食事から日々の不調を整える 薬膳料理の基礎知識

young troubled woman using laptop at home 普段使いの薬膳レシピ
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昨今とても身近に耳にするようになった、「薬膳」「薬膳料理」。薬膳レストランなどで説明をうけながら食べると、何となく体によさそうで、おいしくて、健康になった気になりますね。では、実際自分で薬膳を日々の食卓に生かすためには、何を基準に考え、選べばよいのか、今回は薬膳の基本をご紹介します。

中医学の考えがもとになっている薬膳

西洋医学と中医学

薬膳というと、ちょっと薬臭いようなスープに赤いクコの実が浮いている…というイメージがあるかもしれませんが、実は中国で築かれた中医学的な理論が基礎となっています。

私たちとなじみのある西洋医学は、例えば胃がんであれば、がんそのものをターゲットとしています。治療は、がん細胞を攻撃する薬や放射線など、また、手術をすることにより病巣を取り除くことに重きをおきますね。

それに対し、中医学の場合、現代ではもちろん病巣を取り除く手術や投薬なども行われることとは思いますが、なぜ胃がんが発生したのか?患者の体質や年齢、生活圏や食生活など、患者を取り巻く環境などからその「原因」を探り、排除したり暮らしている環境要因と均衡を保ったりするための処方をすることに重きをおきます。

私たちの体を司る気血津という考え方

中医学では、私たちの体をめぐる物質を気、血、津という3つに分けて考えます。

気とは、自然界に存在する空気、水蒸気、電気などからその概念が発生し、その後中国の哲学に取り込まれたものです。私たちの肉体・生命をはじめ、世の中の物は「気」によって構成され、動かされているものと考えられています。

気の働きには成長発育を司るもの、免疫、体温、出血や発汗、嘔吐などさまざまな体の働きをコントロールするものがあります。

分かりにくい概念かもしれませんが、気分、元気、病気、無気力、覇気、気になる、気を病む、気が晴れる、など、周りを見ると、私たちの日常に身近にある考え方でもあります。

いわゆる血液、そして、血液の運行によってもたらされる滋養作用など、血液や栄養、酸素などの循環、という意味もあります。

血が不足する「血虚」になると、顔色が悪くなったり、めまい、耳鳴り、立ちくらみなどが起こるほか、白髪が増え、爪がもろくなったりすることがあります。

血の運行が滞る「血瘀(けつお)」の状態になると、肩こり、頭痛、冷え、関節痛、などが起こります。

津液とは、私たちが飲食したものや呼吸などから得る水分のことで、西洋医学でいうところの体液、胃液などの消化液、関節腔液、涙、汗、尿などのことです。

津液が不足し、「津虚」になると、脱水症、肌や毛髪の乾燥、ドライアイのほか、乾燥性の便秘のほか、呼吸器の粘膜の乾燥から風邪を引きやすくなったりします。

逆に津液が滞る「津液停滞」になると、むくみ、重苦しい頭痛、メニエール症、肥満、ニキビや湿疹などの症状が現れます。

これら「気・血・津」は、それぞれが独立しているように見えますが、お互いがお互いを支え合い、関係しあって、私たちの健康を守ってくれています。

帰経と食物

帰経とは、食べ物を取ると、私たちの体のどの臓器に影響を及ぼすかを示すものです。

中医学においては、私たちの内臓の働きは、胃なら胃、肺なら肺だけ、という単一の働きではなく、例えば肺と胃と皮膚は同一の経絡でつながり、肺を患えば腸に影響が出て、皮膚に症状が現れる、ということが古くから知られていました。

このことは、腸の免疫機能の異常ともいわれる、何らかの食物アレルギーを持っている子どもが、アトピー性皮膚炎、また、小児喘息を起こしやすいことからも判りますね。

帰経は以下のようにつながっているとされています。

・肺経 肺、鼻、皮膚、大腸、免疫機能など

・肝経 肝臓、目、じん帯。子宮(生理)など

・脾経 脾臓、唇、消化器系、水分代謝など

・腎経 腎臓、内分泌系、脳、葉、耳など

・心経 心臓、脳、血液循環など

 薬膳の思想は薬食同源にある

中医学をもとに発達した薬膳は、未病(※1)の段階の不調を、普段の食事から改善することを大きな目的としています。

中国では最も古い薬学書、『神農本草経』には、365種の薬物(生薬)について、その効能や利用方法について記されています。この薬物というのは、いわゆる漢方薬だけではなく、普段食材として口にしている野菜や肉類、魚介類も含まれています。

