
<春とは?>
皆さんは「春」がいつからいつまでかご存じですか?春は立春から立夏までの3ヶ月間を言います。その中で大きく、初春・春・晩春に分けられます。
春は風邪や花粉症などの症状が起こりやすくなるという特徴があります。
これらは春の自然条件である「風」からくる風邪(ふうじゃ)によるものです。
春は陽気と陰気が入れ替わる時期なので気候が不安定となるため、より風邪になりやすいとされています。
加えて、春は「肝」と深い関係があり、肝の経路である胆・筋・目・爪・感情(怒り)にトラブルが起こりやすいとされています。
<風について>
さてここで、風についてもう少し詳しくお話させて頂きます。
風は1年を通して現れますが、主に春の気とされています。特徴は4つあります。
- 陽邪、軽揚開泄※
⇒発熱・悪風・汗が出るなどの症状が現れ、人体の上部に症状が現れやすいです。
- 善行、数変
症状は遊走性、発病が急であり変化が速く、他の病変へ容易に転化しやすいです。
- 百病の長
風邪は他の邪気(寒・湿・燥・熱)と一緒になり身体に侵入します。
- 風性主動
風は動きやすく、肢体に異常運動(震え、しびれ)や強直(麻痺、痙攣)が現れやすくなります。
風にはたくさんの特徴があることがお分かり頂けたでしょうか?
春に体調が崩れやすくなる方は風の影響を受けている可能性があります。春に合った薬膳をとることで、これらの症状が和らぐかもしれません。
それでは、春に食べて頂きたい食材についてお話させて頂きます。
<春に食べたい食材は甘味の食材>
春の食養生は、肝を調和し脾を補うために甘味の食材(ナツメ・長芋・落花生・サツマイモ・カボチャ・無花果など)を摂取することが大切です。
今回は、春の中でも「初春」と「晩春」それぞれの時期に食べて頂きたい食材をご紹介致します。
<初春とは>
初春は3月1日頃~3月17日頃で、冬の寒気と春の風気が一緒になっている状態=風寒の気候となります。
そのため、風寒の邪気を追い払う必要があり、辛味・温性の食材を摂取することが重要です。
例えば、生姜・シソ・ネギです。これらの食材は冬に食べて頂きたいとご紹介しましたが、春も引き続き食べることをおすすめします。
<晩春とは>
晩春は5月5日~5月21日頃で、冬の寒気と春の熱気が一緒になっている状態=風熱の気候となります。
そのため、風熱の邪気を追い払う必要があり、辛味・涼性の食材を摂取することが重要です。
例えば、薄荷・菊の花・桑の葉・セロリです。これらの食材は食べ過ぎると身体を冷やしてしまうため注意が必要です。
それではこの中から、ネギとセロリについて紹介させて頂きます。
◎ネギ
いろんなお料理に使えて便利な野菜ですね。昔から日本では「風邪を引いたらネギを首に巻く」という言い伝えがありますが、ネギは風邪を引いたときに食べると効き目がある食材なのです。葱白(そうはく=ネギの根元に近い白い茎の部分)が薬用部分とされています。
ここで少し海外の食文化における豆知識です。焼いたアヒルとネギ、きゅうりに甜麵醬(味噌)をつけて薄餅で巻いて食べる北京ダックは、身体を冷やすアヒルときゅうり、身体を温めるネギが組み合わさっている料理なのです。
・産地:原産は中国西部や中央アジアと言われています。日本では10世紀ごろから栽培されていると記録されています。主な産地は千葉県や埼玉県です。
・性味帰経:温・辛・肺・胃
・薬効成分:カロテン、ビタミンC、ビタミンK、カルシウム、アリシン
・効能:発表、通陽止痛、解毒
・健康効果:
発汗作用(身体を温める作用があり、風邪のひき始めに効きます。)
食欲増進効果(アリシンによるものです。)
鎮静効果(ネギに含まれるイオウの効果で不眠に効果があるとされています。)
