女性のライフステージの中で「更年期」は避けて通れない大きな変化の時期です。閉経前後の数年間に、ほてり・のぼせ・発汗・動悸・不眠・イライラなどの不定愁訴が起こりやすくなります。西洋医学では女性ホルモンの減少が原因とされますが、東洋医学では「腎の衰え」や「陰陽のバランスの乱れ」が大きく関係すると考えられています。
ここでは、東洋医学と薬膳の視点から、更年期を健やかに過ごすヒントをご紹介します。
◆ 東洋医学からみる更年期の愁訴
東洋医学では、更年期の不調は「腎精(じんせい)の不足」によるとされます。腎は生命エネルギーの源であり、成長・生殖・老化を司る臓腑です。加齢とともに腎精が不足すると、陰陽のバランスが崩れ、身体にさまざまな症状が現れます。
- 陰虚(いんきょ)タイプ:ほてり、のぼせ、寝汗、不眠、口渇
- 陽虚(ようきょ)タイプ:冷え、倦怠感、むくみ、下痢傾向
- 気滞(きたい)タイプ:イライラ、胸のつかえ、頭痛、生理不順
このようにタイプによって症状が異なるため、自分に合った養生を取り入れることが大切です。
◆ 薬膳で取り入れたい食材
更年期におすすめの薬膳食材を、タイプ別にご紹介します。
- 陰虚タイプ(ほてり・不眠)
黒豆、桑の実、クコの実、豆腐、百合根、梨 - 陽虚タイプ(冷え・倦怠)
羊肉、海老、生姜、シナモン、栗 - 気滞タイプ(イライラ・胸のつかえ)
陳皮(みかんの皮)、菊花、セロリ、ジャスミン茶
いずれのタイプにも共通して「腎を補う黒い食材(黒豆・黒ゴマ・黒きくらげなど)」を意識するとよいでしょう。
◆ 薬膳レシピ:黒豆とクコの実入り滋養粥
材料(2人分)
- 白米 … 1/2合
- 黒豆 … 大さじ2(煎っておく)
- クコの実 … 大さじ1
- 鶏ささみ … 50g
- 水 … 500ml
- 塩 … 少々
作り方
- 白米を洗い、黒豆と一緒に鍋へ。水を加えて煮立たせる。
- アクを取り、弱火で30分ほど煮込む。
- 仕上げに細かく裂いた鶏ささみとクコの実を加え、塩で味を調える。
→ 黒豆とクコは腎を補い、老化に伴う不調をやわらげる食材。消化にもやさしく、体調が揺らぎやすい更年期にぴったりです。
◆ 生活養生のポイント
- 睡眠リズムを整える:早寝早起きで腎を養い、陰陽バランスを保つ。
- 適度な運動:ウォーキングやヨガなど、心地よい範囲で継続を。
- ストレス解消:呼吸法や瞑想、ハーブティーでリラックス。
- 体を冷やさない:冷たい飲食は控え、温かい食事を心がける。
- 季節に応じた養生:秋冬は陰を補い、春夏は気を巡らせる工夫を。
◆ まとめ
更年期は誰にでも訪れる自然な体の変化です。東洋医学では「陰陽の転換期」ととらえ、心身のバランスを整えることを重視します。薬膳の食材と生活養生を取り入れれば、不調を和らげ、より健やかに過ごすことができるでしょう。