飴がわりに、少しずつ舐めておくのもおすすめですよ。

柿レシピ

干し柿

秋になると果物コーナーに並ぶ、甘柿と渋柿。干し柿を作るなんて、面倒くさそう!と思われたことはありませんか?実はとても簡単に、少しの手間だけで作ることができるのです。

少しずつ乾燥して小さく黒くなり、やがて糖分が噴き出して白くなっていく様をみていると、なんとも愛おしくなるものです。

ニュースの画像で見るように大量に作るのではなく、はじめは10個程作ってみると、かなりハードルが下がります。機会があれば、ぜひお試しくださいね。

【材料】

・渋柿

・シュロ縄または荷造りヒモ

【作り方】

  • 柿は洗わずに表面を布巾などでさっとぬぐい、ヘタの葉のようになっている部分のみ、はさみで丸く切り取ります。
  • ピーラーか包丁で皮をむき、ヘタから出ているT字の枝にシュロ縄または荷造りヒモをしっかりと結びます。複数ある場合は15cm程度の間隔をあけて結びます。
  • ヒモの端をフックやハンガーにかけて、日当たりと風通しの良い場所につるします。

ほこりや虫、鳥などが心配な場合は、園芸店にある虫よけシートを筒状にしてホッチキスで止め、全体を覆うようにふんわりとかけ、下を輪ゴムで止めておきます。

  • 1週間程度経って表面が乾燥してきたら、少しずつ優しくもみほぐします。これを毎日繰り返し、芯がなくなって、好みの乾燥具合になるまで干します。
  • 仕上がれば保存容器に入れ、冷暗所で保存します。2週間以上保存する場合はひとつずつラップフィルムでくるみ、冷凍しておきます。

※あまり温かいうちに作ったり、雨に当ててしまったりするとカビが生えることがあります。少し怪しいなと感じたときはすぐにホワイトリカーを全体に噴霧して、優しくふき取ってあげると、予防することができます。地方にもよりますが、11月後半から作業を始めたほうが、安心ですね。

一方、干し柿の表面全体に、白い粉が吹いているのを見たことがあるかと思います。これはカビではなく、柿の持つ糖分が表面にしみ出して結晶化したもので、柿霜(しそう)と呼ばれています。漢方では口内炎や咳止め、のどの痛みに効く漢方薬として用いられています。

まとめ

秋になると空気が乾燥して風邪を引きやすくなります。また、ハロウィンに始まり、クリスマス、年末年始と、お酒やご馳走を頂く機会が多くなり、二日酔いになってしまう機会が増えることもありますね。

そんな時にピッタリの果物、柿。旬が過ぎると、当然のことながら、生の物は手に入りにくくなります。干し柿を準備して、季節の養生食材として備えておくのもおすすめですよ。