冬は冷えや乾燥が気になる季節。風邪をひかないように体調管理には日々気を付けたいものですよね。
もともと人体には菌やウイルスから体を守ってくれる「免疫力」が備わっていますが、免疫力は普段口にしている食物によってより強くすることができます。
数千年の中医学の歴史に基づいて体系化された薬膳は、体のさまざまな不調を防ぎ、健康的な美しさを内側から高めていってくれます。
今回は、冬の不調の原因である「寒邪」に関するお話と、冬の免疫力アップに効果的な食物や料理方法についてご説明していきます。

冬の「寒邪」と人体の免疫機能
中医学では、生き物の体にとって害となるものを「邪(じゃ)」あるいは「病邪(びょうじゃ」と呼びます。外的環境の邪には、「寒」、「暑」、「風」、「湿」、「燥」、「火」といった6種類があると考えられています(※梅雨時は「湿邪」が加わることも)
病邪に拮抗するものとして「正気(せいき)」というものがあります。
中医学では、人体には生まれつき免疫力が備わっていると考えられています。
「正気(せいき)」は、体を内側から強くする防御力・免疫機能のことです。食物から気・血・津液をつくり、生命活動を維持する自然治癒力の強さを持ちます。
正気にはいくつかの分類があり、それぞれ「元気・営気・衛気・宗気」といいます。今回は衛気についてご説明したいと思います。
衛気(えき)とは
外側に対してバリアを張る免疫機能「衛気(えき)」です。衛気は、成長や生殖をつかさどる「腎」に蓄えてある精気をもとに作られているものです。
衛気が弱ると、体をバリアする力が弱くなり、病邪が正気よりも優位になってしまいます。それによって風邪菌やウイルスが体に侵略するのを許してしまうのです。
免疫力をアップして、正気と病邪のバランスが崩れないようにすることで風邪や病気に負けない体をつくることが大切です。
寒邪とは
冬は一年のうちで最も寒い季節。立冬から立春までの約3カ月間あります。
自然界は「陰盛陽衰」という状態で、人間をはじめとする多くの生物が「休養」モードに入ります。
中医学では冬の邪気を「寒邪」といいますが、寒さによって筋肉が縮こまり、血流が悪くなったり、体温を上げるためにエネルギーを多く使うため消耗しやすかったりします。気血の巡りが悪くなり、体の隅々にまで栄養がいかなくなるほか、生命力や性エネルギーをつかさどる「腎」が弱ってしまうことで不調が出てしまうのです。
冬によく見られる症状を見てみましょう。
・肩こり、腰痛、生理痛、神経痛
・新陳代謝の低下による血色の悪さ、肌荒れ
・悪寒タイプの風邪
・おなか周りや末端の冷え、しもやけ
・下半身のむくみ
・心筋梗塞や脳梗塞などの血管のトラブル
・排尿困難または頻尿などの泌尿器系トラブル
・老化、難聴
・性機能の衰え
・健忘、ショックを受けやすい
これらは寒邪によって引き起こされやすいものです。
冬の陰陽五行説
続いて、冬は陰陽五行説においてどのような位置づけをされているか、見てみましょう。
五行:水
五気:寒
五味:鹹
五色:黒
五臓:腎
五腑:膀胱
五体:骨
五液:唾液
冬は「寒冷、乾燥」が活発になる季節で、「陰」が優位になるため、気血水の巡りも冷えて下降傾向になります。膀胱などの泌尿器や耳、髪の毛といった部位にも影響が出やすいのが特徴です。
冬におすすめの代表的な食材
陰陽五行説から見ても、冬は、体を温め、気血を補いエネルギーを蓄えられる食材を摂るのが体に良いということがわかりますね。
食材選びのコツとしては、「五性」は熱性・温性、「五味」は甘・鹹・辛・酸味に属する食材を選ぶこと。薬膳の調理法も、腎と肝の機能をアップできるものにこだわってみると良いでしょう。
次に、冬の薬膳におすすめの食材をリストアップしていきます。
体を温める食材
