秋は「食欲の秋」と呼ばれるように、涼しさで代謝が高まり、また収穫の恵みも豊富になるため自然と食欲が増していきます。しかし、ここで油断すると「つい食べ過ぎてしまった」「胃もたれが続く」「体重が増えた」ということになりがちです。東洋医学では、暴飲暴食は胃腸に負担をかけ、「脾(ひ)」と「胃」の働きを損ない、全身の気血の巡りを乱す原因になると考えられています。今回は、暴飲暴食を防ぎ、健やかに秋を楽しむための薬膳術を紹介します。
◆ 東洋医学からみる「秋と食欲」
秋は「燥邪(そうじゃ)」の影響を受けやすい季節。乾燥によって肺や皮膚に不調が出やすい時期ですが、同時に五行では「脾胃」にも影響が及びやすいとされます。乾燥は消化器の働きを乱しやすく、過食によってさらに脾胃が弱ると、食物の消化吸収が滞り、倦怠感・下痢・胃もたれ・むくみを招きます。
◆ 薬膳で取り入れたい食材
暴飲暴食を防ぐためには、「脾胃を健やかに保ち、満腹感を自然に得やすい食材」を取り入れることがポイントです。
- 山芋(山薬):脾胃を補い、消化を助ける。食欲を整える。
- レンコン:胃を潤し、消化を促進。食べ過ぎ後の胃もたれにもよい。
- カボチャ:胃腸を温め、消化機能を高める。
- ハトムギ(ヨクイニン):利尿作用があり、余分な水分を排出。むくみ対策にも。
- キノコ類(シイタケ、マイタケ):消化に軽く、食物繊維が満腹感をサポート。
◆ 薬膳レシピ:山芋とレンコンのほっこり蒸し
材料(2人分)
- 山芋 … 100g
- レンコン … 100g
- シイタケ … 2枚
- 鶏むね肉 … 150g
- 酒 … 大さじ1
- 醤油 … 小さじ2
- 生姜の千切り … 少々
作り方
- 山芋とレンコンは薄めの半月切りにする。シイタケはスライス。
- 鶏むね肉は一口大に切り、酒と醤油で下味をつける。
- 耐熱皿にすべてを重ね、生姜を散らす。
- 蒸し器で10分ほど蒸して完成。
→ 脾胃を補いながら消化を助け、満腹感を得やすい一品です。油を控え、素材の甘みを味わうことで過食予防につながります。
◆ 生活養生のポイント
薬膳と合わせて、生活習慣の工夫も暴飲暴食を防ぐ大切な要素です。
- 腹八分目を心がける:東洋医学では「飲食有節(いんしょくゆうせつ)」が基本。少し余裕を残すことで脾胃が楽になります。
- よく噛む:噛むことで脳が満腹を感じやすくなり、消化もスムーズに。
- 規則正しい食事:夜遅くの食事や間食のしすぎは脾胃を弱らせるため控える。
- 温かいお茶を添える:プーアール茶やはと麦茶など、消化を助けるお茶がおすすめ。
- 食後の軽い散歩:消化を促進し、過食後のだるさを防ぐ。
◆ まとめ
「食欲の秋」は自然なリズムですが、暴飲暴食が続くと胃腸を痛めてしまいます。脾胃を養う食材を取り入れ、腹八分目を意識することで、季節の恵みを健やかに楽しむことができます。薬膳の知恵を日常に活かし、心も体も軽やかな秋を過ごしましょう。