寒くなってきて、鍋が美味しい季節になりましたね。ちゃんこ鍋やキムチ鍋などいろいろな鍋の種類がありますが、薬膳の食材をたくさん使った鍋=薬膳鍋があるのをご存じでしょうか?最近では薬膳鍋専門のお店も増えていますが、実は材料をそろえれば自宅でも作ることができるのです。
今回は薬膳鍋に使われている食材や、レシピを紹介させて頂きたいと思います。

<薬膳鍋とは?>
薬膳鍋は、中国で生まれた辛味の強い鍋料理のことです。内モンゴルが発祥で、もともと羊肉を食べるための料理だったのではないかという説もあります。
薬膳鍋と聞いて、中央に特徴的な仕切りがある鍋の中に赤色のスープ(紅湯)と白色のスープ(白湯)が入っているものを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
この鍋は鴛鴦(ユエンヤン)と呼ばれています。鴛鴦は2つのスープを分けるための仕切りがあります。その仕切りは湾曲しており、陰陽学説の太極図を示していると言われています。
今回は辛味の強い赤色のスープと辛味の弱い白色のスープ両方をご紹介します。
◎赤色のスープの作り方
☆材料(2人分)
花椒 大さじ2(=約12g)
赤唐辛子 5本
生姜 2片
ニンニク 3片
長ネギ 1本(=100g)
サラダ油 大さじ3(=42g)
豆板醤 大さじ1(=18g)
(1)水 1L
(1)砂糖 大さじ2(=9g)
(1)酒 大さじ2(=15g)
(1)醤油 大さじ2(=36g)
(1)味噌 大さじ3(=54g)
(1)鶏ガラスープの素 大さじ1(=9g)
(1)五香粉※1 小さじ1(=約6g)
(1)クコの実 20粒程度
(1)八角 2個
(1)シナモン 1本
塩 少々
☆作り方
①生姜は皮をむき、みじん切りにします。
②ニンニクは薄皮をむき、縦半分に切り芯を取り除いたらみじん切りにします。
③長ネギもみじん切りにします。
④鍋にサラダ油と花椒を入れ中火にかけます。油がふつふつとしてきたらみじん切りのニンニク、生姜、長ネギを加えます。しんなりしてきたら豆板醤を加え焦げないように炒めます。
⑤(1)の材料を順番に鍋に入れたら塩で味を調え、沸騰したらスープの完成です。
⑥沸騰させたスープにいつもの鍋と同じ要領で具材を入れて火が通ったものから食べましょう。
◎白色のスープの作り方
☆材料(2人分)
生姜 2片
鶏手羽元 4本(=約240g)
ごま油 大さじ1/2(=6g)
ニンニク 1片
鶏ガラスープの素 大さじ1(=約7g)
酒 大さじ2(=30g)
クコの実 20粒程度
ナツメ 4個
水 1L
塩 少々
☆作り方
①生姜は皮をむいたら1片をすりおろし、もう1片を千切りにします。
②鶏手羽元におろし生姜と塩をなじませ10分程おきます。
③ニンニクは薄皮をむき、縦半分に切り芯を取り除いたらみじん切りにします。
④フライパンにごま油を熱し、鶏手羽元に焼き目を付けます。
⑤鍋に水、鶏がらスープの素、クコの実、ナツメ、ニンニク、千切りにした生姜を入れ火にかけます。沸騰したら②を加えて中火で煮て塩で味を調えたらスープの完成です。お好きな具材を入れて煮ていきましょう。
◇ポイント
上記スープは多めの量で作っています。2人分で全量使うとお鍋からあふれてしまいますので、スープが減ってきたら鍋に足して使う形が良いでしょう。
赤いスープは一般的に載っているレシピよりも辛さが控えめになっています。
それでも辛いと感じる方は唐辛子の量を減らすか、鶏がらスープを加えて辛さを薄めると良いです。反対にもっと辛さが欲しい方は、唐辛子の量(最大10本ほど)や豆板醤の量を増やすと激辛の薬膳鍋ができますので、お好みに合わせて調理してみてください。