中医学では、食材そのものを上品(毎日食べても大丈夫なもの)、中品(体質により、副作用が起こる可能性があるため、常用はできないもの)、下品(使用方法により毒にも薬にもなるもの、トリカブトなど)の3つに分け、それぞれの食材がもつ性質、効能などを明らかにし、区分しました。

では、中医薬膳学ではどのように食材を分類し、使い分けているのか、その一部をご紹介します。

五性(食物・薬物の性質)

五性は、平性を除いた四性と称されることもあります。食べ物を摂取することで、体が冷えたり温まったりする性質を分類し、体に及ぼす影響をまとめた分類方法です。

効能 適応 食材の例
体にこもった熱を冷ます。 解毒・鎮静・排膿・通便・利水・生津補陰 陽盛・熱証・陰虚体質 ・にきびができやすい ・更年期障害によるほてり その他、口が渇きやすい、怒りっぽいなど すいか、きゅうり、冬瓜、ニガウリなどウリ科の野菜・果物 トマト、ワカメ、ナス、 アサリ、カニ、馬肉、牛タン、卵白、緑茶など
性質が穏やかで、体を温めることも冷やすこともない 各体質に適する とうもろこし、大豆、じゃがいも、うるち米、麹 スズキ、すっぽん、豚肉
体の冷えを取り、温める。 参観・瀉火・温中・血行促進・補陽 気虚・陽虚体質 ・体が冷え、節々が痛む。 ・疲れやすく内臓機能が衰えている ・血行が悪く、むくみやすい 玉ねぎ、しょうが、香菜、にんにく、にら、青魚、エビ、ムール貝、羊肉、鶏肉

五味(食物・薬物の味覚による分類)

五味とは、食べ物の味から体にどのような影響が及ぶかを調べ、まとめ上げたものです。

代表的な食べ物 主な働き 適するタイプ
酸味(渋味) レモン、梅、酢、銀杏や栗、落花生の渋皮など 収斂・固摂(血液や体液の漏れを防ぐ)など 多汗、生理過多、つわり、おりものが多い
苦味 ニガウリ、緑茶、どくだみ、笹の葉など 清熱・泄降(体にこもった熱を冷ます。デトックス)など 発熱、赤く熱を持ったにきび、目の充血、夏バテ、便秘、口臭
甘味 穀類、豆類、イモ類、種実類など 補気・和中(胃腸の緊張を緩和し、気力を与える) 胃弱、皮膚や筋肉の弛み、内臓下垂、老化現象
辛味 ネギ、生姜、にんにく、ミョウガ、ハーブ類、紫蘇など 発散・行気・行血(血行不良解消、ストレス軽減、排ガス、むくみ解消など) 初期の風邪症状、むくみやすい、冷え性、うつ気分、ガスが溜まりやすい
鹹味 牡蠣、スッポン、ナマコ、昆布、ワカメ、海苔、ひじきなど 軟堅・瀉下・慈陰(更年期や老化によるほてり、不眠、健忘、便秘、肥満など) 便秘、肥満、発育不良、など

薬膳料理の組み立て方

私たちの体は、食べたものからできています。食材の性質を知り、気になる不調に合わせた食材を選びます。

このとき、例えば冷えが気になるにも拘わらず、体を冷やす作用がある冬瓜が食べたい、と思ったとします。食べられない、とあきらめるのではなく、体を温める効果がある生姜やエビなどと炊き合わせると、体を冷やす作用は打ち消されます。

薬膳の考え方を知っていると、安心して食べることができるようになりますね。

まとめ

今回は薬膳の基礎となっている中医学、薬膳の考え方による食材と体の関わりについての一部をご紹介しました。

身長や体重、顔が違うように、私たちの体質も、ひとりひとり違います。今の体の状態に合う食材を選び、食べたあとに体に起こる穏やかな変化を感じたら、それが体に合うものか、逆に合わなかったのかを覚えておくと、次に同じような不調が起こった時に対応しやすくなりますね。

残念ながら薬膳料理は薬ではありませんので、その作用は穏やかなものが多いです。少し調子が悪いのかな?と感じたときに、早め早めに薬膳の考え方で料理を作り、食べることで、健やかな日々を過ごすことができるようになるとよいですね。

(※1)平成9年版の厚生省白書に記載されている概念の一つで、検査では顕著な異常が見られないにもかかわらず、さまざまな不調を感じるいわゆるグレーゾーンの状態のこと。

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