ショウガ、にんにく、にら、ネギ、唐辛子、玉ねぎ、かぼちゃ、シナモン、山椒、黒砂糖、羊肉、鶏肉、えび、いか、くるみ、栗、じゃがいも
「腎」を整える食材
黒ごま、黒米、黒きくらげ、黒豆、黒砂糖、にら、えび、くるみ、かき、わかめ、昆布
「気」を補う食材
まいたけ、しいたけ、えのき、しめじ、ネギ、黒砂糖、白米、イモ類、かぼちゃ、にんじん、魚介類、牛肉、栗、紅茶
「気」の巡りをよくする食材
ゆず、みかん、そば、芹、春菊、梅干し、黒酢、ジャスミン茶、ミントティー
「血」を補う食材
ほうれん草、にんじん、黒ごま、クコの実、なつめ、いか、レバー、卵、牡蠣、レーズン、紅茶
冬におすすめの薬膳【養生ごはん】
最後に、冬の養生にぴったりの、冬に旬を迎える食材を使った薬膳をご紹介します。
栗とまいたけの炊き込み黒米ごはん
<材料>※2合の場合
・ゆでむき栗 8粒ほど
・舞茸 1/2パック
・にんじん 5㎝
・黒米 2合
・黒ごま お好み
☆しょうゆ 大さじ2杯
☆みりん 大さじ1/2杯
☆酒 大さじ1/2杯
<つくり方>
- 【栗の下ごしらえ】水と塩、栗を鍋にいれて沸騰させて1分間茹でる。火を消して鍋に蓋をして粗熱をとり、手で触れる温度になっていたら冷水に入れて包丁でおしりの方から鬼皮をむく。続いて渋皮もむき、10分ほど冷水につけて引き上げる。(※茹でるときは圧力鍋を使うと簡単です。)
(2)黒米を研いでざるにあげておく。
(3)まいたけは手でほぐし、にんじんは薄いいちょう切りにする。(※にんじんとまいたけと同じくらいの大きさにすると見栄えが良いです。)
(4)炊飯器に黒米と分量通りの水、酒、みりん、しょうゆを加え、最後に栗をのせて炊き始める。
(5)炊き上がったら器に盛り、お好みで黒ごまをふる。完成。
栗の下ごしらえが少し大変だったら、冷凍むき栗を利用すると良いでしょう。食材を切って調味料を加えたら、あとは炊飯器におまかせすればOK。
「気」を補う栗とまいたけ、「腎」の働きをアップする黒米と黒ごま、「血」を補うにんじんを使った、冬の免疫力アップにぴったりな養生ごはんです。炊き立てのいい香りと一緒にお楽しみくださいね!
簡単黒ごま豆乳ラテ
<材料>※1人分
・無調整豆乳 200ml
・練り黒ゴマ 大さじ1杯
・はちみつ 大さじ2杯
・クコの実 お好み
<つくり方>
- 小鍋にすべての材料を入れ、弱火~中火くらいで温めながら混ぜます。焦げつきやすいので、完成までかき混ぜること。(※豆乳は沸騰させると分離してしまうので、熱しすぎないように注意。)
(2)均一に混ざったら完成です。
とても簡単にできますね!黒ゴマは「腎」にとても良い食材です。また、豆乳は女性にうれしい「血」を補う働きと、体を潤す働きもあります。はちみつは薬膳では消化吸収力をアップし、疲れやすい体にエネルギーを補給してくれます。また、トッピングとして、血と腎を補う、甘酸っぱくておいしいクコの実はいかがでしょうか。ほっと一息つきたいときにおすすめの、時短アンチエイジングレシピです。
まとめ
冬は冷えによって気血の巡りがさまたげられ、エネルギー不足や新陳代謝の低下によってさまざまな不調が出やすくなります。冬の薬膳をうまく使って、おいしく楽しく免疫力アップできたらいいですよね!
食べるものや飲むものは、できるだけ冷たいものを避け、温めてから取ると良いでしょう。
また、日照時間が短い冬は、太陽光を浴びることも大事です。朝起きたら最初にカーテンを開け、太陽の光を浴びるようにしてください。やや冷ました1杯の白湯を飲むのも、胃腸を目覚めさせて気血の巡りをよくするのでおすすめです。そして、朝ごはんはできるだけ抜かずに、少しだけでも良いのでお腹に入れるようにしてみてください。
免疫力アップの薬膳と休息を上手に取り入れて、冬を楽しく過ごしてくださいね!