白いスープは、牛乳や豆乳を加えるとクリーミーな味になりますので、お好きな方は一度試してみてください。
<スープの効能について>
それではここで、薬膳鍋のスープに使われている生薬の効能について紹介します。
・花椒
⇒辛味・温性…胃痛、腹痛、痰の症状に。
・赤唐辛子
⇒辛味・熱性…胃痛、嘔吐に。
・生姜
⇒辛味・微温性…発汗作用、食中毒防止作用があります。吐き気、咳の症状に。
・ニンニク
⇒辛味・温性…疲労回復、強壮作用があります。
・長ネギ
⇒辛味・温性…風邪のひき始め、腹痛や便秘に。
・豆板醤
⇒辛味・温性…食欲増進、疲労回復に。
・五香粉
⇒辛味・温性…ストレス、うつ、冷え性、ドライアイの症状に。
・クコの実
⇒甘味・平性…めまい、視力減退の症状に
・八角
⇒辛味・甘味・温性…腹痛、腰痛に。
・シナモン
⇒辛味・甘味・大熱性…血行改善作用があります。
・ナツメ
⇒甘味・温性…倦怠感、下痢、不眠の症状に。
<おすすめの具材と効能>
次におすすめの具材とその効能です。()内は2人分の材料の目安になります。よければ参考にしてみてください。
・木耳(乾燥したものを6個)
⇒甘味・平性…黒木耳:貧血や動脈硬化予防が期待されます。
白木耳:乾燥肌、空咳に。
・豚肉(150g)
⇒甘味・平性…胃腸の働きを改善し、便秘に効果があります。咳、肌のかさつきに。
・鶏肉(200g)
⇒甘味・平(温)性…むくみ、めまい、食欲不振、不正出血に。
・羊肉(150g)
⇒甘味・熱性…腹部の冷えを改善します。冷え性の女性におすすめです。
・鱈(2切れ)
⇒鹹味※2・平性…めまい、心悸、不眠に。
・牡蠣(4個)
⇒甘味・鹹味・平性…めまい、心悸、ほてり、生理不順、不眠に。
・海老(6尾)
⇒甘味・微温性…出産後の母乳不足、不妊症に。
・豆腐(1丁)
⇒甘味・涼性…目の充血、口の渇きに。整腸作用があります。
・椎茸(4個)
⇒甘味・平性…食欲低下や胃もたれの症状に。
・大根(200g)
⇒辛味・甘味・涼性…咳、痰、吐き気、お腹の張り、不正出血に。
・青梗菜(80g)
⇒辛味・甘味・涼性…高熱、多汗、高血圧予防が期待されます。
・キャベツ(100g)
⇒甘味・平性…息切れ、めまい、食欲不振、不正出血、下痢に。
・白菜(200g)
⇒甘味・平性…熱を取り除くため、多汗の症状に。便秘や食べ過ぎの下痢に。
・人参(60g)
⇒甘味・平(微温)性…眼精疲労、咳の症状、食欲不振に。
・ニラ(50g)
⇒辛味・温性…解毒作用があります。ED、肝腹痛に。
<終わりに>
いかがでしたか? 特別な材料が揃えられなくても、自宅にあるもので薬膳鍋を作ることができます。基本的に普段作られている鍋料理と作り方は同じなので挑戦しやすいのではないでしょうか。女性に嬉しい効能もたくさんありますね。
煮こまれた薬膳スープも栄養たっぷりですので、〆のご飯や麺を入れて余すことなく堪能して頂きたいところです。
今回は冬の薬膳鍋がテーマなので、主に身体を温める効果がある食材を紹介させて頂きましたが、上記以外の食材も使って頂いて構いません。みなさんがいつも鍋に入れている食材や、好きな食材を入れて楽しんで頂ければと思います。
是非、今年の冬は薬膳鍋に挑戦してみてくださいね。
※1:五香粉とは、主にクローブ、シナモン、フェンネル、スターアニス、山椒が使われたスパイスのことです。陳皮、カルダモン、ジンジャーなどが含まれているものもあります。
※2:鹹味とは五味の一つで、硬いものや固まりを柔らかくしたり、排泄を促し便通を良くしたりする作用があります。リンパ線腫、筋肉や皮膚のしこり、便秘症状の改善効果が期待されています。鹹味に分類される食材は昆布、栗、オオムギ、粟、麦芽などです。黒っぽい色の食材が当てはまります。