・旬の時期:年間を通して流通していますが、12月頃が多く出回ります。
・レシピ:焼きネギと鮭の南蛮漬け
☆材料(2人分)
鮭切り身 2切れ(約160g)
ネギ 1本(約150g)
A酒 大さじ1/2(=7.5g)
A醤油 大さじ1/2(=9g)
Aすりおろした生姜 小さじ1(=6g)
Bだし汁 80ml
B酢 60ml
B醤油 大さじ1(=18g)
B砂糖 大さじ1/2(=4.5g)
B赤唐辛子輪切り 1本分(あれば)
小麦粉 適量
揚げ油 適量
☆作り方
① 鮭は骨を取り除き、食べやすいサイズに切ります。Aの調味料をからめて下味をつけます。
② ネギは斜め切りし、フライパンで焼き目を付けます。
- ボウルにBを合わせ、②を加えて混ぜます。
- 鮭の汁気を切り、小麦粉を薄くつけて170℃に熱した油で揚げます。
- 焦げ目がついたらすぐに油をしっかりきって③に漬け込み、よく混ぜて
味がなじんだら完成です。
ポイント⇒ひと手間かけられる方は②でネギを半分に切り、魚焼きグリルで焦げ目がつくまで焼いてから斜めに切ると甘さがより際立ちますので挑戦してみてください。
◎セロリ
独特な香りと苦みがあります。お肉やトマトと合うため、炒め物やスープのほかにもきんぴらなどのレシピが紹介されており、興味深い野菜です。
今回は定番のスープのレシピを紹介致します。
・産地:原産地は中国西部からインドにかけて、また南ヨーロッパとされています。
日本には江戸時代に伝来しました。
・性味帰経:涼・辛・甘・肝・肺・膀胱
・薬効成分:カリウム、βカロテン、ビタミンC、ピラジン、アピイン、セネリン
・効能:清熱解毒、利尿、止血
・健康効果:鎮痛、鎮静作用(イライラ解消や頭痛に効くとされています。)
整腸作用(食物繊維が多いため便秘の方にもおすすめです。)
高血圧予防効果
(体内の余分な塩分の排泄を促すカリウムが豊富なため血圧を下げる効果が期待されます。)
・旬の時期:11月~5月頃です。
・レシピ:具だくさんスープ
☆材料(2人分)
ベーコン 4枚
人参 1/3本(約70g)
じゃがいも 1個(約120g)
セロリ 1/2本(約70g)
オリーブオイル 大さじ1杯(=12g)
トマトジュース(無塩) 250ml
水 250ml
にんにくチューブ 小さじ1
コンソメキューブ 1個
塩・こしょう 少々
☆作り方
①人参、セロリ、ベーコンは1㎝角に切ります。
じゃがいもは1㎝角に切って水にさらしておきましょう。
②鍋にオリーブオイルを引いて弱火にかけ、にんにくを軽く炒めます。そこへベーコン、人参、じゃがいも、セロリの順に加えて炒めます。
③全体に油が回ったらトマトジュースを入れて混ぜ、水とコンソメを加えて弱火で15分程煮ます。アクがでたら取り除きましょう。
④塩・こしょうで味を調えて器に盛り完成です。
ポイント⇒セロリは筋が硬いので、半分くらいから下の部分の筋を包丁で引いてとりましょう。薄く切る、斜め薄切りにするときは筋を切断するので、取る必要はありません。
分量にはありませんがパセリがあれば散らすと彩りがとてもきれいですよ。
<終わりに>
寒い冬の間はしっかり食べ、しっかり休みましたね。しかしそのせいで、春を迎えるころ、私たちの身体には不要なものが溜まっている状態となっています。不要なものを排出しつつ、「風」に対して食養生する必要があります。
春は季節や環境の変わり目なので身体にいろいろな症状が出始めます。日々の生活に薬膳を取り入れることで、元気に春を過ごしていきたいですね。
次回は、春の重要な問題である花粉症とそれに効く薬膳についてお話させて頂きます。
※1 軽揚開泄とは、軽く・上昇・発散するという意味です。